つつ(憑憑)

九文里

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童士と真理子

極楽

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「童士君」
 その時、真理子の後ろから大きな声がした。
 童士が振り向くと真理子の後ろからもう一人の真理子が走って来ていた。
 
「童士君けて」
 あとから来た真理子が、童士のすぐ後ろにいた真理子に体当たりした。
 身を引いた童士の横を、前の真理子が転げて穴の中に入って行く。
 すると、その真理子は穴の中に吸い込まれていった。

「来て」
 後から来た真理子は、童士の手を取って走った。

「棘の仲間が童士君を暗闇に閉じ込めるために私に化けてたのよ」
 真理子が走りながら言った。
 童士はこの真理子は本物だと分かった。真理子の背中から魂の緒が出て伸びていた。
 その緒を辿って行くと一本の木の根元にあるウロから出ている。
白い花を満開にして、花びらが舞っていた。

「行きましょう」
 童士がそう言うと、二人は飛び込んだ。



 童士が目を開けると体の上に真理子が目を閉じて寝ていた。
 童士が半身を起こして真理子の肩を揺すると、真理子も目を覚ました。
  
「童士君。大丈夫?」

「はい、真理子さんも?」

「うん」

 二人は立ち上がって周りを見回した。
 棘も夕の姿も無く、他の子供達も元の姿に戻っていて寝惚けた様に呆けていた。

 取り敢えず皆自分達の席に戻った。何人かは、教室のドアを開けて、外の様子を伺っている。
 他のクラスは、普段どおり授業をしていて、何事も無かったようだ。

 その後、他の先生がやって来て、青山先生は急病で休みだからと、一日自習する事になった。

 棘と夕はどうなったんだろうと童士は気になったが、その日は授業終了のチャイムが鳴ると学校から帰った。

 次の日、学校に行くと青山先生は出て来ていた。
 昨日は一日中寝ていて、気がついたら夜になっていた、と言うことだった。
 棘は、青山先生を眠らせていただけだった。

 真理子も変だと思っていたが、いつも通りの時間が流れていたので、特段なにをする事もなかった。
 そうして、童士は棘に襲われる事は無くなり、夕もあれから見る事は無くなった。
 
 平穏な日々を過ごすようになった。そして、童士の横にはいつも真理子がいた。
 二人は同じ時を過ごして年月が過ぎた。
 
 成人すると童士と真理子は、結婚した。子供も男の子、女の子が出来て幸せだった。
 あんな事があったのに何て幸せだろうと童士は思っていた。
 それも真理子が片時も離れず側にいるおかげだと分かっていた。

「これが御前の極楽である」

 何処からともなく声が響いた。その瞬間、童士は目を開いた。
 寝そべっているようで、自分の体の上には小学生の真理子が意識を失って乗っている。
 そして、上を見上げると夕がいた。



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