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3. こんな共通点があったなんて
「成る程。それではリュシエンヌ嬢は本来ならば伯爵家の一人娘であったところを父君の再婚で義理の妹が出来たということか」
「はい。その通りですわ」
「ミカエル団長、妹のポーレット嬢はリュシエンヌと別様で可憐で愛想が良く可愛らしい令嬢で、また違った類いなのですよ」
どうしてかミカエルはリュシエンヌの家庭事情を尋ねてきたのでリュシエンヌとマルクは答えた。
「ほう……」
ミカエルはマルクの言葉にその紫目を細めた。
マルクはミカエルが妹のポーレットにも興味を持ったのだと思い、ポーレットも引き合わせれば尚更自分にとって有利なことになるのではないかとほくそ笑んだ。
マルクはミカエルがこの歳まで未婚で婚約者も持たないのはまだまだ遊び足りないと思っているのだと自分の物差しで考えており、これを機にそこからこの団長に取り入ろうと思っていたのだ。
「リュシエンヌ、俺は用事を思い出した。すまないがミカエル団長とゆっくりして帰ってくれ」
「え? はい?」
「ミカエル団長、申し訳ありませんがお先に失礼します。リュシエンヌを置いて行きますので話し相手にでもしてやってください。それでは」
来る時には供も付けずにと言っていたはずの婚約者が、自らの上官のところに婚約者を置き去りにするなどどう考えても不自然である。
そそくさといなくなった婚約者の無礼に対して、リュシエンヌはミカエルに謝罪の言葉を述べた。
「ミカエル様、大変申し訳ありません。私もすぐお暇いたしますのでごゆっくりなさってください」
リュシエンヌはミカエルが気を悪くしてもおかしくないと思い、その顔を見たが特に気を悪くした様子もなく、何ならその整った顔に笑みを浮かべている。
「リュシエンヌ嬢、貴女に是非お聞きしたい事があった。思いがけずマルク殿が先に帰って丁度良かったよ」
リュシエンヌは目の前の貴人が放つ言葉の意味を考えたが思い当たることもなく、思わず怪訝な表情となった。
「そちらの方はどなたかな?」
その紫目はリュシエンヌの隣に立つ幽霊のローランの方に向けている。
「ミカエル様、見えるのですか?」
まだ半信半疑であったリュシエンヌは明確に答えることなく曖昧な返事をしたが、ミカエルはそんな彼女にさも面白そうな顔をして頷いた。
「ああ。そこの紳士は貴女のことをとても心配そうに見つめている」
リュシエンヌは帰ろうとしていたことも忘れてミカエルの話を熱心に聞き入った。
ミカエルの言うことには、幽霊であるローランがはじめからずっと見えていたということ。
彼は幼い頃から幽霊が見える体質であり、特に親しい幽霊も何体かいるということ。
以前幽霊たちの噂話で、好色家なマルクが婚約者の妹と不貞を働いていることを偶然ながら知ったということを話した。
「婚約者の貴女にこのようなことを言うのも酷だが、その話を聞く以前からパンザは騎士団の中でもあまり評判は良くなくてね。ある意味有名なんだ」
「そうですか」
大体マルクという人間のことを思い起こせば、騎士団の中でも嫌う者がいてもおかしくはなかった。
自分から騎士を目指したくせに努力が嫌いで、次男で家を継げないからと割と裕福な伯爵家の婿養子となるべくリュシエンヌと婚約を結んだ割に、突然出来た妹と平気な顔をして不貞を働いているのだから。
「そんな彼の婚約者のことを噂好きの幽霊たちが話していたんだ。『あの令嬢は幽霊が見えている』と」
「見えると言っても、私が見えるのは家令のローランだけです」
「そうだとしてもだ。私は今まで自分以外にそんな人間に出会ったことがないから嬉しいんだ。今日はパンザから声を掛けられて、その際私の友の幽霊からリュシエンヌ嬢も近くにいると聞いて。もしかしたら少しだけでも話す機会があるかも知れないと思っていたんだ」
成る程と、マルクの意味不明な行動をこの常識人らしいミカエルが咎めないことにリュシエンヌは得心した。
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