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第一章:世界最強の魔術師と隷属の首輪
009 誘拐団
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「…その、誘拐団についてですが…手がかりはいくつか掴めています…ただし、あまり希望を持てるような情報ではありません…」
受付嬢は、重い口調で語り始め、俯き、拳をきつく握りしめた。
「彼らは、若い女性、特に目鼻立ちの整った女性を狙って、この付近の街道を襲っています。ここ最近だけで、10人以上の女性が連れ去られています…」
受付嬢は、苦しげに顔を歪めた。
「…つい先日も、ある街道で誘拐の痕跡が発見されました、女性の衣服の一部や血痕、髪の毛なども多く残されていて、彼女は抵抗した際に怪我を負ったものと思われます…恐らく…女性たちは、どこかへ売り飛ばされているのでしょう…」
彼女は、それ以上言葉にすることができず、首を横に振った。
「また、彼らは、相当な手際の良さです。先日も、この街から派遣された追跡隊が、あと一歩のところまで誘拐団を追い詰めたのですが…彼らは非常に狡猾で、追跡を振り切って逃走してしまいました」
「これまでの目撃情報や追跡の結果から彼らのアジトは、この街の北東にある深い森の中…今はもう使われていない、古い砦跡や炭鉱跡等ではないかと推測されています。しかし、森は広大なため、正確な場所はまだ特定できていません…。また、誘拐団は複数の手練れの元冒険者に加え、多彩で強力な魔法を使う魔術師を擁しているそうです。そのせいもあって捜索も難航しているようです」
受付嬢は、悔しそうに顔を歪め、再び俯いた。
「冒険者の方たちも、昼夜を問わず捜索に当たってくださっているのですが…なかなか尻尾を掴めなくて…。この間にも、新たな被害者が増え続けているんです…!」
受付嬢は、堰を切ったように言葉を溢れさせた。
「…実は、先日誘拐された女性の中には、私の友人もいて…。彼女は、まだ16歳になったばかりで…。優しくて、いつも笑顔を絶やさない、本当に良い子だったんです…」
受付嬢の目には、涙が浮かんでいた。
「だから…お願いします…!ガイルさん、セレスティアさん、どうか、どうか、彼女たちを…誘拐団から救い出してください…!彼女たちには、一刻の猶予も無いんです!」
受付嬢は、深々と頭を下げ、懇願した。その瞳には、深い悲しみと、一縷の希望が宿っていた。
「…分かりました。その依頼、引き受けましょう」
ガイルは、少し考え込んだ後、そう答えた。
「ありがとうございます…!本当に、ありがとうございます…!」
受付嬢は、涙を拭いながら安堵の表情を浮かべた。
---
「…しかし、どうやって、誘拐団を誘き出すか…」
「…それなら、良い方法がありますわ」
セレスティアが、そう言って、不敵な笑みを浮かべた。
「わたくしが、囮になります」
「な…!?お前が…!?」
「ええ。誘拐団は、若い女性を狙っているのでしょう?ならば、わたくしが、その標的になればいいのです」
「だ、だけど…!」
「心配いりませんわ、ご主人様。わたくしを、誰だと思っているのです?」
セレスティアは、そう言って、自信満々に、胸を張った。
「…でも、危険すぎる…」
「…ふふ、本当に心配してくださるのですね、ご主人様は」
セレスティアは、少し嬉しそうに、そう言った。
「…それに、これは、ご主人様の腕の見せ所でもありますわ」
「…どういうことだ?」
「わたくしが、誘拐団に捕まった後、ご主人様が、颯爽と現れ、わたくしを救出するのです」
「…!」
「そうすれば、ご主人様の、英雄としての名声は、さらに高まりますわ」
「…確かに、そうかもしれないが…」
「…それに、わたくしも、たまには、あなたに守られてみたい…」
セレスティアは、そう言って、恥じらうように、俯いた。その表情は、いつもの自信に満ちた彼女とは、どこか違って見えた。
「…分かった。その作戦でいこう」
ガイルは、セレスティアの言葉に、覚悟を決めた。
「ふふ、それでこそ、わたくしのご主人様ですわ」
こうして、二人は、セレスティアを囮にした、危険な作戦を決行することとなった。
その夜、セレスティアは、誘拐団が出没したという噂の街道を、一人で歩いていた。
「…本当に、来るのかしら…」
セレスティアは、周囲を警戒しながらも、それを周囲に気取らせないよう、ゆっくりと歩を進めた。
「…ご主人様も、ちゃんと見ていてくださっているかしら…」
遠く離れた物陰から、ガイルが、その様子をじっと見守っている。彼は、愛用の長弓を手に、いつでも援護できるよう、身構えていた。
「…それにしても、この格好…」
セレスティアは、自分の服装を見下ろし、小さくため息をついた。
「…目立たないように、地味な服装で、とは言われたけれど…これでは、まるで、本当にそこらの村娘ですわ…」
普段、華やかな衣装を身に纏っている彼女にとって、地味な村娘の格好は、どこか落ち着かないものだった。彼女は取り外すことのできない首輪と隠し持った杖を隠すために、ゆったりとした外套を羽織っている。しかし、その装いでも、彼女の豊満な胸は隠しようもなく、服の上からでもはっきりと分かるその迫力は、男たちの視線を否応なしに集めてしまうだろう。
「…まあ、これも、ご主人様のため…」
セレスティアは、そう自分に言い聞かせ、再び歩き出した。常に完璧な存在を目指す彼女は、その演技も完璧だった。
しばらく歩いていると、背後に、馬車の音が聞こえてきた。
「…来ましたわね…」
セレスティアは、表情を引き締め、音のする方へと、意識を集中させた。
一台の薄汚れた幌付きの馬車が、ゆっくりと近づいてくる。御者台には、薄汚い身なりの男が二人。どちらも、鋭い目つきで、周囲を警戒している。
馬車は、セレスティアの横を通り過ぎようとした、その時、急停止した。
「お嬢さん、こんな夜更けに、一人でどうしたんだい?」
御者台から、嗄れた男の声が、話しかけてきた。
「…別に、用はありません…」
セレスティアは、警戒心を露わにしながら、そう言った。
「そう言わずに、俺たちと、少し、遊んでいかないか?」
男たちは、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべながら、馬車から降りてきた。
「…結構です…」
セレスティアは、冷たく言い放ち、男たちから距離を取ろうとした。
「まあまあ、そう固いこと言わずにさぁ」
「そうだよ、俺たち、優しいぜ?」
男たちは、さらに距離を詰め、セレスティアを取り囲んだ。
「…しつこいですね…」
セレスティアは、ため息をつき、男たちを睨みつけた。その瞳には、軽蔑と、怒りの色が浮かんでいた。
しかし、男たちは、そんなセレスティアの視線にも怯むことなく、さらに距離を詰めてくる。
「おっと、気が強い女は嫌いじゃないぜ…」
一人の男が、そう言いながら、セレスティアの肩に手を伸ばそうとした。
セレスティアは、男の手を、払いのけようとした。しかし、その瞬間、彼女の体に、異変が起きた。
「…!?」
男が伸ばした手、その指に嵌められた指輪の先に、小さな針が仕込まれていたのだ。男は、セレスティアの肩に触れるふりをして、指輪の先に取り付けた魔封じの針を、彼女の腕に突き刺した。
「…な、に…!?」
「へへ、驚いたか?お嬢ちゃん」
「お前が、『世界最強の魔術師』、セレスティアだってことは、お見通しだぜ、そんなもんで変装したつもりだったか?」
「この魔封じの針で、もうお前の魔法は使えねえ」
実は、男たちは、最初から、セレスティアの正体に気づいていた。彼女の知名度の高さが、仇となったのだ。しかし、彼らは、そのことを、おくびにも出さず、わざと気づかないふりをして、彼女に近づいた。そして、この機を伺っていたのだ。
針は深く食い込み彼女の身体に根を張った。簡単に除去することができない代物であることは明らかだった。
「…うぐっ…!」
セレスティアは、激痛に顔を歪めながら、男たちを睨みつけた。
「…ご主人様…」
彼女は、掠れた声で、そう呟いた。その声は、助けを求めるような、縋るような、そんな響きを帯びていた。
「…さあ、大人しく、俺たちと一緒に来てもらうぜ…」
男たちは、そう言いながら、セレスティアの腕を掴み、馬車の中へと、引きずり込もうとした。
「…待て…!」
その時、暗闇の中から、声が響いた。
セレスティアの瞳に、希望の光が灯った。
「…お前は…!?」
男たちは、突然の出来事に、驚愕の表情を浮かべた。
「…その女から、離れろ…」
暗闇の中から、ゆっくりと、一人の男が現れた。その手には、長弓が握られている。
「…ご主人様…!」
セレスティアは叫んだ。
「…今助ける、セレスティア…」
ガイルは、静かに、しかし、力強く、そう言った。その瞳には、誘拐団に対する、激しい怒りが宿っていた。
「チッ…ここは、一旦退くぞ…!」
男たちは、ガイルの存在に気づき、慌ててセレスティアを馬車の中に連れ去ろうとする。
「…待て…!」
ガイルは、男たちを追いかけようとした。しかし、その瞬間、馬車の幌の中から、もう一人の男が身を乗り出してきた。男は、薄汚いローブを纏った、痩せぎすの男だった。その手には、不気味な光を放つ、杖が握られている。
「…ご主人様、気をつけて…この男、魔術師です…!」
セレスティアが、叫んだ。
男は、笑みを浮かべながら杖を掲げ、呪文を唱え始めた。
「…まずい…!」
ガイルは、長弓を構え、男に狙いを定めた。しかし、男の方が、一瞬早かった。
「…『爆ぜろ』…!」
男が、そう呟いた瞬間、杖の先端から、巨大な火球が放たれた。火球は、一直線にガイルへと向かい、彼の目の前で、激しく爆発した。
「…ぐああああああ!」
ガイルは、爆発の衝撃で、吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「…ご主人様…!」
セレスティアは、必死に叫んだ。しかし、その声は、男たちには届かない。
「…じゃあな、『ゴシュジンサマ』!」
男は、嘲笑いながら、そう言い残し幌の中に戻る。馬車は、セレスティアを乗せたまま、猛スピードで走り去っていく。
「…待て…!」
ガイルは、必死に立ち上がろうとした。しかし、爆発で負った衝撃で、思うように体が動かない。
「…くそ…!」
ガイルは、悔しさに、拳を地面に叩きつけた。
「…セレスティア…!」
彼の目には、誘拐団の馬車が、遠く、闇の中へと消えていくのが、映っていた。
受付嬢は、重い口調で語り始め、俯き、拳をきつく握りしめた。
「彼らは、若い女性、特に目鼻立ちの整った女性を狙って、この付近の街道を襲っています。ここ最近だけで、10人以上の女性が連れ去られています…」
受付嬢は、苦しげに顔を歪めた。
「…つい先日も、ある街道で誘拐の痕跡が発見されました、女性の衣服の一部や血痕、髪の毛なども多く残されていて、彼女は抵抗した際に怪我を負ったものと思われます…恐らく…女性たちは、どこかへ売り飛ばされているのでしょう…」
彼女は、それ以上言葉にすることができず、首を横に振った。
「また、彼らは、相当な手際の良さです。先日も、この街から派遣された追跡隊が、あと一歩のところまで誘拐団を追い詰めたのですが…彼らは非常に狡猾で、追跡を振り切って逃走してしまいました」
「これまでの目撃情報や追跡の結果から彼らのアジトは、この街の北東にある深い森の中…今はもう使われていない、古い砦跡や炭鉱跡等ではないかと推測されています。しかし、森は広大なため、正確な場所はまだ特定できていません…。また、誘拐団は複数の手練れの元冒険者に加え、多彩で強力な魔法を使う魔術師を擁しているそうです。そのせいもあって捜索も難航しているようです」
受付嬢は、悔しそうに顔を歪め、再び俯いた。
「冒険者の方たちも、昼夜を問わず捜索に当たってくださっているのですが…なかなか尻尾を掴めなくて…。この間にも、新たな被害者が増え続けているんです…!」
受付嬢は、堰を切ったように言葉を溢れさせた。
「…実は、先日誘拐された女性の中には、私の友人もいて…。彼女は、まだ16歳になったばかりで…。優しくて、いつも笑顔を絶やさない、本当に良い子だったんです…」
受付嬢の目には、涙が浮かんでいた。
「だから…お願いします…!ガイルさん、セレスティアさん、どうか、どうか、彼女たちを…誘拐団から救い出してください…!彼女たちには、一刻の猶予も無いんです!」
受付嬢は、深々と頭を下げ、懇願した。その瞳には、深い悲しみと、一縷の希望が宿っていた。
「…分かりました。その依頼、引き受けましょう」
ガイルは、少し考え込んだ後、そう答えた。
「ありがとうございます…!本当に、ありがとうございます…!」
受付嬢は、涙を拭いながら安堵の表情を浮かべた。
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「…しかし、どうやって、誘拐団を誘き出すか…」
「…それなら、良い方法がありますわ」
セレスティアが、そう言って、不敵な笑みを浮かべた。
「わたくしが、囮になります」
「な…!?お前が…!?」
「ええ。誘拐団は、若い女性を狙っているのでしょう?ならば、わたくしが、その標的になればいいのです」
「だ、だけど…!」
「心配いりませんわ、ご主人様。わたくしを、誰だと思っているのです?」
セレスティアは、そう言って、自信満々に、胸を張った。
「…でも、危険すぎる…」
「…ふふ、本当に心配してくださるのですね、ご主人様は」
セレスティアは、少し嬉しそうに、そう言った。
「…それに、これは、ご主人様の腕の見せ所でもありますわ」
「…どういうことだ?」
「わたくしが、誘拐団に捕まった後、ご主人様が、颯爽と現れ、わたくしを救出するのです」
「…!」
「そうすれば、ご主人様の、英雄としての名声は、さらに高まりますわ」
「…確かに、そうかもしれないが…」
「…それに、わたくしも、たまには、あなたに守られてみたい…」
セレスティアは、そう言って、恥じらうように、俯いた。その表情は、いつもの自信に満ちた彼女とは、どこか違って見えた。
「…分かった。その作戦でいこう」
ガイルは、セレスティアの言葉に、覚悟を決めた。
「ふふ、それでこそ、わたくしのご主人様ですわ」
こうして、二人は、セレスティアを囮にした、危険な作戦を決行することとなった。
その夜、セレスティアは、誘拐団が出没したという噂の街道を、一人で歩いていた。
「…本当に、来るのかしら…」
セレスティアは、周囲を警戒しながらも、それを周囲に気取らせないよう、ゆっくりと歩を進めた。
「…ご主人様も、ちゃんと見ていてくださっているかしら…」
遠く離れた物陰から、ガイルが、その様子をじっと見守っている。彼は、愛用の長弓を手に、いつでも援護できるよう、身構えていた。
「…それにしても、この格好…」
セレスティアは、自分の服装を見下ろし、小さくため息をついた。
「…目立たないように、地味な服装で、とは言われたけれど…これでは、まるで、本当にそこらの村娘ですわ…」
普段、華やかな衣装を身に纏っている彼女にとって、地味な村娘の格好は、どこか落ち着かないものだった。彼女は取り外すことのできない首輪と隠し持った杖を隠すために、ゆったりとした外套を羽織っている。しかし、その装いでも、彼女の豊満な胸は隠しようもなく、服の上からでもはっきりと分かるその迫力は、男たちの視線を否応なしに集めてしまうだろう。
「…まあ、これも、ご主人様のため…」
セレスティアは、そう自分に言い聞かせ、再び歩き出した。常に完璧な存在を目指す彼女は、その演技も完璧だった。
しばらく歩いていると、背後に、馬車の音が聞こえてきた。
「…来ましたわね…」
セレスティアは、表情を引き締め、音のする方へと、意識を集中させた。
一台の薄汚れた幌付きの馬車が、ゆっくりと近づいてくる。御者台には、薄汚い身なりの男が二人。どちらも、鋭い目つきで、周囲を警戒している。
馬車は、セレスティアの横を通り過ぎようとした、その時、急停止した。
「お嬢さん、こんな夜更けに、一人でどうしたんだい?」
御者台から、嗄れた男の声が、話しかけてきた。
「…別に、用はありません…」
セレスティアは、警戒心を露わにしながら、そう言った。
「そう言わずに、俺たちと、少し、遊んでいかないか?」
男たちは、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべながら、馬車から降りてきた。
「…結構です…」
セレスティアは、冷たく言い放ち、男たちから距離を取ろうとした。
「まあまあ、そう固いこと言わずにさぁ」
「そうだよ、俺たち、優しいぜ?」
男たちは、さらに距離を詰め、セレスティアを取り囲んだ。
「…しつこいですね…」
セレスティアは、ため息をつき、男たちを睨みつけた。その瞳には、軽蔑と、怒りの色が浮かんでいた。
しかし、男たちは、そんなセレスティアの視線にも怯むことなく、さらに距離を詰めてくる。
「おっと、気が強い女は嫌いじゃないぜ…」
一人の男が、そう言いながら、セレスティアの肩に手を伸ばそうとした。
セレスティアは、男の手を、払いのけようとした。しかし、その瞬間、彼女の体に、異変が起きた。
「…!?」
男が伸ばした手、その指に嵌められた指輪の先に、小さな針が仕込まれていたのだ。男は、セレスティアの肩に触れるふりをして、指輪の先に取り付けた魔封じの針を、彼女の腕に突き刺した。
「…な、に…!?」
「へへ、驚いたか?お嬢ちゃん」
「お前が、『世界最強の魔術師』、セレスティアだってことは、お見通しだぜ、そんなもんで変装したつもりだったか?」
「この魔封じの針で、もうお前の魔法は使えねえ」
実は、男たちは、最初から、セレスティアの正体に気づいていた。彼女の知名度の高さが、仇となったのだ。しかし、彼らは、そのことを、おくびにも出さず、わざと気づかないふりをして、彼女に近づいた。そして、この機を伺っていたのだ。
針は深く食い込み彼女の身体に根を張った。簡単に除去することができない代物であることは明らかだった。
「…うぐっ…!」
セレスティアは、激痛に顔を歪めながら、男たちを睨みつけた。
「…ご主人様…」
彼女は、掠れた声で、そう呟いた。その声は、助けを求めるような、縋るような、そんな響きを帯びていた。
「…さあ、大人しく、俺たちと一緒に来てもらうぜ…」
男たちは、そう言いながら、セレスティアの腕を掴み、馬車の中へと、引きずり込もうとした。
「…待て…!」
その時、暗闇の中から、声が響いた。
セレスティアの瞳に、希望の光が灯った。
「…お前は…!?」
男たちは、突然の出来事に、驚愕の表情を浮かべた。
「…その女から、離れろ…」
暗闇の中から、ゆっくりと、一人の男が現れた。その手には、長弓が握られている。
「…ご主人様…!」
セレスティアは叫んだ。
「…今助ける、セレスティア…」
ガイルは、静かに、しかし、力強く、そう言った。その瞳には、誘拐団に対する、激しい怒りが宿っていた。
「チッ…ここは、一旦退くぞ…!」
男たちは、ガイルの存在に気づき、慌ててセレスティアを馬車の中に連れ去ろうとする。
「…待て…!」
ガイルは、男たちを追いかけようとした。しかし、その瞬間、馬車の幌の中から、もう一人の男が身を乗り出してきた。男は、薄汚いローブを纏った、痩せぎすの男だった。その手には、不気味な光を放つ、杖が握られている。
「…ご主人様、気をつけて…この男、魔術師です…!」
セレスティアが、叫んだ。
男は、笑みを浮かべながら杖を掲げ、呪文を唱え始めた。
「…まずい…!」
ガイルは、長弓を構え、男に狙いを定めた。しかし、男の方が、一瞬早かった。
「…『爆ぜろ』…!」
男が、そう呟いた瞬間、杖の先端から、巨大な火球が放たれた。火球は、一直線にガイルへと向かい、彼の目の前で、激しく爆発した。
「…ぐああああああ!」
ガイルは、爆発の衝撃で、吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「…ご主人様…!」
セレスティアは、必死に叫んだ。しかし、その声は、男たちには届かない。
「…じゃあな、『ゴシュジンサマ』!」
男は、嘲笑いながら、そう言い残し幌の中に戻る。馬車は、セレスティアを乗せたまま、猛スピードで走り去っていく。
「…待て…!」
ガイルは、必死に立ち上がろうとした。しかし、爆発で負った衝撃で、思うように体が動かない。
「…くそ…!」
ガイルは、悔しさに、拳を地面に叩きつけた。
「…セレスティア…!」
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