上 下
22 / 31

22. 異世界の叡智

しおりを挟む

 そうこうしているうちにまた王城へと到着し、陛下と謁見することになる。

「よくいらっしゃった。偉大なる魔法使いアレクサンドル殿、そして異世界からの御客人ユリナ殿。」

 あら?いつものやりとりなのに、今日は私の名前も追加されてる。
 そして、前回の疫病対策についてのお褒めの言葉と感謝をいただいた。

「今日はユリナも連れてくるようにとのことでしたが、何か?」

 いつもより声が低い感じのするアレク。

「いやはや、実はなアレクサンドル殿だけではなくユリナ殿の異世界の叡智のおかげで疫病が収まったと聞いてな。ぜひ異世界の叡智を我が国の未来を担う者たちに授けてくれんかと思って本日はご足労いただいた次第じゃ。」
「恐れながら陛下。私の知識など本当に拙いものですし、そのように立派な方々のお役に立てるか分かりません。」

 私の知識は所詮日本の女子高校生レベルで、僅かな経験とテレビやネットで得たことがほとんどでそんなに立派な方々のお役に立てるとは全く思えない。

「そう畏まらんでも、ユリナ殿のいた世界がどのようなところだったかを話してくれるだけでいいんじゃ。これはアレクサンドル殿もされたことでな。どうか頼めないだろうか?」

 アレクはこちらを心配そうに窺っているが、あくまで私の意見に沿うという感じだ。

 来たばかりのアレクも同じだったんだ。

 私の知識が少しでもこの世界に役立つなら、それで陛下やこの世界がアレクの魔法にだけ頼るようなことがなくなるならばやってみたい。

「分かりました陛下。お役に立てるか分かりませんが、出来る限りやってみます。」
「おお、そうかそうか。ありがたいことだ。それでは頼むぞ。」

 ちょっとだけアレクの視線が痛いけど、それでも私は私のできることでアレクを助けていきたいから。

 『異世界の生活と知識』の講義はこれからしばらくは毎日王城で行われる事となり、しばらく私は王城の一角にある場所でこの国の未来を担う方々と交流することとなった。

 アレクは過保護っぷりを発揮して私のことを心配していたけど他の依頼や研究もあったし、王城へはジャンが送迎してくれることになった。

しおりを挟む

処理中です...