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第九話 双葉ほのかは無音の一打に魂を込める
最後の大会を迎え、ほのか率いる私たち山吹高校テニス部は、快進撃を続け、ついに全国大会団体戦、決勝の舞台へと駒を進めた。
決勝戦を翌日に控え、体育館では、選手たちが最終調整に励んでいた。いつもは静かなほのかも、どこか落ち着かない様子で、何度も素振りを繰り返している。
「…ほのかちゃん、大丈夫?」
「………コク…」
いつもの「コク」だけど、わずかに震えているように感じた。
「…緊張、してる?」
「………少し…」
ほのかが、珍しく、自分の気持ちを言葉にした。
「…そっか。でも、大丈夫。ほのかちゃんは、強いよ。それに、私たちもついてる。」
「………」
「…あ、そうだ。ほのかちゃん、あの劇、覚えてる?」
「………?」
「…文化祭の、『届け!希望のメロディー』。」
「………コク…」
「…あの時のほのかちゃん、すごかったよ。言葉がなくても、あんなに人の心を動かせるなんて…」
「………」
「…ほのかちゃんのテニスも、きっと、同じだよ。言葉がなくても、そのプレーで、みんなに勇気を与えられる。…だから、自信を持って。ほのかちゃんのテニスを、信じて。」
「………田中さん…」
ほのかは、私の目をじっと見つめた。その瞳には、迷いが消え、強い光が宿っていた。
「………ありがとう…」
そして、ついに、決勝戦当日。会場は、全国から集まった観客の熱気に包まれていた。
決勝戦の相手は、全国優勝の常連校、常勝学園。…名前からして強そう!そして、常勝学園のエースは、歩くパワースポット 御利益(みたから) あやか!名前からして縁起良すぎ!その上、多彩なショットと読みにくい試合運びで、数々の対戦相手を圧倒してきた、まさに「ご利益」の塊!さらに、あの全米を震撼させた無敗の天才少女!
私たち山吹高校のメンバーは、ほのかの鼓舞を受け、これまでにない粘り強さを見せていた。団体戦スコアは2勝2敗、ついに勝負は、キャプテン対決、シングルス1の、ほのかと御利益との最終戦にもつれ込んだ。
「…双葉、楽しんでこい。そして…お前なら、勝てる。」
五十嵐先生は、いつになく力強い言葉で、ほのかを送り出した。その目には、深い信頼と、期待が込められていた。
「………コク…」
ほのかは、先生の言葉に、力強く頷いた。その背中は、キャプテンとしての、風格さえ漂わせている。
コートに立ったほのかと御利益。二人の間には、張り詰めた空気が流れていた。
「…ついに、この時が来たね…」
私は、ベンチから、固唾を飲んで、試合の行方を見守っていた。
御利益は、その名の通り、多彩な技で、ほのかを翻弄する。「大願成就スマッシュ」、「恋愛成就ボレー」、そして「七転八起サーブ」…。縁起の良い名前の技が、次々と繰り出される。…っていうか、いちいち技の名前が縁起良すぎ!聞いてるこっちが恥ずかしくなるよ!…でも、その威力は、本物だ。ほのかは、序盤、防戦一方の展開を強いられていた。
「…ほのかちゃん…!」
第一セットは、御利益が、その圧倒的なパワーで、奪取した。
「…双葉、大丈夫だ。まだ、始まったばかりだぞ!」
五十嵐先生の声が、コートに響き渡る。
「………」
ほのかは、小さく頷くと、第二セットのコートに入った。
そして、第二セット。ほのかのプレーに、変化が現れ始めた。それまでよりも、さらに積極的に、前に出ていくようになったのだ。
そして、相手の強打にも、臆することなく、打ち返していく。そのプレーは、まるで、文化祭の劇で演じた、「言葉を失った歌姫」が、魂の歌を奏でるように、力強く、そして、美しかった。
「…ほのかちゃん、すごい…!」
私は、ほのかのプレーに、目が離せなかった。
ほのかは、持ち前の集中力と粘り強さ、そして洞察力で、御利益のショットに食らいついていく。一進一退の攻防が続く中、ほのかは徐々にポイントを重ね、ついに、第二セットを奪い返した。
そして、試合は、最終セット、デュースまでもつれ込む大接戦となった。観客たちは、固唾を飲んで試合の行方を見守っている。…私も、心臓が口から飛び出しそうなくらい、ドキドキしてた!
静寂が、会場を支配する。…まるで、時間が止まったかのようだ。
そして、運命のマッチポイント。御利益が、強烈なサーブを放つ。「七転八起サーブ」って…もう、なんでもありか!
(このサーブを取らなければ…負ける…!)
ほのかは、全神経を集中させ、ボールの軌道を見極める。…その姿は、まるで、獲物を狙う、一匹の獣のようだった。
そして…
「………!」
ほのかは、今まで誰にも見せたことのない、"無音ショット"を放った!ボールは、本当に音もなくコートを滑るように進み、御利益の足元に突き刺さった。
「………え?」
御利益は、何が起こったのか理解できず、呆然と立ち尽くしている。…そりゃそうだよね。私も、初めて見た時は、同じ反応したもん。
静寂を切り裂くように、審判のコールが響き渡った。「ポイント、山吹!ゲームセットマッチ!!」
「やったー!!」
私たち山吹高校のベンチから、歓喜の声が上がる。
「………」
ほのかは、静かに、しかし力強く、ラケットを掲げた。その顔には、今まで見たことのないような、達成感に満ちた笑顔が浮かんでいた。そして、その瞳には、涙が光っていた。
それは、無口な天才女子高生、双葉ほのかが、初めて見せた、心の底からの笑顔だった。そして、私たち山吹高校は、双葉ほのかの「無音ショット」、そして、全員の力で、見事、全国大会初優勝を飾ったのだ!
「…ほのかちゃん、おめでとう…!」
私は、コートに駆け寄り、ほのかと抱き合った。
「………田中さん…ありがとう…」
ほのかは、かすかに震える声で、そう言った。
「…みんなのおかげだよ…」
「………コク…」
ほのかは、小さく頷いた。その瞳には、チームメイトへの感謝の気持ちが、確かに宿っていた。
閉会式。表彰台の一番高い場所に立つ、ほのか。その手には、優勝旗が、しっかりと握られている。
「…ほのかちゃん、本当におめでとう…!」
「………コク…」
「…この優勝旗、めっちゃ重いね…」
「………少しだけ…」
「…ふふ、ほのかちゃんらしいね。」
「………」
「…ねえ、ほのかちゃん。…これからも、一緒に、テニスしようね。」
「………コク…」
ほのかは、力強く頷いた。その笑顔は、今まで見たどんな笑顔よりも、輝いていた。
この日、私たち山吹高校テニス部は、新たな歴史を刻んだ。それは、無言実行なキャプテン、双葉ほのかとともに掴んだ、最高の栄光だった。
決勝戦を翌日に控え、体育館では、選手たちが最終調整に励んでいた。いつもは静かなほのかも、どこか落ち着かない様子で、何度も素振りを繰り返している。
「…ほのかちゃん、大丈夫?」
「………コク…」
いつもの「コク」だけど、わずかに震えているように感じた。
「…緊張、してる?」
「………少し…」
ほのかが、珍しく、自分の気持ちを言葉にした。
「…そっか。でも、大丈夫。ほのかちゃんは、強いよ。それに、私たちもついてる。」
「………」
「…あ、そうだ。ほのかちゃん、あの劇、覚えてる?」
「………?」
「…文化祭の、『届け!希望のメロディー』。」
「………コク…」
「…あの時のほのかちゃん、すごかったよ。言葉がなくても、あんなに人の心を動かせるなんて…」
「………」
「…ほのかちゃんのテニスも、きっと、同じだよ。言葉がなくても、そのプレーで、みんなに勇気を与えられる。…だから、自信を持って。ほのかちゃんのテニスを、信じて。」
「………田中さん…」
ほのかは、私の目をじっと見つめた。その瞳には、迷いが消え、強い光が宿っていた。
「………ありがとう…」
そして、ついに、決勝戦当日。会場は、全国から集まった観客の熱気に包まれていた。
決勝戦の相手は、全国優勝の常連校、常勝学園。…名前からして強そう!そして、常勝学園のエースは、歩くパワースポット 御利益(みたから) あやか!名前からして縁起良すぎ!その上、多彩なショットと読みにくい試合運びで、数々の対戦相手を圧倒してきた、まさに「ご利益」の塊!さらに、あの全米を震撼させた無敗の天才少女!
私たち山吹高校のメンバーは、ほのかの鼓舞を受け、これまでにない粘り強さを見せていた。団体戦スコアは2勝2敗、ついに勝負は、キャプテン対決、シングルス1の、ほのかと御利益との最終戦にもつれ込んだ。
「…双葉、楽しんでこい。そして…お前なら、勝てる。」
五十嵐先生は、いつになく力強い言葉で、ほのかを送り出した。その目には、深い信頼と、期待が込められていた。
「………コク…」
ほのかは、先生の言葉に、力強く頷いた。その背中は、キャプテンとしての、風格さえ漂わせている。
コートに立ったほのかと御利益。二人の間には、張り詰めた空気が流れていた。
「…ついに、この時が来たね…」
私は、ベンチから、固唾を飲んで、試合の行方を見守っていた。
御利益は、その名の通り、多彩な技で、ほのかを翻弄する。「大願成就スマッシュ」、「恋愛成就ボレー」、そして「七転八起サーブ」…。縁起の良い名前の技が、次々と繰り出される。…っていうか、いちいち技の名前が縁起良すぎ!聞いてるこっちが恥ずかしくなるよ!…でも、その威力は、本物だ。ほのかは、序盤、防戦一方の展開を強いられていた。
「…ほのかちゃん…!」
第一セットは、御利益が、その圧倒的なパワーで、奪取した。
「…双葉、大丈夫だ。まだ、始まったばかりだぞ!」
五十嵐先生の声が、コートに響き渡る。
「………」
ほのかは、小さく頷くと、第二セットのコートに入った。
そして、第二セット。ほのかのプレーに、変化が現れ始めた。それまでよりも、さらに積極的に、前に出ていくようになったのだ。
そして、相手の強打にも、臆することなく、打ち返していく。そのプレーは、まるで、文化祭の劇で演じた、「言葉を失った歌姫」が、魂の歌を奏でるように、力強く、そして、美しかった。
「…ほのかちゃん、すごい…!」
私は、ほのかのプレーに、目が離せなかった。
ほのかは、持ち前の集中力と粘り強さ、そして洞察力で、御利益のショットに食らいついていく。一進一退の攻防が続く中、ほのかは徐々にポイントを重ね、ついに、第二セットを奪い返した。
そして、試合は、最終セット、デュースまでもつれ込む大接戦となった。観客たちは、固唾を飲んで試合の行方を見守っている。…私も、心臓が口から飛び出しそうなくらい、ドキドキしてた!
静寂が、会場を支配する。…まるで、時間が止まったかのようだ。
そして、運命のマッチポイント。御利益が、強烈なサーブを放つ。「七転八起サーブ」って…もう、なんでもありか!
(このサーブを取らなければ…負ける…!)
ほのかは、全神経を集中させ、ボールの軌道を見極める。…その姿は、まるで、獲物を狙う、一匹の獣のようだった。
そして…
「………!」
ほのかは、今まで誰にも見せたことのない、"無音ショット"を放った!ボールは、本当に音もなくコートを滑るように進み、御利益の足元に突き刺さった。
「………え?」
御利益は、何が起こったのか理解できず、呆然と立ち尽くしている。…そりゃそうだよね。私も、初めて見た時は、同じ反応したもん。
静寂を切り裂くように、審判のコールが響き渡った。「ポイント、山吹!ゲームセットマッチ!!」
「やったー!!」
私たち山吹高校のベンチから、歓喜の声が上がる。
「………」
ほのかは、静かに、しかし力強く、ラケットを掲げた。その顔には、今まで見たことのないような、達成感に満ちた笑顔が浮かんでいた。そして、その瞳には、涙が光っていた。
それは、無口な天才女子高生、双葉ほのかが、初めて見せた、心の底からの笑顔だった。そして、私たち山吹高校は、双葉ほのかの「無音ショット」、そして、全員の力で、見事、全国大会初優勝を飾ったのだ!
「…ほのかちゃん、おめでとう…!」
私は、コートに駆け寄り、ほのかと抱き合った。
「………田中さん…ありがとう…」
ほのかは、かすかに震える声で、そう言った。
「…みんなのおかげだよ…」
「………コク…」
ほのかは、小さく頷いた。その瞳には、チームメイトへの感謝の気持ちが、確かに宿っていた。
閉会式。表彰台の一番高い場所に立つ、ほのか。その手には、優勝旗が、しっかりと握られている。
「…ほのかちゃん、本当におめでとう…!」
「………コク…」
「…この優勝旗、めっちゃ重いね…」
「………少しだけ…」
「…ふふ、ほのかちゃんらしいね。」
「………」
「…ねえ、ほのかちゃん。…これからも、一緒に、テニスしようね。」
「………コク…」
ほのかは、力強く頷いた。その笑顔は、今まで見たどんな笑顔よりも、輝いていた。
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