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絵姿王子様はドS男子
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これは失恋で恋をやめて,絵に全てを捧げたとある女性の物語。
どうも私は竹野 百合花,愛知県に住む容姿や自分に自信がない売れない画家です。
私は絵が大好き,絵は理想を描けるし,私を捨てないから好き,私にとっては彼氏みたいなものよ。
私がこんなに絵に執着したか教えるね。
それは社会人1年目くらいの8月の終わり頃のこと,
私には当時,高校2年の亜雲 幸人(あぐも ゆきと)君という年下の彼氏がいて,
遠距離恋愛だったんだけど,すごく私のことを一途に愛してくれた人だったの。
とても幸せな2年間半だったわ。
だけどある時,私は一途に愛してくれた彼にLINEで別れたいことを告げられ,別れることになったの。
別れる原因は遠距離恋愛が耐えられなくなったことと社会人と学生の境界線が原因だったみたい,私は寂しかったけど,彼の言葉を受け入れて別れてしまった。
そのことが悔しくて,寂しくて,恋愛を諦めようと思うようになりました。
ある日,思い出が忘れられなくて,名古屋駅の近くにあるとあるビルの展望台に行ってそこで思い出を振り返っていました。
絵を描くことが趣味の私はあることを思いつきました。
(ここは悲しい思い出もあるけど,癒されるな~そうだ!この美しい景色を絵にしよう!)
そう思った百合花は家に帰ったら早速,絵を描きはじめました。
上から見た街並み,青い空,眩しい太陽,寂しさも忘れて絵に没頭していると百合花は思いました。
(絵ってなんで楽しいのかしら,絵を描いていれば,寂しさも辛さも忘れられそう。)
百合花は辛さを忘れて絵に力を入れるようになり,描いた絵をコンクールに出すようになりました。
そして,彼女は本業をしながら,画家を目指すようになりました。
本業と画家の二刀流はなかなかキツイものでしたが,彼女は絵は趣味と思って楽しくやっていました。
本業はなかなか稼げているに対して,絵はコンクールに出しても失敗したり上手く売れなかったりして,苦労しました。
(どうしたら,買ってくれる人の心を打つような素敵な絵が描けるだろう?)
百合花は悩み始めます。
(そうだ!これは趣味,現実では恋愛はもう怖いから絵で自分の理想の王子様を描いちゃおう。そしてその絵を彼氏として大切にしよう。)
こうして百合花は絵で自分の理想の王子様を描くために一筆一筆大切に描き始めました。
理想の王子様を細かく描くために,理想の身長を描けるような大きな画風を用意しました。
画風のサイズは8等身(約170~180)を準備して,描き始めました。
百合花の理想の王子様は気遣いがうまくて優しくて,大人な性格,顔的にはかっこよさもあるけど,少し可愛い系男子が好きです。
最初は顔を描き始めました。
シャープで凛々しい顔つきに,左右に分けてオデコを見せた癖のある黒髪,クリクリとした二重で切りめの大きい目に長いまつ毛,少し濃い眉にぷっくりした色っぽい唇の可愛い系王子様です。
次は体,170cmくらいの身長にバランスの良いモデル並みの体型,鍛えた凛々しい体のセクシーイケメンにして日本らしく,着物を描きました。
自分でもびっくりするほどの理想の王子様を3日かけて描いたことが嬉しくて名前をつけました。
(これでよし!この人の名前は天宮 健一郎(あまみや けんいちろう)さん,私の理想の王子様。)
満足して完成した絵を見つめます。
「なんて素敵な人かしら♪」
思わず,百合花がそうつぶやくと,どこからか声が聞こえてきました。
「それは光栄だね。」
百合花は驚いてあたりを見渡しました。
「だっ誰?」
しかし,あたりには誰もいません。
(気のせい…かしら?)
百合花は気のせいだと思い,振り返ると絵から光が溢れて,その眩しさに目をつぶりました。
「キャー!」
光が収まり,視力を取り戻すと,そこには着物を着た美しい男性が立っていました。
(きっ綺麗な人~///)
百合香は思わず,男性に見惚れてしまいましたが,すぐに我に返り訪ねました。
「あの…あなたは一体?」
すると男性は,にっこり微笑みこう言いました。
「ごきげんよう,俺は天宮 健一郎です。名前を言ったら,どこから来たかわかるよね?」
百合香はポカーンとしながら,考えました。
(天宮 健一郎さん…まさか)
「あなた…まさか,私の絵の…」
天宮さんはクスッと笑うと言いました。
「そう,俺は君が描いた王子様だよ。名前をつけたり,俺を描いてくれてありがとう。」
天宮さんはそういうと優雅に深々とお辞儀をしました。
百合香も合わせてお辞儀をします。
「いえいえとんでもない,喜んでもらえてよかったです。あの…ところでどうして絵から出てこれたんですか?」
その問いかけに天宮さんはこう答えました。
「君が大切に心を込めて,俺を描いてくれたので,出てくることができました。君が俺を描くために使っていた筆を覚えていますか?」
「筆?」
百合花が絵を描くために使用していた筆は,先日友人が,
「この筆は不思議な筆で願い事を叶えてくれるの」
っと言って,気落ちしていた私に譲ってくれたものでした。
「まさか…この筆の力…なの?」
「そういうこと、その筆は元々魔法使いのもので、その筆を使って描いたものは心がこもっていればいるほど,実現できる筆なんだ。ただし,正体は絵なので,画風が濡れたり,破れたりすると,できたものもダメージを受けてしまうから気をつけてほしい。」
「わっわかりました。」
百合花が筆の力に驚いて,筆を見つめていると,天宮さんは言いました。
「俺を描いてくれた君にひとつ頼み事をしたいのだけど,頼まれてくれないか?」
百合花は迷いもなく答えました。
「私でよければ…」
「ありがとう」
天宮さんはそういうと少し顔色を変えて,言いました。
「君を見込んで頼みたい,俺に似合う姫を描いてほしいんだ。」
(あれ?思ってた流れと違う…)
百合花が困惑していると,天宮さんが言いました。
「どうしたの?まさか…断りたいとか?」
天宮さんの優しかった口調が少し変わりました。
「えっ…いいえ,大丈夫です。頑張ってみます。」
百合花は少し驚いて,天宮さんを見つめました。
「頼みましたよ。」
百合花は少しがっかりした表情で,絵を描くための椅子に腰掛けて考えました。
(やっぱり,願いが叶っても,私は自分の描いた絵にすら選ばれないのか…)
百合花は自分の選ばれない容姿にがっかりしました。
落ち込みはしたものの,好きな人の願い事なので,開き直って,天宮さんに似合うお姫様を描き始めました。
一生懸命考えて,描いている間,天宮さんは隣で,百合花の様子を見ていました。
(見られながらだと緊張する…)
百合香は振り返って,天宮さんに言いました。
「あの…ずっと見ているんですか?」
「あぁ,ちゃんと俺に合う姫を描いているか,様子を見ているんだ,何か不満か?」
ビクッ!
「いいえ…」
百合花は少しビクビクしながら,筆を動かしていました。
(天宮さん,なんだかさっきから怖いなー)
そんなことを思いながらも,丁寧にお姫様を描き終えると,天宮さんに見せました。
「う~ん,美しいが…何か物足りない,まるで幼い少女のようだ。」
天宮さんがそう答えると,画風のお姫様が言いました。
「まぁ!失礼ね。私だってあなたみたいな人お断りだわ。」
天宮さんは少しムッとした表情になりました。
百合花はこれ以上怒らせてはいけないと思い,もう1人お姫様を描こうと思いました。
「もう1人,描きましょう。」
天宮さんは少し驚いた顔をすると,不敵な笑みを浮かべて言いました。
「ありがとう,なかなか聞き分けがいい人だね。」
「……」
百合花は無言で再び画風を持ってくると,静かに描き始めました。
(は~こんなはずじゃなかったのに…どうして私…ライバルの絵なんて描いてるんだろう?)
望んでいた人と違うこと,ライバルを描かされていることに百合花は自分に失望していました。
2人目は年上のお姫様を描くと,天宮さんは
「タイプじゃない」と言い,
3人目はキツイ顔のお姫様を描くと,
「性格が気に食わない」と,
4人目は可愛いお姫様を描くと,
「なんか違う」と言われ,
なかなか天宮さんのタイプのお姫様を描けませんでした。
百合花はヘトヘトになりながらも一生懸命お姫様を描き続けました。
お姫様を描き続けた結果,百合花の描いたお姫様の人数は,20作,30作と増えていき,99作になりました。
「はぁ~やはり最初の姫以上に美しい姫は現れないか…」
百合花は天宮さんに問いかけました。
「えっ?最初の姫ってあの天宮さんが幼い少女って言ってたお姫様のことですか?」
天宮さんは首を横に振って答えました。
「いいえ,その姫じゃない,数え方を変えると,100人目とも言えるね。」
百合花はその言葉を聞いて,不思議に思いました。
(100人目?私の描いたお姫様は全部で99人,どういうことだろう?)
天宮さんはクスッと笑って言いました。
「わからないの?最初からそばにいたというか,俺を描いてくれた人なんて1人しかいないでしょ?」
百合花はハッとした顔をして,天宮さんを見つめました。
「わっ私?」
天宮さんはゆっくりうなづいきました。
「でも…それだったらどうして…私にお姫様を描いてほしいなんて言ってたんですか?」
天宮さんはそう聞くと静かに語りました。
「俺は所詮,絵の住人…実在する人物と一緒になれない…それだったら…君に似た姫を描いてもらって,その姫と一緒になろうと思ってたんだ。」
「そんな…」
百合花は天宮さんの言葉に唖然として固まってしまいました。
「私は…絵であってもそうでなくても,好きよ。あなたに対する想いはどっちだったとしても変わらないわ」
天宮さんは百合花の言葉を聞くと嬉し涙を浮かべながら,優しく笑いました。
百合花は勘違いしていたことを後悔していました。それと同時に最初から彼に選ばれていたことに嬉しさを感じていました。
(そういえば,この筆は心を込めれば叶えてくれる筆,私はライバルに嫉妬して,心がこもっていなかったから,成功しなかったんだ。)
そう考えると百合花はふと疑問を抱きました。
「天宮さん,もし…私が進んであなたのお相手を描いて,そのお姫様が好みのタイプだったら,どうしていたんですか?」
天宮さんは答えました。
「もし好みのタイプを描いてくれていたとしても,俺はその姫を選ばなかったと思う,あなた以外に美しい姫はいないと思うから」
百合花はそれを聞くと頬を赤く染めて言いました。
「うっ美しいなんてそんな…私より綺麗な人なんてたくさんいます。」
そう聞くと,天宮さんは不機嫌そうに言いました。
「う~んもったいないな~,容姿の美しさで,決めているんじゃないんだけど,俺にとってはあなたが世界で一番美しい,容姿も心も,女性は顔じゃなくて,まずは心だよ。」
「心?」
百合花は元々自分に自信がなかったので,あまりピンと来ていませんでした。
「せっかく描いてくれたお姫様に文句ばかり言う俺に対して,君は文句1つ言わず,俺のために描き続けてくれたこと,ライバルを描かされているのに諦めなかったこと,こんなこと普通はできない…だから君は優しくて思いやりの深い心の持ち主です。」
百合花はこの言葉を聞いてニッコリ微笑みました。
「まぁ…ありがとうございます。でも私は…あなたが思うほど…優しい人間ではありません…描き続けれたのは私の絵に対しての意地ですから…」
天宮さんは少し落ち着いた顔をして言いました。
「それでも,諦めずに俺のために絵を描き続けてくれたのはすごいことだよ。ありがとう,あなたが受け入れてくれるなら,俺のいや,俺だけの姫になってくれませんか?」
百合花は少し考え込むと少し緊張しながら,言いました。
「私でよければ喜んで///」
天宮さんは顔をパーッと明るくして,言いました。
「もーまたそんな言い方…君がいいんだよ?でもありがとう///受け入れて…」
そう言うと天宮さんはそっと百合花を抱きしめました。
百合花はそんな天宮さんを優しく抱き返しました。
こうして百合花は自分の描いた心を持った絵姿王子様と両思いになりました。
え?絵だから結婚できないって?それは心配ありません。
この後,元々の筆の持ち主だった魔法使いが現れて,天宮さんを人間にしてくれたのです。
こうして,完全な人間になった天宮さんと,百合花は結婚して幸せに暮らしました。
どうも私は竹野 百合花,愛知県に住む容姿や自分に自信がない売れない画家です。
私は絵が大好き,絵は理想を描けるし,私を捨てないから好き,私にとっては彼氏みたいなものよ。
私がこんなに絵に執着したか教えるね。
それは社会人1年目くらいの8月の終わり頃のこと,
私には当時,高校2年の亜雲 幸人(あぐも ゆきと)君という年下の彼氏がいて,
遠距離恋愛だったんだけど,すごく私のことを一途に愛してくれた人だったの。
とても幸せな2年間半だったわ。
だけどある時,私は一途に愛してくれた彼にLINEで別れたいことを告げられ,別れることになったの。
別れる原因は遠距離恋愛が耐えられなくなったことと社会人と学生の境界線が原因だったみたい,私は寂しかったけど,彼の言葉を受け入れて別れてしまった。
そのことが悔しくて,寂しくて,恋愛を諦めようと思うようになりました。
ある日,思い出が忘れられなくて,名古屋駅の近くにあるとあるビルの展望台に行ってそこで思い出を振り返っていました。
絵を描くことが趣味の私はあることを思いつきました。
(ここは悲しい思い出もあるけど,癒されるな~そうだ!この美しい景色を絵にしよう!)
そう思った百合花は家に帰ったら早速,絵を描きはじめました。
上から見た街並み,青い空,眩しい太陽,寂しさも忘れて絵に没頭していると百合花は思いました。
(絵ってなんで楽しいのかしら,絵を描いていれば,寂しさも辛さも忘れられそう。)
百合花は辛さを忘れて絵に力を入れるようになり,描いた絵をコンクールに出すようになりました。
そして,彼女は本業をしながら,画家を目指すようになりました。
本業と画家の二刀流はなかなかキツイものでしたが,彼女は絵は趣味と思って楽しくやっていました。
本業はなかなか稼げているに対して,絵はコンクールに出しても失敗したり上手く売れなかったりして,苦労しました。
(どうしたら,買ってくれる人の心を打つような素敵な絵が描けるだろう?)
百合花は悩み始めます。
(そうだ!これは趣味,現実では恋愛はもう怖いから絵で自分の理想の王子様を描いちゃおう。そしてその絵を彼氏として大切にしよう。)
こうして百合花は絵で自分の理想の王子様を描くために一筆一筆大切に描き始めました。
理想の王子様を細かく描くために,理想の身長を描けるような大きな画風を用意しました。
画風のサイズは8等身(約170~180)を準備して,描き始めました。
百合花の理想の王子様は気遣いがうまくて優しくて,大人な性格,顔的にはかっこよさもあるけど,少し可愛い系男子が好きです。
最初は顔を描き始めました。
シャープで凛々しい顔つきに,左右に分けてオデコを見せた癖のある黒髪,クリクリとした二重で切りめの大きい目に長いまつ毛,少し濃い眉にぷっくりした色っぽい唇の可愛い系王子様です。
次は体,170cmくらいの身長にバランスの良いモデル並みの体型,鍛えた凛々しい体のセクシーイケメンにして日本らしく,着物を描きました。
自分でもびっくりするほどの理想の王子様を3日かけて描いたことが嬉しくて名前をつけました。
(これでよし!この人の名前は天宮 健一郎(あまみや けんいちろう)さん,私の理想の王子様。)
満足して完成した絵を見つめます。
「なんて素敵な人かしら♪」
思わず,百合花がそうつぶやくと,どこからか声が聞こえてきました。
「それは光栄だね。」
百合花は驚いてあたりを見渡しました。
「だっ誰?」
しかし,あたりには誰もいません。
(気のせい…かしら?)
百合花は気のせいだと思い,振り返ると絵から光が溢れて,その眩しさに目をつぶりました。
「キャー!」
光が収まり,視力を取り戻すと,そこには着物を着た美しい男性が立っていました。
(きっ綺麗な人~///)
百合香は思わず,男性に見惚れてしまいましたが,すぐに我に返り訪ねました。
「あの…あなたは一体?」
すると男性は,にっこり微笑みこう言いました。
「ごきげんよう,俺は天宮 健一郎です。名前を言ったら,どこから来たかわかるよね?」
百合香はポカーンとしながら,考えました。
(天宮 健一郎さん…まさか)
「あなた…まさか,私の絵の…」
天宮さんはクスッと笑うと言いました。
「そう,俺は君が描いた王子様だよ。名前をつけたり,俺を描いてくれてありがとう。」
天宮さんはそういうと優雅に深々とお辞儀をしました。
百合香も合わせてお辞儀をします。
「いえいえとんでもない,喜んでもらえてよかったです。あの…ところでどうして絵から出てこれたんですか?」
その問いかけに天宮さんはこう答えました。
「君が大切に心を込めて,俺を描いてくれたので,出てくることができました。君が俺を描くために使っていた筆を覚えていますか?」
「筆?」
百合花が絵を描くために使用していた筆は,先日友人が,
「この筆は不思議な筆で願い事を叶えてくれるの」
っと言って,気落ちしていた私に譲ってくれたものでした。
「まさか…この筆の力…なの?」
「そういうこと、その筆は元々魔法使いのもので、その筆を使って描いたものは心がこもっていればいるほど,実現できる筆なんだ。ただし,正体は絵なので,画風が濡れたり,破れたりすると,できたものもダメージを受けてしまうから気をつけてほしい。」
「わっわかりました。」
百合花が筆の力に驚いて,筆を見つめていると,天宮さんは言いました。
「俺を描いてくれた君にひとつ頼み事をしたいのだけど,頼まれてくれないか?」
百合花は迷いもなく答えました。
「私でよければ…」
「ありがとう」
天宮さんはそういうと少し顔色を変えて,言いました。
「君を見込んで頼みたい,俺に似合う姫を描いてほしいんだ。」
(あれ?思ってた流れと違う…)
百合花が困惑していると,天宮さんが言いました。
「どうしたの?まさか…断りたいとか?」
天宮さんの優しかった口調が少し変わりました。
「えっ…いいえ,大丈夫です。頑張ってみます。」
百合花は少し驚いて,天宮さんを見つめました。
「頼みましたよ。」
百合花は少しがっかりした表情で,絵を描くための椅子に腰掛けて考えました。
(やっぱり,願いが叶っても,私は自分の描いた絵にすら選ばれないのか…)
百合花は自分の選ばれない容姿にがっかりしました。
落ち込みはしたものの,好きな人の願い事なので,開き直って,天宮さんに似合うお姫様を描き始めました。
一生懸命考えて,描いている間,天宮さんは隣で,百合花の様子を見ていました。
(見られながらだと緊張する…)
百合香は振り返って,天宮さんに言いました。
「あの…ずっと見ているんですか?」
「あぁ,ちゃんと俺に合う姫を描いているか,様子を見ているんだ,何か不満か?」
ビクッ!
「いいえ…」
百合花は少しビクビクしながら,筆を動かしていました。
(天宮さん,なんだかさっきから怖いなー)
そんなことを思いながらも,丁寧にお姫様を描き終えると,天宮さんに見せました。
「う~ん,美しいが…何か物足りない,まるで幼い少女のようだ。」
天宮さんがそう答えると,画風のお姫様が言いました。
「まぁ!失礼ね。私だってあなたみたいな人お断りだわ。」
天宮さんは少しムッとした表情になりました。
百合花はこれ以上怒らせてはいけないと思い,もう1人お姫様を描こうと思いました。
「もう1人,描きましょう。」
天宮さんは少し驚いた顔をすると,不敵な笑みを浮かべて言いました。
「ありがとう,なかなか聞き分けがいい人だね。」
「……」
百合花は無言で再び画風を持ってくると,静かに描き始めました。
(は~こんなはずじゃなかったのに…どうして私…ライバルの絵なんて描いてるんだろう?)
望んでいた人と違うこと,ライバルを描かされていることに百合花は自分に失望していました。
2人目は年上のお姫様を描くと,天宮さんは
「タイプじゃない」と言い,
3人目はキツイ顔のお姫様を描くと,
「性格が気に食わない」と,
4人目は可愛いお姫様を描くと,
「なんか違う」と言われ,
なかなか天宮さんのタイプのお姫様を描けませんでした。
百合花はヘトヘトになりながらも一生懸命お姫様を描き続けました。
お姫様を描き続けた結果,百合花の描いたお姫様の人数は,20作,30作と増えていき,99作になりました。
「はぁ~やはり最初の姫以上に美しい姫は現れないか…」
百合花は天宮さんに問いかけました。
「えっ?最初の姫ってあの天宮さんが幼い少女って言ってたお姫様のことですか?」
天宮さんは首を横に振って答えました。
「いいえ,その姫じゃない,数え方を変えると,100人目とも言えるね。」
百合花はその言葉を聞いて,不思議に思いました。
(100人目?私の描いたお姫様は全部で99人,どういうことだろう?)
天宮さんはクスッと笑って言いました。
「わからないの?最初からそばにいたというか,俺を描いてくれた人なんて1人しかいないでしょ?」
百合花はハッとした顔をして,天宮さんを見つめました。
「わっ私?」
天宮さんはゆっくりうなづいきました。
「でも…それだったらどうして…私にお姫様を描いてほしいなんて言ってたんですか?」
天宮さんはそう聞くと静かに語りました。
「俺は所詮,絵の住人…実在する人物と一緒になれない…それだったら…君に似た姫を描いてもらって,その姫と一緒になろうと思ってたんだ。」
「そんな…」
百合花は天宮さんの言葉に唖然として固まってしまいました。
「私は…絵であってもそうでなくても,好きよ。あなたに対する想いはどっちだったとしても変わらないわ」
天宮さんは百合花の言葉を聞くと嬉し涙を浮かべながら,優しく笑いました。
百合花は勘違いしていたことを後悔していました。それと同時に最初から彼に選ばれていたことに嬉しさを感じていました。
(そういえば,この筆は心を込めれば叶えてくれる筆,私はライバルに嫉妬して,心がこもっていなかったから,成功しなかったんだ。)
そう考えると百合花はふと疑問を抱きました。
「天宮さん,もし…私が進んであなたのお相手を描いて,そのお姫様が好みのタイプだったら,どうしていたんですか?」
天宮さんは答えました。
「もし好みのタイプを描いてくれていたとしても,俺はその姫を選ばなかったと思う,あなた以外に美しい姫はいないと思うから」
百合花はそれを聞くと頬を赤く染めて言いました。
「うっ美しいなんてそんな…私より綺麗な人なんてたくさんいます。」
そう聞くと,天宮さんは不機嫌そうに言いました。
「う~んもったいないな~,容姿の美しさで,決めているんじゃないんだけど,俺にとってはあなたが世界で一番美しい,容姿も心も,女性は顔じゃなくて,まずは心だよ。」
「心?」
百合花は元々自分に自信がなかったので,あまりピンと来ていませんでした。
「せっかく描いてくれたお姫様に文句ばかり言う俺に対して,君は文句1つ言わず,俺のために描き続けてくれたこと,ライバルを描かされているのに諦めなかったこと,こんなこと普通はできない…だから君は優しくて思いやりの深い心の持ち主です。」
百合花はこの言葉を聞いてニッコリ微笑みました。
「まぁ…ありがとうございます。でも私は…あなたが思うほど…優しい人間ではありません…描き続けれたのは私の絵に対しての意地ですから…」
天宮さんは少し落ち着いた顔をして言いました。
「それでも,諦めずに俺のために絵を描き続けてくれたのはすごいことだよ。ありがとう,あなたが受け入れてくれるなら,俺のいや,俺だけの姫になってくれませんか?」
百合花は少し考え込むと少し緊張しながら,言いました。
「私でよければ喜んで///」
天宮さんは顔をパーッと明るくして,言いました。
「もーまたそんな言い方…君がいいんだよ?でもありがとう///受け入れて…」
そう言うと天宮さんはそっと百合花を抱きしめました。
百合花はそんな天宮さんを優しく抱き返しました。
こうして百合花は自分の描いた心を持った絵姿王子様と両思いになりました。
え?絵だから結婚できないって?それは心配ありません。
この後,元々の筆の持ち主だった魔法使いが現れて,天宮さんを人間にしてくれたのです。
こうして,完全な人間になった天宮さんと,百合花は結婚して幸せに暮らしました。
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