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11. 番いの習性がなくとも好きになっていただきます
しおりを挟むアドリエンヌはフルノー伯爵邸から侯爵邸へと帰ってきてすぐに母親である侯爵夫人へアレックスの反応を話し、助言を求めた。
「アレックス様は吸血鬼になることを怖がってらっしゃるようなのです。それに、貧乏伯爵家だからと気にしてらっしゃるみたいですわ。アレックス様が私の番いになってくださらなければ、私はいつか狂い死ぬと伝えました。そんなことを言うのは卑怯なのかもしれないけれど、だからって無理矢理アレックス様を吸血鬼にするなんてことは絶対にしないと伝えたかったのです。それほどまでにアレックス様を想う私の気持ちを知っていただきたかったのですわ。今のところのアレックス様は拒絶の方が強いですけれど。」
アドリエンヌも、アレックスの前では常に平気な顔をしていても不安に思ったり傷つくこともあるのだ。
そして母親の前では全てを吐露できた。
「そうなの。確かに吸血鬼になるということは人間でなくなるということだから、すぐには結論を出せなくても仕方のないことね。貴女の番いへの吸血衝動はどうなの?我慢できそうなの?」
「お母様、それが辛いのですわ。あんまり近づくとついあの首筋に牙を立てたくなるのです。アレックス様に嫌われたくなくて必死で我慢しているのですけれど、あのように芳しい番いの匂いをさせながら我慢を強いるのだから随分と神様も酷なことをしますわね。」
アレックスを怖がらせないように、なるべく平気な顔で傍にいることが、番いをまだ認められぬアレックスと共にいられる最低限の条件なのだ。
番いのためと思うならば、なんとか酷い飢餓感と切望に抗える。
アドリエンヌはとても芯の強い吸血鬼であった。
「どうして貴女の番いが人間だったのかしらね。私とヴィンセントのように同族同士だったらこのような苦労をしなくて済んだのにね。」
夫人はアドリエンヌを労るようにその肩を抱いて、愛する番いである夫と同じその美しい銀髪を撫でた。
「お母様、それでも私はアレックス様のお人柄をどんどんと好ましく思ってしまうのです。もし私が狂い死ぬことになったとしてもあの方の意思もなしに吸血鬼にすることなどできない。そんなことをすればアレックス様はアレックス様ではなくなってしまう気がするのです。ですからいかなる努力をしても、私のことを好きになっていただきますわ。そして望んで本当の番いになっていただきますの。」
番いの相手が同族の吸血鬼でなく番いの習性のない人間であったことで相手からの無条件の愛は望めないが、アドリエンヌの決意は固かった。
「そうね。人間たちには番いの習性はなくとも、お互いが愛し合い人生を共にする人たちが多くいるのですものね。吸血鬼と人間であったとしても、それが出来ないことはないはずね。それは番いであるという関係以上に、固い絆で結ばれた関係なのでしょう。きっと貴女ならできるわ。」
母である夫人は娘の強さを信じて、優しく励ましの言葉をかけた。
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