怪奇ファイル~禍福倚伏編~

橘くらみ

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みなげかがみ

みなげかがみ⑦

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結局、巽は鏡を覗きこむのを断念した。
最初からそのつもりだったのかもしれないが、貴方はその判断を支持した。
その後、初老の男が席を外した時に貴方は巽に確認した。
「お茶ですか?ふつうに飲みましたけど」
と巽がいう。
貴方は、何か確信があったわけではないが基本的には他人から出された食事や飲み物には手をつけない性格だ。
ある種の幻覚作用のある植物には人間の感覚を強化するものもあり、光や音、匂いや触覚などに過敏になってしまうことがある。
普段は感じない強い光の刺激を受けた時に恐怖や不安にかられるかもしれない。
狂犬病に冒された患者は水の反射のチラつきにすら過剰な反応を示すという。
初老の男は財団の関係者だといっていたが、屋敷の主人とも面識があると話していた。
「何か新しいことは解りましたか?」
と巽に尋ねる。
「そうですね。今のところは特に……大丈夫そうですよね」
とチラリと貴方の方を向く。
「とても興味深かったです」
「それはなによりです。また、何か解りましたらぜひ、私にも教えて頂きたいです」
と初老の男がいう。
「ええ、その時は連絡致します」
そういって貴方たちは屋敷を出た。
もうすでに日が暮れかかっており、太陽の光が弱々しく屋敷の溜め池の水面に反射してキラキラと光っていた。
巽は貴方が持っていたサングラスをかけ、足早にタクシーへと向かっていく。
ドアが閉まる。
「鏡、見てないんですが。いつまでサングラスつけといた方がいいですか?」
貴方は特にそれには答えずに、少し深いため息をつく。
「屋敷の関係者は首を吊ったもの刃物を使ったものなどバラバラでしたが大学生、記者はいずれも発狂した後に崖から飛び降りたり、水辺で溺死したケースが散見されました」
たぶん、お茶の成分だけでは効果は薄いのだろう。
真壁ゆきひさは、幻覚作用のあるお茶を飲ませ、お香を焚きながら鏡を使って部下や世話係を尋問していたのだ。
妻の浮気を疑っていたゆきひさはあの鏡を使って、何度も隠していることや秘密にしていることを喋るように詰問していた。
屋敷中の監視カメラや盗聴機、そして相互監視と密告。
極度の心理状態にあった屋敷の関係者達は、自ら心情を吐露し、ついている嘘や後ろめたい事を話した後に苦悩し自死を選んだ。
あるいは、疑心暗鬼になって人間関係が崩壊した。
これが【みなげかがみ】の真相ではないだろうか。
とにかくこれ以上、深く詮索するのは危険だろう。




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