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——……
窓の外の景色が変わっていき、どんどんライブハウスから離れる。
「碧音、もう平気か?」
うつむいたままの碧音の肩にそっと手を置く。
「…………さ、つき」
不安定で今にも消えそうな声に、虚ろな目。
「刹那」
星渚もバックミラー越しに碧音を見て、安堵したように肩の力を抜いた。俺を皐月だと認識出来るまで落ち着いたからだ。
「皐月、俺………」
「いいって。気にすんな」
「財布、届けに行こうとしたら急に後ろから口塞がれて」
「碧音、話さなくていい」
「首も腕も拘束されて、そしたらっ、狭い小屋に」
「分かってる」
「暗くて、何も見えなかった。叫びたくても、声が、出なかった」
碧音の脳内ではその記憶が嫌という程鮮明に再生されてるに違いない。
「刹那、言わなくていいよ」
「碧音」
「…………逃げなきゃ、逃げなっ助け、て」
「碧音!」
俺の腕に指がのめり込むくらい強く抱きつかれた。碧音が落ち着いたと判断するのは早かったんだ。
「っ、逃げて、逃げないと」
「碧音を捕まえた奴らはもういない。俺達が助けに来たからな、逃げなくていいんだよ」
「……ほんと……っ」
「本当」
「…………」
「大丈夫だって」
碧音の力が少しだけ、緩まった。その手にふと視線を滑らせると、手の平の横や手の甲の関節の部分が赤く擦れている。
小屋のドアを叩き続けたせいでこうなったのか。声が出ない代わりに助けに来てくれ、気づいてと願いながら叩いていたんだ。
こんなに傷を作るまで。痛かったよな。
「刹那、疲れたでしょ。少し寝てな」
「…………ん」
星渚に言われると、数分も経たない内に規則的に肩を上下させ眠った。
「刹那、寝た?」
「寝てる」
碧音が寝たのを確認して、星渚がこれからどうするかについて口火を切った。
「明日のライブは刹那次第で変わるから何とも言えないよね。刹那のことだし出るって言うだろうけど、いつも通りのライブが出来ないようであれば出さないつもり」
無理に出ても最高のライブがやれないと、観客の期待を裏切ってしまう。
「まー、そうなるよな」
色々厳しくなるけど。
「俺、今日碧音ん家泊まってくわ。んで明日俺から碧音に話して、聞いてみっから」
「出るのか出ないのか決まったら、俺に連絡して。早めに」
「おう」
本音を言えば、泊まる理由はそれだけじゃねえ。今夜は碧音を1人にさせない方がいいから。またパニックにならないとは限らない。
「着いたよ。刹那、起きて」
碧音の家に到着して、車が停まる。
「あーおーい、起きれるか?」
「……」
ゆっくり何回か瞬きをしてガチャリ、車のドアを開けた。
「2人共じゃあね。お疲れ」
「星渚、ごめん。ありがと」
星渚は首を横に振り、ひらりと手を振って車を走らせていった。
「碧音、今日お前ん家泊まってくから」
「……だから一緒に車降りたの」
「そういうこと。早く寝ようぜ、疲れた」
碧音は俺に帰れと言うこともなく家に入っていくので、俺も後に続いた。
家の明りがついてなかったから、おじさんとおばさんは既に寝てる。泊めてもらうことについては今日は夜遅いし、明日の朝言おう。
「皐月」
「おー」
「ごめん」
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