群青の夏、僕らは明日を願った。

青葉はな

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【第10章 予感】

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「皆、控え室はこっち」

「うは!狭い」

「控え室って言っても、体育館の用具室だからね。わ、私は全然気にしてないよ!?」

高校生のやる軽音のライブイベントで大層なホールを借りたり野外でやったりは出来ないし、許可してくれた中学の体育館で行われるのは妥当だろう。

控え室という名の、いつもは得点板やボールの籠などが仕舞われていた用具室で出番待ちするのは窮屈で嫌だけど。

「始まるまでまだ時間あるし、好きにしてて。私、実行スタッフに連絡してくるから」

「俺も手伝うか?」

「ううん、大丈夫よ」

白石先輩の申し出をやんわり断り、雨宮先輩は控え室から出ていった。

好きにしていいなら、この暑苦しい場所から出ていよう。

「早く始まらないかなあ」

「先輩が出てきたら名前叫ぼうよ!」

「うちらの高校は2番目だってさ」

あちこちから聞こえる、弾んだ声。

仮設ステージを挟み両サイドには舞台裏、主に機材や楽器、俺達の控え室を見せないための大きな仕切り板がある。

その隙間から客席を覗いてみると、思っていたよりも大勢の人で席が埋まっていた。

大人に小学生くらいの子供から中高生まで幅広い世代の人達。

イベントで演奏する軽音を応援するために来た生徒も集まって座っている。勿論、先輩達の後輩や仲間も。

その集団の中で一際目立っているのが。

「あっあの!高瀬皐月さんですよね?良かったら一緒に写真撮ってくれませんか?!」

「ら、ら藍さん!midnightのライブ観ました。超格好良かったっす!」

「紀藤先輩イケメン……握手してもらえるかな?」

女子と男子の輪の中心にいるのは、皐月に藍、星渚と菜流。

あの変態はどこにいるんだと見回せば、輪に入りたい人に押し退けられあたふたしていた。

切ないなお前。

「キャーッ!!高瀬さんと写真撮ってもらっちゃった」

「次、私と撮ってください!」

「はいよ。って、そんな離れたら写んなくね?こっち寄りな」

相手と程よく会話しつつも写真待ちしているファンを捌いていく皐月。

ライブ終わったら『モテる男はつらいな。俺って罪な男だわーやばいわ』だとか言ってくんだろ。

側にあるプールに突き落としてやりたい。

「……ねえ、紀藤先輩に話しかけてきてよ」

「あんたが行ってきてよ。同じ高校だったんでしょ?」

ファンが近づけない理由は、星渚の隣にピッタリくっついて隣に座っている菜流が原因。

主に女子を威嚇するために菜流が星渚の腕に絡みつき、近づくなとアピール。

星渚も星渚で可愛い妹のことしか眼中にないのだ。

お前らイチャつくなら他でやれよ。ライブ観る気ねえよな。

「俺、ライブ以外で藍さんに会えるなんて思ってもみませんでした!握手して欲しいっす」

「ははっ。ありがと」

「牧田さん、私もギターやってるんです」

「女子でギター弾けるって、格好良いと思うよ」

藍は観客席から少し離れたところで言葉を交わしていて。多分、他の客の迷惑にならないためだ。

そういうとこ、藍の性格出てるよな。

「またライブ行きますね」

「本当?来てくれたら嬉しい」

ま、藍の口から出る台詞の殆どはリップサービスだけど。それに気づいてる奴はいない。

メッセージを受信したときに鳴る音がしてスマホを引き出すと、メッセージが送られてきていた。

送り主は、あいつだった。

「明日歌」

本文には『碧音君、頑張ってね。終わったら私のハグっていうご褒美が待ってるよ』こいつは文章もうっとうしかった。

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