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第十一章 ケンイチ 神々篇 《第三部》
第170話「二つ」
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話は最終段階とまで来ていた。アスフィ、彼をどうするかについての話し合いだ。
現在、この『アルファ宮殿』に居る者は、
・エルブレイド・スタイリッシュ
・エルザ・スタイリッシュ
・レイラ・セレスティア
・レイモンド・セレスティア
・ルクス・セルロスフォカロ
・マキナ
・アイリス
・アリス(旧アイリス)
・ビャッコ・セリナ
・サリナ(バステト)
・オーディン
・ガーフィ・シーネット
・アリア・シーネット
そして、諸悪の根源たるアスフィ。
宮殿の中では今まさに、アリアに胸に抱かれ未だ眠るこの少年についての議論が行われていた。
議題は、彼とこの世界をどうするかについてだ。
「実際のところさ、私は改変してもしなくてもどっちでも良いんだよね。だって私は人間じゃない」
「あら、あなたがそれを言うのかしら~? あなたもまた私達人間と同じ作られた存在でしょ~? ……人間も神も同じこと。誰かの手によって作られた存在なのよ?」
「アリア、君とは随分と長い付き合いだから許してあげるけど、私が『死の神』だった頃ならもう百回は死んでるからね」
「あら~? でも殺さなかったのよね~? どうしてかしら~? 殺せなかった、でしょう?」
オーディンとアリアの話についていけない者多数。話が理解できないという訳ではない。簡単な話だ。この二人の『神気』に当てられて、入ることが出来ないでいるのだ。
この世界で『神』という立場は絶対的な地位と力を有する。この二人の会話に、ただの人間は入る資格すら許されない。
だが、ここに居る者達はそれぞれ神と縁のある者達ばかりであった。
神を妻とした者、神の妹を持った者、神だった者、現神である者、神とやりあった者……人間であろうと、この中にいる者達だけは例外だった。
「二人の話は分かりました。では多数決を取りましょう」
と、提案をしたのは龍神となった白髪赤目の少女ルクス・セルロスフォカロだ。
「多数決?」
「はい、アリアさんもオーディンもアスフィを助けたい気持ちは同じのハズです。むしろ、この中にアスフィを嫌っている者は居ません。ただ、お互いのやり方が少し食い違っているだけです。そうですよね?」
「ま、まぁね。君の言う通りだよ龍神ルクス」
「私ももちろんそうよ~?」
アリアとオーディンの会話の激しさは、ルクスの手により一旦の落ち着きを見せた。
「そもそも、何故世界の改変をする必要があるのか、についてもう一度話を纏めましょう。……確かこのまま改変しなければ、アスフィの中にある人格が暴走し、第二のエーシルを生むことになり、そうなるとアスフィも世界も元には戻せない。そうでしたよね」
「そう、その通りだよ。付け加えるなら人格が暴走する恐れがある、だけどね。幾多の世界の改変を見てきたアスフィ、その中に狂気に落ちた人格がいれば、そいつが出てきたらお終いだ。第二のエーシル誕生さ! あはははは!」
「……全然笑えませんが、そういうことです皆さん。世界の改変……『再構築』を行い、もう一度ゼロからアスフィを安定させる。これに賛成の人はオーディンの方へどうぞ」
オーディンはこっちこっちー! と手招きしている。
「でも、アスフィを安定って?」
「レイラ、私達はどれだけアスフィに負担を掛けていたか覚えていますか?」
「えっと……色々かけた……かも」
「大切な者を何度も失ったんです。……大切な者とは――」
「うむ、私達のことだな。レイラを死なせてしまった時は私も死を覚悟したものだ」
「……それについては私も反省しています。私達はアスフィに頼り過ぎたんです。結果、彼に新たな人格が生まれ、過去の彼らを現在のアスフィに思い出させてしまった。だから改変後は、アスフィにあまり負担を掛けない事が必要になります」
ルクスは説明した。
「……レイラとアスフィが盗賊に襲われていた時、おぞましいナニカを感じた。そのおかげで二人に会えたわけだが……そうか、アレはエーシルの片鱗だったという訳か」
エルザは一人納得していた。
「アスフィを安定させて何で世界が元に戻ることに繋がるの?」
「レイラちゃん! さっきパパが話したろ!?」
「あ、ごめんなさい。レイラに父親なんて居ないから聞いてなかった」
「酷くない!? レイラちゃんの為に一時間近く説明してあげたのに!」
セレスティア親子は相変わらずであった。
「大丈夫です、レイモンド。私が説明します。……レイラ、アスフィの事は好きですか?」
「好き」
「我も好きだ」
「う、うむ私もだぞ」
「お兄様はわたくしのお兄様です」
ルクスは思いがけない回答の数々にため息を付いた。
「……あの、レイラに聞いたのであって、あなた達には聞いてません。ちなみに私も好きです」
「ルクス、それがどうしたの?」
「簡単な話ですよ。アスフィが好きなら改変なんて不確かなモノじゃなく、アスフィを信じればいいのです。私は世界がどうなってもアスフィさえ居てくれれば何も要りません」
「あのねー龍神ちゃん? 不確かさで言えば、アスフィをこのままにしておく事の方がずっと不確かだよ?」
「オーディン、あなたはアスフィの味方であっても世界の味方じゃない。私達人間とは根本的に見方が違うんですよ」
「……へー言うようになったね。…………あの事、バラしてもいいのかい?」
オーディンはルクスに近づき耳元で囁いた。
「どうぞ。言いたければお好きに」
「…………あっそ」
オーディンはつまんないと言い残し、ルクスから離れた。
「さぁ皆さん! 改変を望むならオーディンの所へ! このまま改変をせずアスフィを信じるならアリアさんの元へどうぞ!
ルクスは両手を掲げ、大きな声でこの場にいる者に訴えかけた。
「…………え」
さっきまで改変に賛成していた者達。この短時間で意見が変わる訳が無い。そう思っていた。
だが、この短時間で白髪赤目の少女が起こした奇跡にオーディンは驚いた。
皆、迷うこと無くアリアの元へと集ったのだ。
「あ……ははは……この結果は予想出来なかったよ…………本当に良いの? 皆? 君たちの大好きなアスフィが怪物になるんだよ? それでいいの?」
一人となったオーディンの顔に、さっきまでの余裕は無い。
「オーディン、我らはフィーを信じる。諦めろ」
「マキ…………まだ残っているのかい?」
「それは我の記憶のことか? それともゼウスのことか?」
「…………いつからだい?」
「お前がゼウスと幻想世界とかいう、お前が作った世界に二人で向かった頃だ。何故我を二つに分けた、オーディン」
「……あは!」
オーディンは笑った。
現在、この『アルファ宮殿』に居る者は、
・エルブレイド・スタイリッシュ
・エルザ・スタイリッシュ
・レイラ・セレスティア
・レイモンド・セレスティア
・ルクス・セルロスフォカロ
・マキナ
・アイリス
・アリス(旧アイリス)
・ビャッコ・セリナ
・サリナ(バステト)
・オーディン
・ガーフィ・シーネット
・アリア・シーネット
そして、諸悪の根源たるアスフィ。
宮殿の中では今まさに、アリアに胸に抱かれ未だ眠るこの少年についての議論が行われていた。
議題は、彼とこの世界をどうするかについてだ。
「実際のところさ、私は改変してもしなくてもどっちでも良いんだよね。だって私は人間じゃない」
「あら、あなたがそれを言うのかしら~? あなたもまた私達人間と同じ作られた存在でしょ~? ……人間も神も同じこと。誰かの手によって作られた存在なのよ?」
「アリア、君とは随分と長い付き合いだから許してあげるけど、私が『死の神』だった頃ならもう百回は死んでるからね」
「あら~? でも殺さなかったのよね~? どうしてかしら~? 殺せなかった、でしょう?」
オーディンとアリアの話についていけない者多数。話が理解できないという訳ではない。簡単な話だ。この二人の『神気』に当てられて、入ることが出来ないでいるのだ。
この世界で『神』という立場は絶対的な地位と力を有する。この二人の会話に、ただの人間は入る資格すら許されない。
だが、ここに居る者達はそれぞれ神と縁のある者達ばかりであった。
神を妻とした者、神の妹を持った者、神だった者、現神である者、神とやりあった者……人間であろうと、この中にいる者達だけは例外だった。
「二人の話は分かりました。では多数決を取りましょう」
と、提案をしたのは龍神となった白髪赤目の少女ルクス・セルロスフォカロだ。
「多数決?」
「はい、アリアさんもオーディンもアスフィを助けたい気持ちは同じのハズです。むしろ、この中にアスフィを嫌っている者は居ません。ただ、お互いのやり方が少し食い違っているだけです。そうですよね?」
「ま、まぁね。君の言う通りだよ龍神ルクス」
「私ももちろんそうよ~?」
アリアとオーディンの会話の激しさは、ルクスの手により一旦の落ち着きを見せた。
「そもそも、何故世界の改変をする必要があるのか、についてもう一度話を纏めましょう。……確かこのまま改変しなければ、アスフィの中にある人格が暴走し、第二のエーシルを生むことになり、そうなるとアスフィも世界も元には戻せない。そうでしたよね」
「そう、その通りだよ。付け加えるなら人格が暴走する恐れがある、だけどね。幾多の世界の改変を見てきたアスフィ、その中に狂気に落ちた人格がいれば、そいつが出てきたらお終いだ。第二のエーシル誕生さ! あはははは!」
「……全然笑えませんが、そういうことです皆さん。世界の改変……『再構築』を行い、もう一度ゼロからアスフィを安定させる。これに賛成の人はオーディンの方へどうぞ」
オーディンはこっちこっちー! と手招きしている。
「でも、アスフィを安定って?」
「レイラ、私達はどれだけアスフィに負担を掛けていたか覚えていますか?」
「えっと……色々かけた……かも」
「大切な者を何度も失ったんです。……大切な者とは――」
「うむ、私達のことだな。レイラを死なせてしまった時は私も死を覚悟したものだ」
「……それについては私も反省しています。私達はアスフィに頼り過ぎたんです。結果、彼に新たな人格が生まれ、過去の彼らを現在のアスフィに思い出させてしまった。だから改変後は、アスフィにあまり負担を掛けない事が必要になります」
ルクスは説明した。
「……レイラとアスフィが盗賊に襲われていた時、おぞましいナニカを感じた。そのおかげで二人に会えたわけだが……そうか、アレはエーシルの片鱗だったという訳か」
エルザは一人納得していた。
「アスフィを安定させて何で世界が元に戻ることに繋がるの?」
「レイラちゃん! さっきパパが話したろ!?」
「あ、ごめんなさい。レイラに父親なんて居ないから聞いてなかった」
「酷くない!? レイラちゃんの為に一時間近く説明してあげたのに!」
セレスティア親子は相変わらずであった。
「大丈夫です、レイモンド。私が説明します。……レイラ、アスフィの事は好きですか?」
「好き」
「我も好きだ」
「う、うむ私もだぞ」
「お兄様はわたくしのお兄様です」
ルクスは思いがけない回答の数々にため息を付いた。
「……あの、レイラに聞いたのであって、あなた達には聞いてません。ちなみに私も好きです」
「ルクス、それがどうしたの?」
「簡単な話ですよ。アスフィが好きなら改変なんて不確かなモノじゃなく、アスフィを信じればいいのです。私は世界がどうなってもアスフィさえ居てくれれば何も要りません」
「あのねー龍神ちゃん? 不確かさで言えば、アスフィをこのままにしておく事の方がずっと不確かだよ?」
「オーディン、あなたはアスフィの味方であっても世界の味方じゃない。私達人間とは根本的に見方が違うんですよ」
「……へー言うようになったね。…………あの事、バラしてもいいのかい?」
オーディンはルクスに近づき耳元で囁いた。
「どうぞ。言いたければお好きに」
「…………あっそ」
オーディンはつまんないと言い残し、ルクスから離れた。
「さぁ皆さん! 改変を望むならオーディンの所へ! このまま改変をせずアスフィを信じるならアリアさんの元へどうぞ!
ルクスは両手を掲げ、大きな声でこの場にいる者に訴えかけた。
「…………え」
さっきまで改変に賛成していた者達。この短時間で意見が変わる訳が無い。そう思っていた。
だが、この短時間で白髪赤目の少女が起こした奇跡にオーディンは驚いた。
皆、迷うこと無くアリアの元へと集ったのだ。
「あ……ははは……この結果は予想出来なかったよ…………本当に良いの? 皆? 君たちの大好きなアスフィが怪物になるんだよ? それでいいの?」
一人となったオーディンの顔に、さっきまでの余裕は無い。
「オーディン、我らはフィーを信じる。諦めろ」
「マキ…………まだ残っているのかい?」
「それは我の記憶のことか? それともゼウスのことか?」
「…………いつからだい?」
「お前がゼウスと幻想世界とかいう、お前が作った世界に二人で向かった頃だ。何故我を二つに分けた、オーディン」
「……あは!」
オーディンは笑った。
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