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第七話 御利益あやかは海を越えて来日する
「…ふぅ、今日も疲れたね…」
「………コク…」
部活終わりの夕暮れ時。ほのかちゃんと私は、二人でいつものように、部室で着替えをしていた。今日は、特にハードな練習メニューだったため、二人とも、いつも以上に疲労困憊だった。
「…ほのかちゃん、この後、何か予定ある…?」
「………」
「…もしかして、佐藤君とデート…?」
「………チガウ…」
「…だよね、失礼しました…」
最近のほのかちゃんは、佐藤君と良い感じだ。…まあ、本人たちは、まだ自覚していないみたいだけど、周りから見れば、完全に両想い。…早く、くっついちゃえばいいのに!
「…じゃあ、一緒にテレビでも見ない?…って、なにこれ…?」
私が、部室に置いてある小型テレビをつけると、画面には、テニスのニュース番組が映し出されていた。
『…続いてのニュースです。アメリカで活躍する天才テニス少女、御利益《みたから》あやか選手が、なんと、日本の高校に転入することが分かりました!』
「…え、御利益あやか…?」
聞き慣れない名前に、私は、思わず首を傾げた。
『御利益選手は、幼い頃から、その才能を注目され、アメリカの有名テニスアカデミーに特待生として入学。ジュニアの大会では、一度も負けたことがないという、まさに、無敗の天才少女です!』
「…えええ!?無敗!?ちょっと待って、情報量多くない!?」
画面には、御利益あやかの、これまでの戦績が映し出されている。…え、本当に、全部、優勝してる…!しかも、世界ジュニアランキングも、めっちゃ上位…!
『その圧倒的な実力から、"Lady Luck AYA"と呼ばれ、アメリカのテニス界で、一躍有名になった、御利益選手。…』
「…レディーラック…アヤ…?何それ、通り名?…っていうか、アメリカのテニス界って、そんな二つ名とか、つけちゃう感じなの…!?」
『そんな彼女が、この度、家庭の都合で、日本に帰国することになりました。そして、なんと、御利益選手は、プロには進まず、日本の高校テニスに挑戦することを決意したのです!』
「…えええ!?プロにならないの!?…っていうか、日本の高校テニスに挑戦って、どういうこと!?そんな、アメリカで無敗の天才少女が、日本の、しかも、高校のテニス部に、入るわけ…!?」
『御利益選手が転入するのは、なんと、全国優勝常連校、常勝学園高校です!』
「…常勝学園…って、あの、常勝学園!?…って、もう、名前からして、強そうすぎるでしょ…!」
画面には、常勝学園のテニスコートで、練習をする御利益あやかの姿が映し出されている。…すごい、オーラが違う…。
『常勝学園は、その名の通り、全国大会で何度も優勝している、超強豪校です。御利益選手の加入により、今年の常勝学園は、史上最強のチームになると、早くも、噂されています。』
「…史上最強って…もう、漫画の世界じゃん…。」
『御利益選手は、オールラウンダーで、特に、その必殺技である、「大願成就スマッシュ」、「恋愛成就ボレー」、「七転八起サーブ」は、縁起が良いだけでなく、その威力も凄まじいとのことです。』
「…ちょ、ちょっと待って!技の名前、いちいち、縁起良すぎでしょ!…大願成就スマッシュって、何!?スマッシュしたら、願いが叶うの!?…恋愛成就ボレーって、ボレー決めたら、恋が実るの!?…七転八起サーブって、七回転んで、八回起き上がってから、サーブ打つの!?…いやいやいや、それ、ただの反則でしょ!」
私は、思わず、テレビ画面に、全力でツッコミを入れてしまった。…だって、あまりにも、現実離れした設定なんだもん!
『また、御利益選手は、試合前には、必ず、日本の神社でお守りを購入し、試合中も身につけているそうです。』
「…え、そこは、普通に、ゲン担ぎするんだ!?…なんか、急に、親近感湧くんだけど…」
『「無敗」というプレッシャーを、逆に力に変えることができる、強靭なメンタルを持つ、御利益選手。彼女の加入は、日本の高校テニス界に、大きな旋風を巻き起こすことになるでしょう。』
「…いや、もう、既に、色んな意味で、大旋風、巻き起こしてるよ…」
私は、テレビ画面を見つめながら、呆然と呟いた。…すごい、本当に、すごい選手が、日本に来ちゃったんだ…。
「………」
隣にいたほのかちゃんは、何も言わずに、じっとテレビ画面を見つめている。その瞳には、いつもの静けさの中に、かすかな闘志が宿っているように見えた。
「…ほのかちゃん、この人…」
「………知ってる…」
「…え、知ってるの!?」
「………アメリカ…で…有名…」
「…そっか、ほのかちゃん、テニス、詳しかったもんね…」
「………」
ほのかちゃんは、何も言わなかったけど、その表情は、いつもより真剣だった。…もしかして、ほのかちゃん、この御利益あやかに、対抗心を燃やしてる…?
「…ねえ、ほのかちゃん。…この御利益あやかと、戦ってみたい…?」
「………」
ほのかちゃんは、すぐに答えなかった。でも、その代わりに、小さく、しかし力強く、頷いた。
「………コク…」
その「コク」は、今まで聞いた中で、一番、力強い「コク」だった。
…これは、とんでもないことになるかもしれない…。
私は、そんな予感を感じながら、再び、テレビ画面に視線を戻した。画面の中では、御利益あやかが、完璧なフォームで、ボールを打ち返している。その姿は、まさに、「天才」と呼ぶにふさわしいものだった。
「………コク…」
部活終わりの夕暮れ時。ほのかちゃんと私は、二人でいつものように、部室で着替えをしていた。今日は、特にハードな練習メニューだったため、二人とも、いつも以上に疲労困憊だった。
「…ほのかちゃん、この後、何か予定ある…?」
「………」
「…もしかして、佐藤君とデート…?」
「………チガウ…」
「…だよね、失礼しました…」
最近のほのかちゃんは、佐藤君と良い感じだ。…まあ、本人たちは、まだ自覚していないみたいだけど、周りから見れば、完全に両想い。…早く、くっついちゃえばいいのに!
「…じゃあ、一緒にテレビでも見ない?…って、なにこれ…?」
私が、部室に置いてある小型テレビをつけると、画面には、テニスのニュース番組が映し出されていた。
『…続いてのニュースです。アメリカで活躍する天才テニス少女、御利益《みたから》あやか選手が、なんと、日本の高校に転入することが分かりました!』
「…え、御利益あやか…?」
聞き慣れない名前に、私は、思わず首を傾げた。
『御利益選手は、幼い頃から、その才能を注目され、アメリカの有名テニスアカデミーに特待生として入学。ジュニアの大会では、一度も負けたことがないという、まさに、無敗の天才少女です!』
「…えええ!?無敗!?ちょっと待って、情報量多くない!?」
画面には、御利益あやかの、これまでの戦績が映し出されている。…え、本当に、全部、優勝してる…!しかも、世界ジュニアランキングも、めっちゃ上位…!
『その圧倒的な実力から、"Lady Luck AYA"と呼ばれ、アメリカのテニス界で、一躍有名になった、御利益選手。…』
「…レディーラック…アヤ…?何それ、通り名?…っていうか、アメリカのテニス界って、そんな二つ名とか、つけちゃう感じなの…!?」
『そんな彼女が、この度、家庭の都合で、日本に帰国することになりました。そして、なんと、御利益選手は、プロには進まず、日本の高校テニスに挑戦することを決意したのです!』
「…えええ!?プロにならないの!?…っていうか、日本の高校テニスに挑戦って、どういうこと!?そんな、アメリカで無敗の天才少女が、日本の、しかも、高校のテニス部に、入るわけ…!?」
『御利益選手が転入するのは、なんと、全国優勝常連校、常勝学園高校です!』
「…常勝学園…って、あの、常勝学園!?…って、もう、名前からして、強そうすぎるでしょ…!」
画面には、常勝学園のテニスコートで、練習をする御利益あやかの姿が映し出されている。…すごい、オーラが違う…。
『常勝学園は、その名の通り、全国大会で何度も優勝している、超強豪校です。御利益選手の加入により、今年の常勝学園は、史上最強のチームになると、早くも、噂されています。』
「…史上最強って…もう、漫画の世界じゃん…。」
『御利益選手は、オールラウンダーで、特に、その必殺技である、「大願成就スマッシュ」、「恋愛成就ボレー」、「七転八起サーブ」は、縁起が良いだけでなく、その威力も凄まじいとのことです。』
「…ちょ、ちょっと待って!技の名前、いちいち、縁起良すぎでしょ!…大願成就スマッシュって、何!?スマッシュしたら、願いが叶うの!?…恋愛成就ボレーって、ボレー決めたら、恋が実るの!?…七転八起サーブって、七回転んで、八回起き上がってから、サーブ打つの!?…いやいやいや、それ、ただの反則でしょ!」
私は、思わず、テレビ画面に、全力でツッコミを入れてしまった。…だって、あまりにも、現実離れした設定なんだもん!
『また、御利益選手は、試合前には、必ず、日本の神社でお守りを購入し、試合中も身につけているそうです。』
「…え、そこは、普通に、ゲン担ぎするんだ!?…なんか、急に、親近感湧くんだけど…」
『「無敗」というプレッシャーを、逆に力に変えることができる、強靭なメンタルを持つ、御利益選手。彼女の加入は、日本の高校テニス界に、大きな旋風を巻き起こすことになるでしょう。』
「…いや、もう、既に、色んな意味で、大旋風、巻き起こしてるよ…」
私は、テレビ画面を見つめながら、呆然と呟いた。…すごい、本当に、すごい選手が、日本に来ちゃったんだ…。
「………」
隣にいたほのかちゃんは、何も言わずに、じっとテレビ画面を見つめている。その瞳には、いつもの静けさの中に、かすかな闘志が宿っているように見えた。
「…ほのかちゃん、この人…」
「………知ってる…」
「…え、知ってるの!?」
「………アメリカ…で…有名…」
「…そっか、ほのかちゃん、テニス、詳しかったもんね…」
「………」
ほのかちゃんは、何も言わなかったけど、その表情は、いつもより真剣だった。…もしかして、ほのかちゃん、この御利益あやかに、対抗心を燃やしてる…?
「…ねえ、ほのかちゃん。…この御利益あやかと、戦ってみたい…?」
「………」
ほのかちゃんは、すぐに答えなかった。でも、その代わりに、小さく、しかし力強く、頷いた。
「………コク…」
その「コク」は、今まで聞いた中で、一番、力強い「コク」だった。
…これは、とんでもないことになるかもしれない…。
私は、そんな予感を感じながら、再び、テレビ画面に視線を戻した。画面の中では、御利益あやかが、完璧なフォームで、ボールを打ち返している。その姿は、まさに、「天才」と呼ぶにふさわしいものだった。
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