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しおりを挟むなるほど、私が作れば皆は時間ができてその分練習につぎ込めるよね。
「俺からも頼むよ、明日歌ちゃん」
「練習の見物料ってことで、いいだろ?」
「皐月は何故上から目線なんですか」
どこまでも安定の俺様だな、別にいいけどさ。
碧音君も否定的な意見を言わない辺り、オッケーと捉えて大丈夫だよね。
そうとなれば、私の答えは1つ。
「是非、やらせてください!美味しいもの頑張って作ります」
皆の役に立てるのなら、全然やる。
「じゃあ、決まり」
パン、星渚さんが手を叩いたことで、この話し合いはお開きになったのだった。
―――――――――――
―――…………
「お疲れ様でした」
「お前も気をつけて帰れよー」
「明日歌ちゃん、またね」
「はい。藍さんもお疲れ様でした」
今日の練習は終了し、各々帰路に着く。
皆方向はバラバラで、藍さんと皐月はこれからバイトに行くと言うからタフだ。
私と碧音君は駅までの視界の開けた河川敷を歩く。
時刻は18時、夕焼け空の燃えるような紅色が紫色や藍色にじわりじわりと侵食される様は、夜の闇に飲み込まれていく合図。
夕焼け雲は紅色なのに、空は淡い紫色というのが不気味だ。
夕暮れは綺麗で好きだと言う人がいるけれど、私は怖くなる。
小さい頃から、そうだった。
静かに足音立てず後ろから迫る闇に、自分も一緒に飲み込まれてしまうような、感覚。完全な夜は平気なのに。
苦手だ、何故だか胸がざわついて不安に駆られる。だってあの日も、こういう夕焼けだった。
この時間帯に碧音君と帰るのは初めてだ、いつも夕方になる前に帰ってたから。
いや、私が夕方の時間を避けて自分で早めに帰っていたから、という方が正しいかもしれない。
でも、今日は合宿のことについて話していたせいで遅くなってしまったのだ。
「――――い、な」
ああ、嫌だな。
「橘」
「っ、え、あ。ごめん!」
橘、そう碧音君に呼ばれ我に返る。いけない、思考がトリップして気づけなかった。
「ボケっとしてんなよ」
「ごめん、考え事してて」
折角碧音君といるのに、何たる失態。ていうか、碧音君にちゃんと名前で呼ばれたの初めて。正しくは苗字だが気にしない。
「お前って、黙ること出来たんだな」
「心底感心したみたいに言わないで」
はははっ、笑って突っ込む。
「合宿って毎年どんな感じなの?スタジオにこもりっぱなし?殆ど練習って言ってたけど、誰かの家に泊まり?」
「……」
「碧音君の家ならいいなー、とか言って」
「……お前さ」
「うん?」
視線は碧音君に向けないまま。
「変」
「どうせいつものことですー」
慣れって怖いとは、まさにこの事だ。皐月と碧音君に何度も言われてるからね。
夕焼け嫌だなあ、と思ってしまう思考を変えようと別の話題でも見つけて碧音君に話そうとするも、余計気になってくる。
「……」
「――……碧音君」
びっくりして碧音君を見ると、少し戸惑っているのか揺れる濃い灰色で青みがかった瞳と目が合う。
碧音君の手が、遠慮がちに頭の上にぽん、乗せられた。
“優しくふんわりと包み込むように”というよりはまるで、“本当に触れてもいいのか”迷っている感じ。
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