群青の夏、僕らは明日を願った。

青葉はな

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———————


———……


「ら、藍……どこ!」

光を反射して煌びやかな装飾を纏う澄んだ川、サワサワと吹く涼しい風に靡く緑の草。

吸い込まれそうなほど青々とした空。

本来なら川岸の土手に座って景色を眺めるべきところだけど、今の私は情緒の欠片もなく全力疾走中。

この川岸は結構な距離があり、走れども簡単には終わりが見えない。

視界に入ってくるのは川の浅瀬で水遊びしてる小さな子供に散歩中の老夫婦。

マロンブラウンの彼が見つからないのだ。

「はっ、はぁ……、横っ腹が!」

手でお腹を撫でてもそれは気休めでしかなく。

久しぶりに走ったから、体が悲鳴をあげ始めた。

今日はスニーカーだったのがせめてもの救いだ。

ちょっと休憩、と誘惑を持ちかけてくるもう1人の自分を頭から追い出して更に走る。

走る前に電話したけど応答はなし、メッセージアプリにもまだ返信がない。

意図的に、なのかな。もしそうなら頼みの綱は自分の足しかないじゃないか。

タン、タン、タン、タン。

ひたすらコンクリートを蹴り続ける。

スタジオであれだけ碧音君に啖呵切ってきたんだ、諦めることは出来ない。しちゃいけない。

……碧音君に今後お前とは口きかないとか言われたらどうしよう、後で仲直りしたいな。

あの時の碧音君は、いつもの冷静さを失っていたように思う。私も、人のことは言えないんだけどさ。

「……ん?」

先にある橋の下に、誰かいる。藍?はたまた別人?

こちらからは判断し辛いので力を振り絞り走るペースを上げた。

風が頬を撫で、髪を拐っていく。

「藍!」

マロンブラウンの髪にスタジオで会った時と同じ服装。間違いない、藍だ。

「らんっ」

「明日歌ちゃん……?」

もう一度名前を呼べば、私に気づいてくれた。

何故私が川岸にいるのか、どうして居場所が分かったのか、そんな顔で目をパチパチ。

「わっ、私……藍をさが、探しに」

「大丈夫?すごい顔してるぞ」

「ごめ、息が」

何せ走りっぱなしだったから、息が乱れてしょうがない。

へばってハーハー息をあげる私の背中に、藍は優しく手を当てて上下に擦ってくれた。

情けないです、明日から毎日ジョギングでもしよう。

「深呼吸して、ゆっくり」

藍は自分が辛くてもこうやって他人を心配してくれる。

無性に泣きたくなった。

泣きたいのはきっと、藍の方なのに。

ふう、息を吐き出し何とか落ち着いたところで、本題を切り出す。

「藍に、話があって追いかけてきた」

「よく分かったね、俺の居場所」

「星渚さんが教えてくれて」

「星渚が……」

星渚さんの予想はピッタリ当たっていた。

「藍、練習に来られなくなるって皆に言ったんでしょ?」

「言ったね」

「何か、あった?」

「大したことじゃないからさ」

笑って曖昧に誤魔化そうとする。でも藍、上手く笑えてないよ。少しやつれた?

「心配になって。電話してる時、やり切れないって表情してると思ったからさ」

「見てたのかー」

困ったな、目を伏せて顔を逸らす。

「でも、ほんと大丈夫。明日歌ちゃんは心配しないでいいよ」

大丈夫、まるでそれは自分に言い聞かせてるみたいだ。でも、騙し騙しじゃ限界がくる。

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