無口な少女はテニスで世界を獲る!~理解のある通訳さんと~

こころ さづき

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第十話 ほのかと私、それぞれの道へ

 全国大会優勝の熱狂からしばらくして、卒業式も間近に迫ったある日の放課後。

「…ほのかちゃん、進路、どうするの?」

 私は、夕日に照らされた教室で、ほのかちゃんに尋ねた。私たちは、二人きりで、将来について語り合っていた。

「………プロに…なる…」

 ほのかちゃんは、静かに、しかし力強く、そう言った。

「…やっぱり…!ほのかちゃんなら、きっと、世界一のプロテニス選手になれるよ!」

「………まだ…道のりは…長い…」

「…でも、ほのかちゃんなら、大丈夫!私、ずっと応援してるから!」

「………ありがとう…」

 ほのかちゃんは、小さく微笑んだ。全国大会での優勝は、彼女に、大きな自信と、確かな未来への道筋を与えたのだ。ほのかちゃんのプロテニス選手になるという夢は、今回の優勝で、より現実的なものとなっていた。

「…田中さんは…大学…?」

「…うん、私は…英語が、好きだから…」

 私は、少し照れながら、自分の将来について語り始めた。

「…英語、もっと勉強したいんだ。…そして、いつか…言葉を使って、誰かを支える仕事ができたらなって…」

「………田中さん…らしい…」

「…えへへ、そうかな…?…あ、そうだ。佐藤君、東京の大学に行くんだってね。」

「………」

「…ほのかちゃん、佐藤君とは、どうするの…?」

「………」

 ほのかちゃんは、何も答えなかった。でも、その表情は、少しだけ、寂しそうに見えた。

 佐藤君は、演劇を続けながらも、東京の有名大学への進学を決めていた。全国大会の後、佐藤君は演劇部に入部し、めきめきと頭角を現していた。そして、演劇の道を究めたい、と、私たちに熱く語っていた。そんな彼を、誰も、止めることはできなかった。

「双葉さんは、どうするんだろう…」

 ある日、佐藤君が、私にそう言ったことがあった。彼は、高校三年間、ずっとほのかちゃんに想いを寄せていたけど、その気持ちを伝えることはできなかった。…まあ、ほのかちゃんがあんな感じだし、無理もないけどね。

「佐藤君、東京に行っちゃうんだね…」

 私は、寂しそうに言った。…うん、私も、佐藤君が東京に行くのは、ちょっと寂しい。

「ああ…でも、いつかまた、双葉さんに会えるといいな…」

 佐藤君は、遠くを見つめながら、そう呟いた。その横顔は、いつもより、少し大人びて見えた。

 そんなある日、私は、ほのかちゃんに言った。

「ほのかちゃん、佐藤君に、ちゃんと気持ち伝えた方がいいよ!」

「………」

 ほのかちゃんは、黙って俯いていた。

「ほのかちゃん…もしかして、まだ佐藤君のこと…」

「………好き…」

 ほのかちゃんは、顔を真っ赤にしながら、小さな声で言った。

「やっぱり!…って、今、なんて!?」

「………好き…佐藤君のこと…ずっと…」

 ほのかちゃんは、今までで一番はっきりとした口調で、そう言った。

「ほのかちゃん…!」

 私は、ほのかちゃんを強く抱きしめた。…うん、やっぱり、ほのかちゃんは、最高だよ!

 そして、私は、ほのかちゃんを佐藤君の元へ、無理やり連れて行った!…まあ、少し強引だったかもしれないけど、これも、ほのかちゃんのためだからね!

「佐藤君!ほのかちゃんが、話があるんだって!」

「え、双葉さん…?」

 佐藤君は、驚いたように、ほのかちゃんを見つめた。

「あの…私…ずっと…佐藤君のこと…」

 ほのかちゃんは、顔を真っ赤にしながら、必死に言葉を紡いだ。

「………好き…でした…」

 ついに、ほのかちゃんは、自分の想いを伝えることができた。

「双葉さん…」

 佐藤君は、信じられないといった表情で、ほのかちゃんを見つめた。

「俺も…ずっと…双葉さんのことが…好きだった…」

 佐藤君も、自分の気持ちを打ち明けた。

「………」

 二人は、しばらくの間、無言で見つめ合った。…うん、いい雰囲気!

「じゃあ…これから…」

 佐藤君が、照れくさそうに言った。

「………うん…」

 ほのかちゃんは、小さく頷いた。その顔には、今まで見たことのないような、幸せそうな笑顔が浮かんでいた。…うん、本当によかった!

「…ほのかちゃん、おめでとう…!」

「………田中さん…ありがとう…」

「…佐藤君、ほのかちゃんのこと、よろしくね!」

「…ああ、任せとけ!」

 佐藤君は、力強く頷いた。

 その後、私たちは、卒業までの残り少ない時間を、精一杯、楽しんだ。ほのかちゃんと佐藤君は、遠距離恋愛を始めることになった。二人とも、不安はあるだろうけど、きっと、大丈夫。だって、あんなに強い想いで、結ばれているんだから。

 そして、卒業式の日。

「…ほのかちゃん、卒業、おめでとう。」

「………コク…」

「…これから、別々の道を歩むことになるけど、ずっと、友達だよ。」

「………うん…」

「…ほのかちゃんなら、きっと、すごいプロテニス選手になれるよ。私、ずっと応援してるからね。」

「………ありがとう…」

「…佐藤君とも、うまくいくといいね。」

「………コク…」

「…あ、そうだ。ほのかちゃん、これ…」

 私は、ほのかちゃんに、小さなプレゼントを手渡した。

「………?」

「…開けてみて。」

 ほのかちゃんは、不思議そうに、プレゼントの包みを開けた。中には、テニスボールの形をしたキーホルダーが入っていた。

「…これ…」

「…お揃いだよ。」

「………!」

 ほのかちゃんは、目を見開いて、驚いていた。

「…ずっと、友達でいようねっていう、約束の印。」

「………うん…!」

 ほのかちゃんは、力強く頷くと、キーホルダーを、大切そうに、鞄につけた。

「…ほのかちゃん、今まで、ありがとう。そして、これからも、よろしくね。」

「………こちらこそ…よろしく…」

 私たちは、固く、握手を交わした。

 そして、私たちは、それぞれの未来へと、歩き出した。

 ほのかちゃんは、プロテニス選手になるために。

 佐藤君は、東京の大学で、演劇の道を究めるために。

 そして、私は、私の夢を叶えるために。

 それぞれの夢に向かって、私たちは、今、新たな一歩を踏み出したのだ。

 この先、どんな困難が待ち受けていようとも、きっと、乗り越えていける。

 だって、私たちには、かけがえのない、仲間がいるのだから。

 そして、私たちの物語は、これからも、ずっと、続いていく。
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