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しおりを挟む騒がしかった公園が一気に静まったせいで、辺りの暗闇の深さをより肌に感じる。
ぽつりぽつり。頼りない人工的な明かりだけが道を照らす。
5分程歩き大きな道に出ると、人通りも多くなり、歩いている人が疎らにいる。
「ふふ、まさかこんなイケメンと一緒に帰れるとは」
「まさかこんな変態と一緒に帰らなきゃいけなくなるとは」
「お願いだからゴミを見るような顔しないで。そうえいば碧音君、高校どこ?方面が一緒ってことは」
「霧ヶ崎」
「霧ヶ崎?私峰山だから近いね」
「うわ」
「うわって、失礼な」
霧ヶ崎も峰山も進学校で偏差値的には同じだけど、サッカーやバスケが強い高校がいいなら霧ヶ崎、吹奏楽が強い高校がいいなら峰山、という風に別れるのだ。よって、女子が多いのは峰山。
「部活は軽音?」
「違う」
違うの?ドラムがあんなに上手なんだから、軽音で文化祭の時にライブしたりするのかなと想像していたけど。
「部活、やってない」
「ああ。星渚さん達との方があるから?」
「うん」
そういうことか、納得。
「もしかして作詞作曲したりするの?」
「する」
「すごいね、本当」
きっと星渚さんに高瀬さん、藍さんと4人で一生懸命つくりあげるんだろうなぁ、大変だ。なんて一人考えていると。
ちらり、碧音君を横目で見れば不自然な距離が開いている。
試しに碧音君側に一歩近づくと、更に一歩離れられた。
何故。もう1回何食わぬ顔で距離を詰めると、碧音君が一歩右に逸れる。
はーん、ふーん、へーえ。じゃあこれは?二歩横に移動してみたら。
「お前、距離感ねえのかよそっち幅開いてるだろ」
「2人で道占領しちゃいけないでしょ?だから詰めないとなって」
「誰もこの道通ってない」
「そのうち来るかも」
「退け」
退きません。
「碧音君の綺麗な横顔が近くにあるっていうのに離れるなんて酷だよ」
「お前今すぐ横断歩道渡れ」
「今渡ったら確実に車とぶつかってお花畑見えちゃうけど!」
夜中だからって、これは駅に続く道だから車が途切れることはない。
「じゃあ青信号になっても渡るなよ」
「それだと私帰れないよ。家どころか駅にすら着かないよ」
一緒に電車に乗りたくないんだろうけど、ガッツリ隣をキープしますから。
そして憧れのシチュエーション。満員電車で人の波に押されそうになるところを、私の顔の横に片手をつき、覆い被さる形で守ってくれるのだ。
「ふふふっ」
「え。隣にいないでまじで」
碧音君の中性的な心地よい声を聞けるなら、いくらでも罵声を浴びます。
信号を渡り駅に着いて改札を抜け、電車が来るホームへと足を進める。
ライブで演奏していた他のバンドが数組いて、まるで有名人にでも出会したかのような感覚になった。
碧音君は気づいているのだろうか、否、きっと他のバンドになんて興味がないと一蹴りしそう。
7分待ったところで電車がホームに到着し、前の人に続いて車内に乗り込む。
「満員電車じゃなかった……」
「何を期待してたのお前」
「よくカップルがやってるじゃん?人とぶつかると危ないから、彼氏が彼女を守るために覆い被さってるあれ」
「痴女にやる主義じゃないし」
「その言い方やめてね?」
悲しいことに満員電車でもなければ、立ったのはドア付近でもなく真ん中の位置。
電車が動き始めると、碧音君はiPodのイヤホンを耳に装着したから、話しかけられなくなってしまった。
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