上 下
35 / 57
修学旅行の英雄譚 Ⅰ

File.XX Grand magician

しおりを挟む
不思議なやつだ。際立った強さも見られず、何かの才能に恵まれているわけでもなさそうなのに妙に底が見えない。
しかも内包する魔力量はほんの僅かしかないのにその流れには一切の乱れもない。あれを意識せずに為しているとしたらどれだけの努力をしたのか……いや、あの神を打ち倒したんだ、それくらい可能だろうな。
さて、あのときから探し続けて千五百年、データベースには存在してたものの一度もコンタクトが取れなかったが……ようやくきっかけを渡すことができた、これをどうするかはお前さん次第だぜ?
「その様子じゃお目当てに出会えたらしいな」
あぁ、でもま、あんなに弱いんじゃぁこれから苦労するだろうよ?
「ったく、急に出てくるなよ、ビックリするだろ?」
「フッ、あんたが驚くところなんか見たことないが、叶うなら見てみたいな」
「そうだな……お前が龍神でも倒せたらさすがに驚いてやるよ」
「それならあんたは絶対に驚いてくれるさ。なぜなら俺が目指しているのは世界最強、あのドラゴンも俺が超えるべき壁のひとつさ」
それは大したこった、ただ世界の均衡を保つ役割を担う一体を倒すとなるとそのあとの世界がどうなっちまうか心配なところもあるが……それを今心配していても仕方の無いことだ。俺としてはこいつがいずれ自分の居るべき場所に戻ってくれればそれでいい。
俺は立ち上がって、その青年に言う。
「それじゃぁ次の目的地に行くか」
どこかに消えようとしていた青年はその言葉で立ちどまり俺の方を向く。
「ようやくか、次は何処だ?俺を早く強者と戦わせろ」
あーあー、血の気の多いこった。一体誰が育てたんだか?
「次の目的地は……極東、つまり日本だ」
「分かった」
俺の真横に並びついてくる、大人びたクールな振る舞いをするがこういうところはまだガキだな。
でも───。
「悪いけどお前は居残りだ。俺の部下が厄介事起こしやがってな?その後処理を頼む」
明らかに不満そうな顔をするが気にせず続ける。
「もしかしたらお前のライバルに会えるかもしれないな」
けっ、嬉しそうな顔しやがってまぁ、今はお前の期待に応えられないかもしれんが、あいつはいずれ異例の成長を果たす。そうしたらお前はどうする?
青年の気配が消えたのを確認して日本への歩を進める。
「お前が待ちに待ったライバル……その目にあいつはどう写る?」
しおりを挟む

処理中です...