娼年赤ずきんは暗殺者

百駿歌翅(ナナシノネエム)

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第二章 とある少年の物語

To Be Continued……?

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 アジトに戻ったミトは、ジャクリーンの部屋に向かう。すると意外にも、女ボスが直々に少年を出迎えた。
 今夜は他のレジスタンス組織と情報交換会をしていたはずだが……彼女がこの部屋に戻っているのを見る限り、すでに終わっていたらしい。

「よう、思ったより早かったネ」

 ジャクリーンが安酒――今のご時世では、飲んでも目が潰れない高級品として扱われているが――をあおりながら、陽気に声をかけてきた。

「アタシはてっきり、そのまま船に乗ってトンズラこくかと思ってたんだがなア?」
「……そんなことするわけないって、知ってるくせに」

 ニヤニヤ笑うジャクリーンを、ミトが白けたジト目で見つめ返す。

「ヒャヒャッ! そうにらむなっテ!」
「ジャクリーンの冗談、本当につまらなくて笑えないんだよ」

 普段はボーイソプラノなミトの声が低くなっている。相当に不機嫌な証拠だ。
 特に今の少年は、絶対に笑える気分じゃなかった。

「……そうか、悪かったナ。じゃあ、さっそく本題に入ろうカ」

 急に素面しらふに戻ったような真面目な表情で言いながら、彼女は木製のデスク上に地図を広げる。
 そこに記されていた地名を目にした瞬間、不機嫌なミトの目つきはさらに鋭くなった。

「――『レヴィオール』。霊峰とみずうみの国さ。厳密に言えば、今はメアリス教のクソ共に支配されているからってつけるべきだが……」
「獣人の女性を買い漁っていた奴が居るのは、そこってわけ?」

 ミトが食い気味にたずねると、ジャクリーンは肯定した。

 これこそが今回のレイノルズ商会襲撃ミッションにおけるもう一つの目的。定期的に連れていかれる大勢の女性の行方ゆくえを知ることだ。

 その情報は、ミトたちがメアリス教国の秘密を追ったすえにたどり着いたものである。
 そして実際にやぶをつついてみたら、ヘビならぬ魔女狩り人形ウィッカー・ウィッチが現れた――結果的に、今回の作戦によって情報の信憑性しんぴょうせいが高まったと言っていいだろう。

 さらにこの件は、ミトの個人的な目的からはズレるが……黒い炎に呑まれて死んだ彼女の存在もあって、連れていかれる女性たちを放ってはおけなかった。

「情報によると、が一人、捕らえられているらしいネ。おそらくあの放火魔も、彼女の秘術を盗んで作られたものだヨ……それともう一つ、悪い知らせだ」

 ジャクリーンの声のトーンが一段階落ちる。

「悪い知らせ?」

 魔女のチカラが相手に渡っていることよりも? ジャクリーンの言葉に疑問を持ちながら、少年はき返す。

「ああ、オマエにとってはナ……例のお姫様プリンセスも、そこに連れていかれたらしい」

 ――ミトの心臓が、ドクンと跳ね上がった。

「まさか……?」
「このまえブッ殺されたディオンって司祭がかくまっていたそうダ。まっ、真偽は分からねエ。あくまでも、そういうタレコミがあったってだけだからナ」

 そして、ジャクリーンは真面目な表情で、暗殺者の娼年に告げた。

「次はそれについて調べるのが、ミト――お前の主な仕事ダ。殺す獲物については、追って詳しい情報を渡す」

 もしかすると今回の作戦は、少年にとっても特別なものになるかもしれない。

 ミトは荒ぶる感情を押さえつけながら、黙ってうなずいた。

「場所はレヴィオール王国の、『ネナト』って町になる。潜入は一週間後。準備しておけヨ」
「……了解」

 新たなる潜入先を告げられたミトの表情は、冷たい暗殺者そのものだった。







 * * * * * * * * * * * * * * *

 いかがでしたでしょうか? とりあえずこれで短編として用意していたお話は終わりです。
 ただ、物語の構造としてはあと一章ある予定なので、気が向いたら続きを投稿するかもしれません。
 ちなみに、次の目的地は本編でも重要な場所となります。因縁の地ですね。気になる方はぜひ作者の長編作品「強靭不死身の魔獣王 ~美女の愛はノーサンキュー~」も読んでみてください。

 ここまでのご愛読ありがとうございます。
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