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第1章 化物に成った少年

うねうね3  グリーンベアとの死闘

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どうすっかな。
普通であれば逃げる一択の相手。

グリーンベア ランクE
ステータス 全て不明。

『鑑定』のスキルがない俺にはどのくらい強いか正確には判断できない。しかし知識として既に知っていることがある。コイツはやばい。グリーンウルフが10匹集まっても勝てないと言われる代物だ。

『ランク』
A~Eまでの相手の強さを表す基準評価。

ひとつランクが違えば絶望的な差が生まれる。
先ほど戦ったグリーンウルフはFランク。戦闘経験のあるものなら一体一で倒せるレベルのモンスターだ。ちなみにラルスが鑑定したステータスは

グリーンウルフ Fランク Lv.5 (上限Lv.5)
状態 普通
体力 8   攻撃力 6 防御力 3
魔力 4   素早さ 12 知性  24

スキル クロスバイトsLv.2 咆哮sLv.1

魔法スキル ウインドバイトsLv.1   (sLv.はスキルレベル)

だそうだ。
スピード特化のモンスターで噛まれるとやばい。

しかし、Eランクモンスターはこれの一回りはステータスが上なのだ。
特化したスピードだけはだいたい同じだが。他はまるで違う。Eと戦う時は基本敵に複数人の討伐隊を組むのがセオリーとなっている。

クマは目を見ながらゆっくり後ずされば大丈夫だと教わったが、目の前のこいつはスゲー興奮してやがる。縄張りに踏み込んだから怒ってんのか?とてもじゃないが逃げ出せそうにない。

ガアアアアアオオオオオ

おいおいおいおい、向かってくんなよ。
俺は咄嗟に肉の詰まった袋を放りだし、剣を抜く。いきなり全開だ。

「フラッシュレイドォ!!」

俺の得意技の閃光目くらまし、ウルフに効いたように目のついてる哺乳類系のモンスターにはかなりいけるんだ。幼少期から勇者に憧れて覚えた光系魔法。まさか、こんなコスい魔法スキルばっかり上手くなるとは。つっても使い勝手がいいからバンバン使うぜ。

やはりウルフと同様に動きが止まる。この一瞬は逃せない。剣でくまの脇腹を薙ぐ。

ザリ

これ以上無いチャンスに入った一撃に違和感しか感じない手応えが帰ってくる。
くそ、硬い。分厚いゴムを斬りつけた気分だ。表面だけ辛うじて裂けただけの音。
畜生こんな防御力反則だ。

グリーンウルフが束になっても敵わない理由がこれだ。まず、グリーンベアには牙が通らない。人間の討伐隊も攻撃力の高いものを前衛におき、さらに後衛から威力の高い魔法を撃ちまくるのがお決まりのパターンだ。

ちょっと強い村人Aの俺は間違っても正面から一対一で戦ってはいけない相手だ。

チ、腹が駄目なら首や口内、目を狙うか。目眩ましが効いてる間に次の攻撃に移る。

グオオオオ!!

目を覆っていた前足をデタラメに振り回す熊。やべぇラッキーパンチでも俺の胴体程もある腕に当たっちゃあおしまいだ。

二撃目を放つ前に後退せざるをえなくなる。

つくづく今日は一回目で決められない日だ。


それにしても今のはまずかったな。

『フラッシュレイド』は片手から放つ技の為、攻撃はもう片方の手で行う。しかし、片手だと体重が乗らないためせっかく腹に入ったのに斬撃が軽かったのだ。一撃で決められず、時間をロスするくらいなら最初から時間のリスクをおって両手に持ち替え全力の攻撃をするべきだったのだ。

今反省してても仕方ねぇ。
次の手を考えるぞ。

グリーンベアは体勢を整えるとこちらに目をつむりながらダッシュしてきた。

なるほどね。同じ手は食わねーぜってわけだ。それにしても器用に木々を避けてこちらに接近してくる。人間は視覚からの情報が7割以上だが、野生生物にはほとんどの嗅覚や聴覚を頼りに行動しているものもいると聞いたことがあるぞ。犬なんかは人間のなん万倍も嗅覚がすぐれているらしい。

初めから鼻だよりなら、フラッシュレイドは効かないってか。魔力で身体能力を上げながら敵を向え討つ。

「うおらあ!!」

「ガアアア」

パンチをギリギリで躱しながら剣撃を打ち込んでいく。やはり目を閉じてる分細かい精度が落ちている。おかげで躱せるがのはいいが刃が全く通らん。まず距離をとってデカ目の魔法をぶち込まなければ。

クマは体格の割に足も速く、距離を取ることが難しい。しかし、近距離戦はこちらに有効な攻撃手段がないためジリ貧だ。ならこれはどうだ。

「輝け光弾。走れ『煌針こうしん』」

俺の肩の上あたり、空中から流線型の光の針がクマの足元に命中した。

数打ちゃ当たれだ。『煌針』『煌針』『煌針』『煌針』『煌針』・・・・・。

狙いはクマの足、もっと言えば足の指だ。威力の低い魔法でもあたる場所によってダメージは異なる。頭部は剣で足元は光魔法で、これで機動力を徐々に削いでいく。すると次第に苦しそうな声を上げはじめた。

グアアアアオオオオ

クマの足の指に何発かあたり焦げ臭い匂いがしてくる。実際に毛が焦げて血が出ている。足は丈夫でも指までは強くないらしいな。やり方が陰湿な攻めだがなりふり構ってられるか。

次の瞬間、風が揺らいだ・・・・・。

ドゴォ!

森を揺るがす大きな重低音。
何が起きたか一瞬分からなかった。
俺は十数メートル先の大木に叩きつけられ倒れていた。

やつの魔法スキルが発動したのだ。 

『ウインドブロー』
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