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遺産相続
桜子
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「萌萌ちゃんが産まれたばかりの頃、桜子さんの御主人が亡くなったんじゃ。交通事故じゃた」
「桜子さんは、ショックで体調を崩し仕事が出来なくなってしもうた」
「それで、わしも夜中にトイレに行くのが憚れて、遂に布団に失禁してしもうたんじゃ」
「そしたら、おしめをされるようになっての」
「さすがに情けなくなって、施設を出て家に戻りたくなったんじゃ」
「ところが家に帰っても誰も世話をしてくれる者は居ない。息子の嫁達は、到底あてにならんかった」
話を聞いていた、美耶子達、息子の妻達は、ばつが悪そうに顔を見合せた。
「そこで、桜子さんに頼んだんじゃ。うちに来て、住み込みで介護をしてくれんかと」
「桜子さんは、体調に不安が有るからと最初は断ってきてたんだが、わしを人並みに扱ってくれるのは桜子さんしかいないと頼み込んで、やっと承諾してもらえた」
「それから10年間、この家で桜子さんと萌萌ちゃんと一緒に暮らすようになった」
「桜子さんは、毎日食事を作ってくれた。」
「風呂は体を洗う機械を買って桜子さん一人でも体が洗えるようにした。」
「トイレも改造したが、桜子さんがいたおかげで便器に座ってトイレができた」
「夜中でも、トイレに連れて行ってくれるし、体位も変えてくれる」
「もちろん散歩にも連れて行ってくれるし、何よりも萌萌ちゃんの成長が楽しみじゃった。三人で散歩できるようになってどれだけ癒されたか」
「わしは、自分の事を要らない物、ただのお荷物と思う事は、無くなった。生きてても良いと思えるようになった」
「桜子さんと萌萌ちゃんのおかげじゃ。」
「しかし、わしの面倒を見させたおかげで、桜子さんの就職や再婚を難しくしてしまった」
「だから、今後の生活も考えて桜子さんに遺産を分けたいのじゃ」
「お前達に頼む、桜子さんが遺産を受けとるのを邪魔しないでくれ」
三人の息子とその妻達は、正座している小学生を黙って見つめていた。
童士に降りている虎臣は、桜子さんの方を向いた。
「桜子さん、あんたは、何もしなくていいんじゃ。黙っていれば勝手に銀行の口座に金が入る様にしてある。後は、そこにおる山下弁護士がやってくれるからの」
桜子は、振り返って正面に座る山下弁護士を見た。
山下は、桜子さんを見て頷く。
童士は、それっきり口を閉ざした。
暫くすると目を開けて立ち上がった。
「虎臣さんのおっしゃりたいことは以上です。それでは、僕はこれで失礼します」
そう言うと、静まり返る息子と妻達の見つめる前を、ドアに向かって歩き出した。
しかし2・3歩、歩いたところで立ち止まり少し間を置いて桜子さんの方を振り向いた。
「いま、山村虎臣さんから伝えてくれと言われました、桜子さん長い間ありがとうと」
その瞬間、桜子の目からは、涙が溢れた。
童士は、部屋を出ながら考えていた。
(昼から学校に行っても皆勤賞は貰えるだろうか?)
童士が勝淞寺に帰って来ると君子が迎えてくれた。
「お帰り、童ちゃん。どうだった?」
「大丈夫です。桜子さんは遺産を受けとると思います」
「そう、良かったわね。ご苦労様」
「それでは、僕は、今から学校にいきますので」
そう言うと童士は、君子の横を通り抜けて鞄を取りに階段を上がって行った。
「桜子さんは、ショックで体調を崩し仕事が出来なくなってしもうた」
「それで、わしも夜中にトイレに行くのが憚れて、遂に布団に失禁してしもうたんじゃ」
「そしたら、おしめをされるようになっての」
「さすがに情けなくなって、施設を出て家に戻りたくなったんじゃ」
「ところが家に帰っても誰も世話をしてくれる者は居ない。息子の嫁達は、到底あてにならんかった」
話を聞いていた、美耶子達、息子の妻達は、ばつが悪そうに顔を見合せた。
「そこで、桜子さんに頼んだんじゃ。うちに来て、住み込みで介護をしてくれんかと」
「桜子さんは、体調に不安が有るからと最初は断ってきてたんだが、わしを人並みに扱ってくれるのは桜子さんしかいないと頼み込んで、やっと承諾してもらえた」
「それから10年間、この家で桜子さんと萌萌ちゃんと一緒に暮らすようになった」
「桜子さんは、毎日食事を作ってくれた。」
「風呂は体を洗う機械を買って桜子さん一人でも体が洗えるようにした。」
「トイレも改造したが、桜子さんがいたおかげで便器に座ってトイレができた」
「夜中でも、トイレに連れて行ってくれるし、体位も変えてくれる」
「もちろん散歩にも連れて行ってくれるし、何よりも萌萌ちゃんの成長が楽しみじゃった。三人で散歩できるようになってどれだけ癒されたか」
「わしは、自分の事を要らない物、ただのお荷物と思う事は、無くなった。生きてても良いと思えるようになった」
「桜子さんと萌萌ちゃんのおかげじゃ。」
「しかし、わしの面倒を見させたおかげで、桜子さんの就職や再婚を難しくしてしまった」
「だから、今後の生活も考えて桜子さんに遺産を分けたいのじゃ」
「お前達に頼む、桜子さんが遺産を受けとるのを邪魔しないでくれ」
三人の息子とその妻達は、正座している小学生を黙って見つめていた。
童士に降りている虎臣は、桜子さんの方を向いた。
「桜子さん、あんたは、何もしなくていいんじゃ。黙っていれば勝手に銀行の口座に金が入る様にしてある。後は、そこにおる山下弁護士がやってくれるからの」
桜子は、振り返って正面に座る山下弁護士を見た。
山下は、桜子さんを見て頷く。
童士は、それっきり口を閉ざした。
暫くすると目を開けて立ち上がった。
「虎臣さんのおっしゃりたいことは以上です。それでは、僕はこれで失礼します」
そう言うと、静まり返る息子と妻達の見つめる前を、ドアに向かって歩き出した。
しかし2・3歩、歩いたところで立ち止まり少し間を置いて桜子さんの方を振り向いた。
「いま、山村虎臣さんから伝えてくれと言われました、桜子さん長い間ありがとうと」
その瞬間、桜子の目からは、涙が溢れた。
童士は、部屋を出ながら考えていた。
(昼から学校に行っても皆勤賞は貰えるだろうか?)
童士が勝淞寺に帰って来ると君子が迎えてくれた。
「お帰り、童ちゃん。どうだった?」
「大丈夫です。桜子さんは遺産を受けとると思います」
「そう、良かったわね。ご苦労様」
「それでは、僕は、今から学校にいきますので」
そう言うと童士は、君子の横を通り抜けて鞄を取りに階段を上がって行った。
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