転生令嬢、淑女の嗜みよりも筋肉と剣を極めます 〜チートレベルアップで最強貴族令嬢になった件〜 [完]

水無月いい人(minazuki)

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第四章 「異界の森の住人」

第二十九話「王都の再会──銀髪の剣士と癒し手の邂逅」

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──城門前。

「……ここですわ」

リリアナはゆっくりと息を整え、目の前にそびえ立つ巨大な門を見上げた。

「……なるほど、ここにリリアナさんの大切な方がいるんですね」

アスフィの静かな声が耳に届く。
彼の視線もまた、目の前の城門へと向けられていた。

久しぶりに見る王都の城門は、何も変わらない佇まいだった。
だが、今この門の向こうに待っているのは、過去のわたしではなく──
大切な友の命を救うという"使命"を背負った、今の”私”だった。

(……そういえば、ここに初めて来た時は──)

ふと、昔の記憶が蘇る。……昔、と言ってもほんの一ヶ月ほど前の事だ。
まだ冒険者として生きる決意を固める前、貴族令嬢として過ごしていたあの頃。
城下町を見たくて外に出ようとしたわたくしを、慌てたミレーヌが引き止めたことがあった。

『お嬢様!ここから先は危険ですっ!お戻り下さい!』
『少し覗くだけですわ!ほんの少しだけ!ほんの先っぽだけ見るだけですからっ!』
『何を言っているのですか!いけませんっ!お嬢様!』

今思えば、無邪気に騒ぐわたしに振り回されて、ミレーヌも大変だったことだろう。
だけど、それでも彼女はいつもわたしを守ろうとしてくれた。
たった一人の、"令嬢"ではなく、"わたし自身"を支えてくれた存在。

(……だから、今度はわたしがあなたを助ける)

リリアナは胸の前で手を握り、決意を新たにした。
しかし──その時だった。

「……あれ?もう帰ってきたのですか?お早いお戻りですね、お嬢様」

城門がゆっくりと開き、その奥から軽い口調が響いた。
そこに立っていたのは──銀髪の青年、ユウ。

「……どうして貴方がここにいますの?」

思わず問いかける。
ユウは当たり前かのように微笑みながら、涼しい顔で答えた。

「貴女が不在の間、この街には何も起きないと言ったの僕ですから」

さらりと告げられた言葉に、一瞬、リリアナの思考が止まる。
それはまるで、当然のような物言いだった。

(……え?もしかして、ずっとこの街を守ってくれていたの……?)

いや、それどころか。
ユウの後ろには、無数の倒れた人間たちが転がっていた。
その誰もが意識を失い、ピクリとも動かない。

(え……これなに)

「……ところで、そちらは?」

ユウの視線が、リリアナの隣に立つアスフィへと向けられる。

「えっと、こちらの方は、アスフィさんですわ」

リリアナが紹介した瞬間、空気が僅かに張り詰めた。
風の流れが変わった──そんな気がした。

「……初めまして、アスフィです」

「初めまして、僕はユウです」

二人は静かに挨拶を交わす。
しかし、その間に何かが流れたのは、リリアナにも分かった。

──警戒。

(……似ている……いや、この二人何?雰囲気が変わった……?)

「……僕ら、どこかで会いましたか?」

ユウが淡々と問いかける。

「いいえ、初対面ですよ」

アスフィは微笑みを崩さず、穏やかに返した。

「そうですよね。……では僕の役割はここまでのようなので、これで失礼します」

ユウはすぐに踵を返し、歩き出す。
まるで、"もうここには用はない"と言わんばかりの軽やかさで。

「──少しお待ちをっ!!」

リリアナは慌てて声を上げる。

「はい?なんですか?」

「ここに倒れている方々は……まさか、貴方が?」

「ええ。お嬢様を狙う悪い奴を僕がとっちめておきました」

あまりにもさらりと言うので、逆にリリアナは言葉を失った。
それをよそに、ユウは淡々と続ける。

「これでもう、貴女を狙う者はいないでしょう。……ですが、一人だけ逃してしまいました。しかし、無事に戻って来られたという事は、遭遇せずに済んだのでしょうか?」

(逃した……?)

「その者の名と特徴を聞いても?」

「もちろん。逃した男の名は、”《影狼》ガルス・クロウリー”。暗殺を生業とし、卑怯な手を使う非道な者です」

「──っ!?」

リリアナの背筋が凍る。

(わたしは名前すら知らなかったっていうのに)

ユウはそんな彼女に構わず、続けた。

「実は連中の中でも特に厄介な者でして、その手に握る武器は、自らの命を対価に相手の力を奪うというものです」

「……っ!」

(あの武器そんな厄介なものだったの!?)

「実はもう遭遇しまして……」

「そうでしたか。無事で何よりです」

ユウはあっさりと言う。
だが、リリアナの脳裏には、"無事"とは程遠いあの戦いの記憶が蘇る。

(全然無事じゃなかったんだけど!!)

「リリアナさん、早く行きましょう」

突然、今まで黙っていたアスフィが口を開く。

「貴女の大切な方の元へ」

「あっ、そうでした!行きましょう!」

リリアナは我に返り、急ぎ足でギルドへ向かおうとする。
そんな彼女の背を見送りながら、アスフィも静かに歩き出した瞬間──

「──君、この世界の者かい?」

ユウの問いが、アスフィの背中に届いた。
その声にアスフィは足を止める。

「さぁ?世界は広いですから。この、とだけ言われても」

「……そうかい。すまない、引き留めてしまって」

「大丈夫です。ではこれで」

「──でもあえて一つだけ。

その一言に、アスフィは微かに眉を寄せた。

「……用が済んだら、そのつもりです」

そう言うと、彼はユウに背を向け、歩き出した。

「では。リリアナさんが、先程から"早く来い"と街中で大声をあげていますので」

彼は小さく微笑み、足を速めた。

「……はぁ。このまま何も起きなければいいけどね」

ユウは深くため息をつき、彼らの背中を見送った。

──そして、その言葉は実現することとなる。
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