転生令嬢、淑女の嗜みよりも筋肉と剣を極めます 〜チートレベルアップで最強貴族令嬢になった件〜 [完]

水無月いい人(minazuki)

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第一章「最強令嬢、誕生」

第九話「最初の依頼、そして新たな試練」

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──冒険者ギルドの掲示板は、様々な依頼書で埋め尽くされていた。

「……これが、冒険者の世界ですのね」

私は掲示板の前で立ち止まり、一枚、また一枚と依頼書に目を通していった。

【ゴブリン討伐】  
【森の魔獣駆除】  
【遺跡の探索と護衛】  
【魔導書の回収依頼】  

依頼の種類は多岐に渡り、報酬金額も内容によって大きく異なる。
簡単な雑用から、命を懸けるような討伐依頼まで──冒険者の世界では実力がすべてだ。

「……最初の依頼ですもの、慎重に選ばないといけませんわね」

私は心の中でそう呟きながら、掲示板に張られた依頼を一つずつ確認していく。

──だが、その時。

「お嬢ちゃん、初心者ならこれくらいにしといたほうがいいぜ?」

後ろから、男の声がした。
振り返ると、粗野な風貌の男が依頼書を一枚手に取り、ニヤニヤと笑っている。

「ゴブリン討伐とか、せいぜい森の小動物の駆除がお似合いだろ?」

周囲の冒険者たちも、面白そうにこちらを見ていた。

(あら、この方々先の戦いを知らない冒険者達ですわね?)

それは訓練場にはいなかった冒険者だった。私の実力を知らなくて当然だ。

「おいおい、やめとけって。お貴族様だって背伸びくらいしたいんだろ」

「ま、本人がやりたいなら止めねぇさ。ただし、森の中で泣き叫んでも誰も助けちゃくれねぇぜ?お嬢さん?」

男たちの言葉に、私は静かに息を吐いた。

──この手の挑発は、冒険者ギルドでは日常茶飯事なのだろう。

だが、それでも。

「……お気遣いありがとうございますわ。でも、私はゴブリン退治程度では満足できませんの」

「はぁ?」

男が眉をひそめる。

私は掲示板の中央に貼られた一枚の依頼書に手を伸ばした。

【指定の魔獣討伐:フォレスト・グリズリー】  
報酬金額:金貨100枚  
難易度:Cランク相当  
依頼内容:近隣の森に現れた大型魔獣「フォレスト・グリズリー」の討伐

「これにいたしますわ」

依頼書を掲げて告げると、周囲の冒険者たちが一斉にどよめいた。

「おいおい、正気かよ!? フォレスト・グリズリーってのは、熟練の冒険者でも手こずるやつだぜ!?」

「そうだぜ、Cランク魔獣なんて、初心者が挑んだら間違いなく死ぬぞ!」

「いくら剣が使えるって言っても、無謀すぎる!やめとけ嬢ちゃん!挑発した俺らが悪かった!流石に死なれちゃ夢見が悪い!」

ギルド内がざわめく中、私は静かに受付へと歩み寄った。

「お姉さん、私これを受けますわ」

受付嬢は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに落ち着きを取り戻した。

「……かしこまりました。ですが、Cランクの依頼は相応の危険を伴います。無理はなさらないようにしてくださいませ」

「もちろんですわ」

私は微笑んで答えた。

周囲の冒険者たちは、信じられないという顔で私を見送っていた。

──だが、私は知っている。

私の持つ《剣聖》のスキルがあれば、フォレスト・グリズリー程度の魔獣など、決して敵ではないことを。

「では、行ってまいりますわ。皆様」

私は依頼書を手に、ギルドを後にした。

---

「フォレスト・グリズリー。依頼書によるとこの森ですわね」

足を踏み入れた次の瞬間、森の静寂が私を包み込んだ。
森の空気はひんやりと冷たく、葉の隙間から差し込む朝日が木々を金色に染めていた。

「……さて、ここからが本番ですわね」

私は深く息を吸い込み、剣の柄にそっと手を添えた。

フォレスト・グリズリー──その名の通り、森林に生息する巨大な熊型の魔獣だ。
体長は成人男性の数倍にも及び、分厚い毛皮と筋肉で覆われた肉体は、並の剣では傷一つ付けられないとされる。

その上、驚異的な腕力と素早さを兼ね備え、一度狙われれば逃れるのは困難。
初心者の冒険者が相手にするには、あまりにも荷が重い存在だ。

私は依頼書の裏側を見た。

「……あら、あの受付のお姉さん。粋なことをしてくださいますわね」

依頼書の裏には直筆で『どうかご無理はなさらず』。と書いていた。

「ありがたいお言葉ですが、生憎私はフォレスト・グリズリー程度では負けませんわ」

私は地面に足を踏みしめ、周囲の気配を探る。

──風の音、木々のざわめき、枝を踏む小動物の足音。
すべてが鮮明に耳に届く。

これは《剣聖》の効果によるものだろう。
スキルが発動している間、私は周囲のすべてを捉えることができる。

「……あちらですわね」

耳を澄ますと、獣の唸り声が微かに響いた。

私は音の方向へと静かに歩を進める。

──やがて、視界に広がったのは倒木と荒れ果てた草地だった。

「……!」

そして、その中央に佇む影──

体長は三メートルを超え、分厚い毛皮はまるで鋼鉄の鎧のように光を反射している。
その両目は血のように赤く、鋭い爪はまるで刃物のように輝いていた。

──フォレスト・グリズリー。

その圧倒的な存在感に、一瞬だけ背筋が凍る。

だが、私は剣を握り直し、静かに前へと進んだ。

「……貴方が、この森を荒らしているお方ですわね?」

グリズリーの耳がピクリと動き、次の瞬間、唸り声と共にこちらを睨んだ。

「────ッ!」

その瞬間、地面が揺れた。

フォレスト・グリズリーが咆哮を上げ、地を蹴って一気に距離を詰めてきたのだ。

「速い……!」

体格に似合わぬ速度。
しかし──

「それでも、遅いですわね!」

スキル発動──《剣聖》

視界が鮮明になり、グリズリーの動きがまるでスローモーションのように見える。

私は最小限の動きでその巨体をかわし、即座に反撃に転じた。

「──はっ!」

手に持つ剣を横に振り、グリズリーの脇腹を斬る。

だが、分厚い毛皮が刃を弾き、火花が散った。

「……流石ですわね。Cランク相当なだけはありますわ」

私は距離を取り、次の一手を考える。

フォレスト・グリズリーが再び構え直す。
その目には、獲物を狙う獣の本能が宿っていた。

──だが、私に恐れはなかった。

「では、こちらも本気を出しますわ」

私は剣を構え、体に力を込める。

スキル発動──《武神》

全身の筋力と反射神経が限界を超えて高まり、身体が軽く感じられる。

「さあ、参りますわよ!」

私が地面を蹴った瞬間、衝撃波が周囲の草を吹き飛ばした。

一瞬でグリズリーの懐に入り込む。
巨体が振り下ろす爪を紙一重でかわし、その腕を一刀両断──

「──斬界・壱式!」

剣が風を切り裂き、グリズリーの前脚を斬り飛ばす。

「グォォォォォォォ!!」

絶叫が森に響く。

だが、私は動きを止めない。

「これで終わりですわああああっ!」

全身の力を剣に込め、一気に跳躍──

グリズリーの頭部目掛けて、剣を振り下ろした。

「──斬界・終式!!」

一閃。

刹那、グリズリーの巨体が無音のまま地面に沈んだ。

──静寂。

私の荒い息遣いだけが、森の中に響く。

「……ふぅこれで、依頼達成ですわね。これがCランクですのね。確かに、ギルドの中にいた誰よりもお強い方でしたわ」

剣を収め、森を見渡す。

今、確かに私は冒険者としての第一歩を踏み出したのだ。

その実感を噛み締める。ようやく冒険者として依頼を達成した。

「……さて、確かギルドの規定では討伐の証として、魔獣の一部を持ち帰る必要がありましたわね。……どの部分をお持ちすればいいので?」

迷った末、結局私はフォレスト・グリズリーを担ぎ上げギルドへと帰ることにした。
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