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阿鼻叫喚な大魔導戦
File.3 知らせは突然に!
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先日、百鬼があんなことになってしまったがあれから無事意識を取り戻して今俺に引きずられながら登校できている。
「悠斗先輩ー。自分で歩けるっスから離してくださいよー」
「お前そんなこと言ってるけど、家出てから何回逃げ出そうとしたんだよ!」
しかも余計なことにこいつ無駄に力強かったり、重かったりといらないところで疲れさせてくる。
さすが鬼の子と言うべきかどうか……。
「なんでそんなに学校に行きたくないんだ?なにか特別な理由でもあるのか?」
百鬼は俺におぶられるような体勢になってから方に顎を乗せて気落ちするような素振りを見せた。
「なんだ?そんなに深刻な問題でもあったのか?」
俺がそう言うとさらに表情が暗くなる。
「フツーに学校行くのめんどくさいのと、同じ学年に個人的に受けつけられない人がいるんで……ぶっちゃけそんだけッス」
ヒュンッ!ドスン!
俺は反射的に百鬼を背負い投げの格好で地面に叩きつけていた。
「思ったよりしょーもなかったわ!ただの引きこもりのニートじゃねぇか!そんなんならちゃんと学校行けよ!?」
「うわぁーん!悠斗先輩がイジメてきたー!」
うるさいうるさい!こんな朝早くから叫ぶなよ。百鬼の口を塞ぎ、通学路から外れるために抱えて走る。周りの目が痛すぎる……。
百鬼をなだめて解放し、落ち着かせてから再度学校に向かう。
「もう嫌ッス…家に帰るッス!」
校門が見えてきたところで百鬼がまたグズりだしてしまう。
「ちょっ……待てって!ここまで来て帰ろうとすんなよ!」
校門を背に向けて走り出そうとするこいつの手を掴んで何度目かの阻止をする。だが、百鬼も何回かの攻防の末に学習し(こんなもん学習すんな)、遂に俺の手から逃れてしまった。もうほっといてやろうか?……そう感じながらも一応リーナ先輩に頼まれた身としてこいつの面倒を見ようとまた追いかける。
通学路を再度外れて商店街を裏地まで探し回り、住宅街へ向かい声を上げて百鬼を探す。それでも全く見つかる様子が無かった。疲れたので近くの公園に入って休憩しようとした時、奥のベンチで百鬼が知らない俺と同年代くらいの青年と一緒に座っていた。
「ったく、何やってんだよあいつ」
うんざりしながらも見てみると不思議で、学校に行きたくないだの俺といても弱音吐くかグズることしかしなかったあいつが多分初対面であろう相手とあんなに親しげに話している。青年も優しい顔で百鬼の話を小さく頷きながら聞いていた。
そんな二人の間を邪魔して声をかける。
「すみません。そいつ、俺の後輩なんですけど……」
俺のことに気づいた青年は立ち上がって手を差し出してくる。
「あぁ、君が環十君が話していた際神悠斗君だね。こちらこそ彼を勝手に連れてしまって申し訳ないね。ここら辺を半分泣きながら歩いていたから話し相手をしていたんだ」
そういうことだったのか。なんかこっちが逆に申し訳ないな。
「いやいや、全然君が気にするような事じゃないし、俺の方こそ久しぶりに明るい人と話せて楽しかったさ。それに……いいこともあったしね」
「そういうことならよかったです」
俺がそう言うと男性は横にいる百鬼の背中に手を置き、そのままグッと押す。
「ほら、十環君。言いたいことがあるのはこの人でいいのかい?さっき言ったことを言ってごらん?」
百鬼はもじもじしながらも俺に近づき頭を下げた。
「先輩!ごごごご、ご迷惑をおかけしてすみませんッス!先輩が僕のためにしてくれたって分かってたんスけどどうしても心の準備ができなかったッス!」
ものすごい大声と早口で謝ってきたのを見て、なんかもうこいつに対して怒る気がなくなってしまった。謝ってくるやつに怒るってのもおかしな話だ。
「あー、もういいって。俺も無理に連れ出したりして悪かったよ」
頭を掻きながらそういうと百鬼が横にいる青年の顔を嬉しそうに見る。そんな百鬼の頭を優しく撫でながら、
「だから言っただろう?ちゃんと言葉にして表せば誰にだって伝わるんだよ」
「はい!ありがとうございます!」
青年は百鬼が元気なったのを確認し軽く微笑んだ後、ベンチから立ち上がり公園から出て行こうとするが、途中で立ち止まり俺の方を向いて名乗った。
「悠斗くんの名前だけ知っておいて俺の名前を名乗らないのはおかしいな」
それを見て俺は驚愕した……。だってそれは!あいつがついに俺の目の前に現れやがったからだ。
『まさかこんなところで再会するなんてな。相棒、出会っちまうまでがだいぶ早かったな』
アジ・ダハーカの声が震えている。それもそのはず、それだけの相手がまさかこんなところにいるなんて誰が思うだろうか!
腕には黒いドラゴンが力強く描かれている。その姿は敵を打ち倒すのではなく全てを滅ぼす……。真にドラゴンとしてあるべき威厳を放ち、そして感じられる……俺ではなく俺の中に向けられる敵意は尋常じゃない。
「感じればさすがに俺が誰だか分かるか」
俺の中に宿っているやつと同じ名を与えられた「禁龍」
「クロウ・クルワッハ……!」
俺がそう漏らすと、青年は意外そうで嬉しそうな顔をする。
「なんだ、知っているのか。それなら好都合だな」
そして改めて名乗る。
「俺はラヴィー・ヤーウェ。この時代の闘龍威であり、世界最強になる男だ」
その瞬間、ラヴィーの体全体から異常なまでのオーラが放たれる!
「悠斗君!」
その瞬間に、俺の目の前に輝くゲートが開き、ローランが俺を守るような姿勢で構える。
あまりにも強すぎるオーラ……つい気圧されそうになってしまうが踏ん張る。俺に宿ってるやつと同等の力を持っているというのに明らかに俺の数倍……いや、数十倍の濃度のオーラを持っている!
「なんでこの街に来た!?」
ローランの背中の後ろで放たれる圧力に耐えながら叫んでそう聞くと、再度フっと笑みを浮かべて答えだ。
「この街を中心に……いや、お前を中心にあらゆる事象が起こる。俺もその渦に加わりに来たにすぎない。俺は強くなりたい、この世界の誰よりも強く。ただそれだけだ」
そう言うとラヴィーはゆっくりとその場から立ち去っていった。
このまま戦いが始まるのかと緊張して身構えていた俺はそれが解けてその場にペシャンと膝を着いた。
び、びっくりした……こんなことってありかよ…。まだ心臓バクバクいってるし。
『ついに出会ってしまったな。しかし、俺が想定していたよりも遥かに早い。あのラヴィーとかいう奴は既に龍気を身にまとっている』
アジ・ダハーカが俺の頭に直接ではなく、百鬼にも聞こえるような声を出して話してくる。
「あいつが、お前が前に話してた俺のライバルってやつか。これからあんなのを相手しなきゃいけないのか俺は?」
ローランが俺に手を差し伸べる。
「とにかく、一度学校に行って姉さんに報告しよう。彼のこと君一人はともかく、僕らだけで解決できるようなことじゃないよ」
「そうだな。とりあえず学校に行かねぇとって…おい!」
何となく公園の時計を確認すると、既に一時間目が始まってしまっていた。今から行っても遅刻になっちまうけども……まぁ今日はしょうがねえかな?
「まぁまぁ、今回は仕方ないって。百鬼君もこんな風になっちゃってるし僕がゲート開くからこのまま保健室に向かおう」
そういえばずっと百鬼が何も言ってないことに気づき、あいつがたって今場所を見ると完全に気絶している。やれやれと首を振りながらもちっちゃい鬼を抱えてローランの力で保健室に向かった。
◇◆◇
「はい、はい。ありがとうございます。いやいや、自分も仕事が見つかって何よりですよ。では来週からよろしくお願いします」
はー……やっぱりしんどいわ。今の人間界ってのはこうも頭下げないといかんのかねぇ?実力が全部じゃないってのが気に食わねぇが…これもある種の「社会勉強」だと思って我慢我慢っと。
ガチャ───。
玄関の扉が開いた。
「おかえり、どうだったよ未来のライバルさんは?」
「なぜ知っている?何も言わずに出ていったはずだが?」
「そりゃわかるさ、あんだけどデカいオーラをバチバチに出すってことはそういうことしか考えられんだろ」
にしても、だーいぶ嬉しそうにしてんな。自分のライバルはお前の満足いくものだったのかい?
そいつが色々話したそうにしていたので部屋に入り二人でソファに腰をかける。
「聞いてくれ、俺のライバルは面白いやつだった。今は弱い、俺に比べたら遥かに弱い……だがそれだけじゃなかった。あんな人間がいるのかと驚いてしまったよ。それが───」
おーおー、こいつがこんな饒舌になるなんてな、こりゃ珍しいこともある。
俺はこいつの話が収まるまでコーヒーを飲みながら聞いてやる。
「悠斗先輩ー。自分で歩けるっスから離してくださいよー」
「お前そんなこと言ってるけど、家出てから何回逃げ出そうとしたんだよ!」
しかも余計なことにこいつ無駄に力強かったり、重かったりといらないところで疲れさせてくる。
さすが鬼の子と言うべきかどうか……。
「なんでそんなに学校に行きたくないんだ?なにか特別な理由でもあるのか?」
百鬼は俺におぶられるような体勢になってから方に顎を乗せて気落ちするような素振りを見せた。
「なんだ?そんなに深刻な問題でもあったのか?」
俺がそう言うとさらに表情が暗くなる。
「フツーに学校行くのめんどくさいのと、同じ学年に個人的に受けつけられない人がいるんで……ぶっちゃけそんだけッス」
ヒュンッ!ドスン!
俺は反射的に百鬼を背負い投げの格好で地面に叩きつけていた。
「思ったよりしょーもなかったわ!ただの引きこもりのニートじゃねぇか!そんなんならちゃんと学校行けよ!?」
「うわぁーん!悠斗先輩がイジメてきたー!」
うるさいうるさい!こんな朝早くから叫ぶなよ。百鬼の口を塞ぎ、通学路から外れるために抱えて走る。周りの目が痛すぎる……。
百鬼をなだめて解放し、落ち着かせてから再度学校に向かう。
「もう嫌ッス…家に帰るッス!」
校門が見えてきたところで百鬼がまたグズりだしてしまう。
「ちょっ……待てって!ここまで来て帰ろうとすんなよ!」
校門を背に向けて走り出そうとするこいつの手を掴んで何度目かの阻止をする。だが、百鬼も何回かの攻防の末に学習し(こんなもん学習すんな)、遂に俺の手から逃れてしまった。もうほっといてやろうか?……そう感じながらも一応リーナ先輩に頼まれた身としてこいつの面倒を見ようとまた追いかける。
通学路を再度外れて商店街を裏地まで探し回り、住宅街へ向かい声を上げて百鬼を探す。それでも全く見つかる様子が無かった。疲れたので近くの公園に入って休憩しようとした時、奥のベンチで百鬼が知らない俺と同年代くらいの青年と一緒に座っていた。
「ったく、何やってんだよあいつ」
うんざりしながらも見てみると不思議で、学校に行きたくないだの俺といても弱音吐くかグズることしかしなかったあいつが多分初対面であろう相手とあんなに親しげに話している。青年も優しい顔で百鬼の話を小さく頷きながら聞いていた。
そんな二人の間を邪魔して声をかける。
「すみません。そいつ、俺の後輩なんですけど……」
俺のことに気づいた青年は立ち上がって手を差し出してくる。
「あぁ、君が環十君が話していた際神悠斗君だね。こちらこそ彼を勝手に連れてしまって申し訳ないね。ここら辺を半分泣きながら歩いていたから話し相手をしていたんだ」
そういうことだったのか。なんかこっちが逆に申し訳ないな。
「いやいや、全然君が気にするような事じゃないし、俺の方こそ久しぶりに明るい人と話せて楽しかったさ。それに……いいこともあったしね」
「そういうことならよかったです」
俺がそう言うと男性は横にいる百鬼の背中に手を置き、そのままグッと押す。
「ほら、十環君。言いたいことがあるのはこの人でいいのかい?さっき言ったことを言ってごらん?」
百鬼はもじもじしながらも俺に近づき頭を下げた。
「先輩!ごごごご、ご迷惑をおかけしてすみませんッス!先輩が僕のためにしてくれたって分かってたんスけどどうしても心の準備ができなかったッス!」
ものすごい大声と早口で謝ってきたのを見て、なんかもうこいつに対して怒る気がなくなってしまった。謝ってくるやつに怒るってのもおかしな話だ。
「あー、もういいって。俺も無理に連れ出したりして悪かったよ」
頭を掻きながらそういうと百鬼が横にいる青年の顔を嬉しそうに見る。そんな百鬼の頭を優しく撫でながら、
「だから言っただろう?ちゃんと言葉にして表せば誰にだって伝わるんだよ」
「はい!ありがとうございます!」
青年は百鬼が元気なったのを確認し軽く微笑んだ後、ベンチから立ち上がり公園から出て行こうとするが、途中で立ち止まり俺の方を向いて名乗った。
「悠斗くんの名前だけ知っておいて俺の名前を名乗らないのはおかしいな」
それを見て俺は驚愕した……。だってそれは!あいつがついに俺の目の前に現れやがったからだ。
『まさかこんなところで再会するなんてな。相棒、出会っちまうまでがだいぶ早かったな』
アジ・ダハーカの声が震えている。それもそのはず、それだけの相手がまさかこんなところにいるなんて誰が思うだろうか!
腕には黒いドラゴンが力強く描かれている。その姿は敵を打ち倒すのではなく全てを滅ぼす……。真にドラゴンとしてあるべき威厳を放ち、そして感じられる……俺ではなく俺の中に向けられる敵意は尋常じゃない。
「感じればさすがに俺が誰だか分かるか」
俺の中に宿っているやつと同じ名を与えられた「禁龍」
「クロウ・クルワッハ……!」
俺がそう漏らすと、青年は意外そうで嬉しそうな顔をする。
「なんだ、知っているのか。それなら好都合だな」
そして改めて名乗る。
「俺はラヴィー・ヤーウェ。この時代の闘龍威であり、世界最強になる男だ」
その瞬間、ラヴィーの体全体から異常なまでのオーラが放たれる!
「悠斗君!」
その瞬間に、俺の目の前に輝くゲートが開き、ローランが俺を守るような姿勢で構える。
あまりにも強すぎるオーラ……つい気圧されそうになってしまうが踏ん張る。俺に宿ってるやつと同等の力を持っているというのに明らかに俺の数倍……いや、数十倍の濃度のオーラを持っている!
「なんでこの街に来た!?」
ローランの背中の後ろで放たれる圧力に耐えながら叫んでそう聞くと、再度フっと笑みを浮かべて答えだ。
「この街を中心に……いや、お前を中心にあらゆる事象が起こる。俺もその渦に加わりに来たにすぎない。俺は強くなりたい、この世界の誰よりも強く。ただそれだけだ」
そう言うとラヴィーはゆっくりとその場から立ち去っていった。
このまま戦いが始まるのかと緊張して身構えていた俺はそれが解けてその場にペシャンと膝を着いた。
び、びっくりした……こんなことってありかよ…。まだ心臓バクバクいってるし。
『ついに出会ってしまったな。しかし、俺が想定していたよりも遥かに早い。あのラヴィーとかいう奴は既に龍気を身にまとっている』
アジ・ダハーカが俺の頭に直接ではなく、百鬼にも聞こえるような声を出して話してくる。
「あいつが、お前が前に話してた俺のライバルってやつか。これからあんなのを相手しなきゃいけないのか俺は?」
ローランが俺に手を差し伸べる。
「とにかく、一度学校に行って姉さんに報告しよう。彼のこと君一人はともかく、僕らだけで解決できるようなことじゃないよ」
「そうだな。とりあえず学校に行かねぇとって…おい!」
何となく公園の時計を確認すると、既に一時間目が始まってしまっていた。今から行っても遅刻になっちまうけども……まぁ今日はしょうがねえかな?
「まぁまぁ、今回は仕方ないって。百鬼君もこんな風になっちゃってるし僕がゲート開くからこのまま保健室に向かおう」
そういえばずっと百鬼が何も言ってないことに気づき、あいつがたって今場所を見ると完全に気絶している。やれやれと首を振りながらもちっちゃい鬼を抱えてローランの力で保健室に向かった。
◇◆◇
「はい、はい。ありがとうございます。いやいや、自分も仕事が見つかって何よりですよ。では来週からよろしくお願いします」
はー……やっぱりしんどいわ。今の人間界ってのはこうも頭下げないといかんのかねぇ?実力が全部じゃないってのが気に食わねぇが…これもある種の「社会勉強」だと思って我慢我慢っと。
ガチャ───。
玄関の扉が開いた。
「おかえり、どうだったよ未来のライバルさんは?」
「なぜ知っている?何も言わずに出ていったはずだが?」
「そりゃわかるさ、あんだけどデカいオーラをバチバチに出すってことはそういうことしか考えられんだろ」
にしても、だーいぶ嬉しそうにしてんな。自分のライバルはお前の満足いくものだったのかい?
そいつが色々話したそうにしていたので部屋に入り二人でソファに腰をかける。
「聞いてくれ、俺のライバルは面白いやつだった。今は弱い、俺に比べたら遥かに弱い……だがそれだけじゃなかった。あんな人間がいるのかと驚いてしまったよ。それが───」
おーおー、こいつがこんな饒舌になるなんてな、こりゃ珍しいこともある。
俺はこいつの話が収まるまでコーヒーを飲みながら聞いてやる。
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