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15. やっと気づいたんですか
「もうすぐ屑が帰ってくるぞ。それとリュシエンヌ、あの毒婦はお前を殺そうかなどと簡単に言っておったから、身の回りには十分注意せよ」
バルコニーに休憩室から移動したファブリスが現れた。
「ファブリス、どういうことだ?」
「ミカエル、お前があの毒婦をあまりに相手にしないものだから、あ奴はリュシエンヌが死ねば自分にミカエルの目が向くだろうと話しておった」
「何だと。本当に救いようもない奴らだな」
あれほどまでに拒絶され、普通ならば諦めるところをリュシエンヌを害そうなどという考えに至るところはミカエルには到底まともだとは思えなかった。
「ポーレットがそのようなことを……」
「すまない、リュシエンヌ嬢。こうなればパンザにすぐにでも婚約破棄をするように伝えて……」
そこまで言ったところでミカエルは口をつぐんだ。
「ミカエル様?」
ミカエルは自分が何を言おうとしたのか考えて、ひどく戸惑った。
今自分は、自分こそがリュシエンヌの隣に相応しいと考えたのだ。
リュシエンヌのことは幽霊の見える稀有な仲間だと喜んでいた。
その仲間が困っていたから助けることにしたのだ。
そして気遣いのできる心優しいリュシエンヌに惹かれ、家令の幽霊が見えることを厭わぬリュシエンヌに惹かれた。
あの水晶のペンダントを渡した時も、『幽霊など見たくない』と言われるかもしれないと考えたが、『便利な物』だと喜んだ。
そして三人の幽霊の友へも敬意を払って接してくれた。
何より、同じものを見ても同じ感覚でいてくれるリュシエンヌの存在は今まで一人で幽霊たちと向き合い、語り合っていたミカエルにとっては大切な存在であった。
リュシエンヌが欲しいと、マルクに偽りで述べるはずが本気になってしまったのだ。
「リュシエンヌ嬢。貴女は幽霊たちが好きか?」
突然のミカエルの質問にリュシエンヌは戸惑いを隠せなかったが、素直な気持ちを答えた。
「幽霊といっても、今まで悪い幽霊には会っておりませんから分かりませんが、少なくともローランや三人の幽霊方のことは大好きです。このネックレスをつけていると、他にもたくさんの幽霊がそこら中にいることを知りましたが、それぞれ皆心残りがあるのかと思えば気の毒で悲しい気持ちになるこそすれ、嫌だとは思いませんでした」
その返事を聞いてミカエルは心を決めた。
「リュシエンヌ嬢、私は貴女のことをいつの間にか思いの外大切に思っていたようだ」
話が読めず首を傾げたリュシエンヌにフッと笑いを漏らしたミカエルは続きを述べようとした……。
「ミカエル、それではきちんと伝わらんぞ。男が無口で良いとされるのは日常だけだ。必要な時にはきちんと伝えなければならないだろう」
「リュシエンヌも困ってるわ。本当、ミカエルは残念イケメンなんだから。ヘタレな騎士団長なんてこの国の平和は大丈夫かしら?」
「ミカエルの馬鹿! 僕の、僕のリュシエンヌを……。うえーん……」
「ミカエル様、僭越ながらもう少しはっきりとおっしゃっていただきませんとリュシエンヌお嬢様には伝わりません」
各々幽霊たちは好き勝手に声を上げた。
リュシエンヌは皆が一同に話すものだから訳が分からず怪訝そうな顔をしている。
ミカエルは幽霊たちの言葉もあって、はっきりと述べることにした。
「リュシエンヌ嬢、私は貴女を愛してしまった。どうかこれから先の人生を私と一緒にいて欲しい」
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