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魔法学校編
戦う理由
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棲み処に帰ってくるとヴァイオレットは泣き疲れたのかイグニスの背中の上で眠ってしまったので、その日は魔物との戦闘を中断することに
その夜、ヴァイオレットが目を覚ますとそこにはバシリッサが優しく包み込むような形で見守ってくれていた
『起きたみたいね』
『お母さん……』
『気分はどうかしら』
『お腹減った……』
バシリッサの問いにヴァイオレットが空腹だと告げてくる
昼間から何も食べていなかったヴァイオレットは用意しておいたスープを渡されるとゆっくりと胃袋の中へと入れていった
『食欲があるなら大丈夫そうね。明日からまた頑張りましょう』
『……』
その言葉を聞いた途端ヴァイオレットの手が止まる
また今日のように魔物と戦わなくてはいけないと思ったら気が重くなってしまったようだ
『また……魔物と戦わなきゃダメ?』
『ヴァイオレットは戦うの嫌い?』
『だって怖いんだもん……』
『そう……実は私もね、戦うのはそんなに好きじゃないの』
『お母さんも?』
バシリッサはイグニスとは対照的で温和な性格をしており、確かに戦っている姿は一度も見たことがなかった
『えぇ、けれどねヴァイオレット。私でも戦う時があるわ。一つは自分の命を脅かしてくる相手が現れた時、そしてもう一つは大切なもの守る時よ』
『大切なもの……』
『そう。私の場合はあなたよヴァイオレット』
『えへへ』
ヴァイオレットの頭を優しく撫でてあげながらバシリッサは続ける
『ヴァイオレットにもいつかきっと守りたいものができるはず。だからその時の為に今から頑張らなくちゃいけないの。最初は怖いし逃げたくなるわよね、けれどあなたが成長したらその力はきっと役に立つはずよ』
バシリッサの話を聞いてヴァイオレットは幼い身なりに思考を巡らし、暫くしてから口を開いた
『私でも頑張れば強くなれるかな』
『大丈夫、ヴァイオレットなら出来るわ。だって私達の娘ですもの』
『私……もうちょっと頑張ってみる!』
『そうね、お母さんも協力するし応援するわ。あっ、あとイグニスにちゃんと謝りなさい。あなたに嫌いって言われたのが相当ショックだったみたいで落ち込んでるみたいなのよ。イグニスも強引だったかもしれないけど決して悪気があったわけじゃないの』
『うん、私お父さんに謝ってくる!』
バシリッサが間に入ったことでヴァイオレットとイグニスは仲直りすることができ、特訓もどうにか続けさせることができた
そんな出来事が起きた日からあっという間に一年が経過、ヴァイオレットが六歳になる年を迎えた
あれからイグニスとバシリッサの指導の元ヴァイオレットは魔力のコントロールを学び魔物との戦いを頑張った
途中で何度も投げ出しかけたが、その度イグニス達に支えてもらったことでヴァイオレットは一年で見違えるように逞しくなった
『お父さん!見てみて!』
『ほぉキングゴブリンを倒したのか。やるじゃないか』
『周りにゴブリンがたくさんいたけどなんとか倒せた!』
『最近コイツ等が森の生態系を荒らしていたからこれで元通りになるな』
『ねぇゴブリンって食べられる?』
『やめておけ、ゴブリンの肉は固くて食えたもんじゃないぞ』
『でも気になるなぁ。ちょっとだけ試しに食べてみよ』
ヴァイオレットの肉好きは成長すると共に増しており、色んな肉を食べてみたいという衝動に駆られていた
イグニスにも昔そういった過去があったので強く引き止めることはできず、毒があるもの以外は許していた
ゴブリンから食べられそうな部位だけを剥ぎ取りその日の夕飯に早速焼いて食べてみるとヴァイオレットの表情が渋くなる
『うーん……これはちょっと……』
『だから言っただろ。ほら、吾輩の狩ってきた獲物を分けてやる。しかしヴァイオレット、随分と魔法を扱えるようになったな。最初の頃なんて泣いて逃げていたというのに。この調子ならもう少し森の奥に入ってもよさそうだな』
『もっと強い魔物がいるの?』
『この森は奥に進めば進む程強い魔物が出てくるんだ。お前にはいずれ一番奥深くにいる魔物を倒してもらうつもりだ。それが卒業の証となる。まぁまだ当分先の話だがな』
ヴァイオレットも強くなったとはいえまだまだ成長途中、森の奥深くに存在する魔物の相手をするにはもっと力をつけなくてはならない
『その魔物ってお父さんでも倒せないの?』
『馬鹿を言うな、吾輩にかかれば一撃だ』
『やっぱりお父さんは凄いねぇ!どうすればお父さんみたいにもっと強くなれるの?強くなる方法教えてよ』
『どうすれば……?吾輩はひたすら暴れていたら気づけばこうなっていたな』
『えーなにそれー』
『強くなる方法は何も一つではない。ヴァイオレットはヴァイオレットの合った方法でゆっくりと強くなっていけばいい』
『はーい』
それからもヴァイオレットは日々増え続ける魔力を制御しながら魔物との戦いに明け暮れた
そしてそんな生活を送り続けていると気がつけば十年という歳月が経過し、ヴァイオレットは十六歳になった
その夜、ヴァイオレットが目を覚ますとそこにはバシリッサが優しく包み込むような形で見守ってくれていた
『起きたみたいね』
『お母さん……』
『気分はどうかしら』
『お腹減った……』
バシリッサの問いにヴァイオレットが空腹だと告げてくる
昼間から何も食べていなかったヴァイオレットは用意しておいたスープを渡されるとゆっくりと胃袋の中へと入れていった
『食欲があるなら大丈夫そうね。明日からまた頑張りましょう』
『……』
その言葉を聞いた途端ヴァイオレットの手が止まる
また今日のように魔物と戦わなくてはいけないと思ったら気が重くなってしまったようだ
『また……魔物と戦わなきゃダメ?』
『ヴァイオレットは戦うの嫌い?』
『だって怖いんだもん……』
『そう……実は私もね、戦うのはそんなに好きじゃないの』
『お母さんも?』
バシリッサはイグニスとは対照的で温和な性格をしており、確かに戦っている姿は一度も見たことがなかった
『えぇ、けれどねヴァイオレット。私でも戦う時があるわ。一つは自分の命を脅かしてくる相手が現れた時、そしてもう一つは大切なもの守る時よ』
『大切なもの……』
『そう。私の場合はあなたよヴァイオレット』
『えへへ』
ヴァイオレットの頭を優しく撫でてあげながらバシリッサは続ける
『ヴァイオレットにもいつかきっと守りたいものができるはず。だからその時の為に今から頑張らなくちゃいけないの。最初は怖いし逃げたくなるわよね、けれどあなたが成長したらその力はきっと役に立つはずよ』
バシリッサの話を聞いてヴァイオレットは幼い身なりに思考を巡らし、暫くしてから口を開いた
『私でも頑張れば強くなれるかな』
『大丈夫、ヴァイオレットなら出来るわ。だって私達の娘ですもの』
『私……もうちょっと頑張ってみる!』
『そうね、お母さんも協力するし応援するわ。あっ、あとイグニスにちゃんと謝りなさい。あなたに嫌いって言われたのが相当ショックだったみたいで落ち込んでるみたいなのよ。イグニスも強引だったかもしれないけど決して悪気があったわけじゃないの』
『うん、私お父さんに謝ってくる!』
バシリッサが間に入ったことでヴァイオレットとイグニスは仲直りすることができ、特訓もどうにか続けさせることができた
そんな出来事が起きた日からあっという間に一年が経過、ヴァイオレットが六歳になる年を迎えた
あれからイグニスとバシリッサの指導の元ヴァイオレットは魔力のコントロールを学び魔物との戦いを頑張った
途中で何度も投げ出しかけたが、その度イグニス達に支えてもらったことでヴァイオレットは一年で見違えるように逞しくなった
『お父さん!見てみて!』
『ほぉキングゴブリンを倒したのか。やるじゃないか』
『周りにゴブリンがたくさんいたけどなんとか倒せた!』
『最近コイツ等が森の生態系を荒らしていたからこれで元通りになるな』
『ねぇゴブリンって食べられる?』
『やめておけ、ゴブリンの肉は固くて食えたもんじゃないぞ』
『でも気になるなぁ。ちょっとだけ試しに食べてみよ』
ヴァイオレットの肉好きは成長すると共に増しており、色んな肉を食べてみたいという衝動に駆られていた
イグニスにも昔そういった過去があったので強く引き止めることはできず、毒があるもの以外は許していた
ゴブリンから食べられそうな部位だけを剥ぎ取りその日の夕飯に早速焼いて食べてみるとヴァイオレットの表情が渋くなる
『うーん……これはちょっと……』
『だから言っただろ。ほら、吾輩の狩ってきた獲物を分けてやる。しかしヴァイオレット、随分と魔法を扱えるようになったな。最初の頃なんて泣いて逃げていたというのに。この調子ならもう少し森の奥に入ってもよさそうだな』
『もっと強い魔物がいるの?』
『この森は奥に進めば進む程強い魔物が出てくるんだ。お前にはいずれ一番奥深くにいる魔物を倒してもらうつもりだ。それが卒業の証となる。まぁまだ当分先の話だがな』
ヴァイオレットも強くなったとはいえまだまだ成長途中、森の奥深くに存在する魔物の相手をするにはもっと力をつけなくてはならない
『その魔物ってお父さんでも倒せないの?』
『馬鹿を言うな、吾輩にかかれば一撃だ』
『やっぱりお父さんは凄いねぇ!どうすればお父さんみたいにもっと強くなれるの?強くなる方法教えてよ』
『どうすれば……?吾輩はひたすら暴れていたら気づけばこうなっていたな』
『えーなにそれー』
『強くなる方法は何も一つではない。ヴァイオレットはヴァイオレットの合った方法でゆっくりと強くなっていけばいい』
『はーい』
それからもヴァイオレットは日々増え続ける魔力を制御しながら魔物との戦いに明け暮れた
そしてそんな生活を送り続けていると気がつけば十年という歳月が経過し、ヴァイオレットは十六歳になった
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