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第一章 House_management.exe
殺戮
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俺は村へと向かった。
村の結界は消えていて、あたりは血の海になっていた。
死屍累々の中にかすかに動く腕。
駆け寄るとそれはマーラだった。
俺は彼女の頭を抱き上げる。マーラは一瞬顔を歪めた。
彼女は俺の顔をみるとかすかに微笑んだ。
「ユキハル……ユキハルにゃ。来てくれたのかにゃ」
マーラは口から血を吹き出して咳き込んだ。腹がざっくりと切り裂かれ赤黒いものが飛び出している。
「待っててください、今……」
「もういいのにゃ。レイも……死んでしまったにゃ。みんな……死んでしまったにゃ」
涙が落ちて頬の血を少しだけ洗い流した。
彼女の視線の先には無残な姿のレイの体が横たわっていた。
俺はポーションを取り出した。家で作ってきた特級ポーションだ。
彼女の傷口にかけたが、全く効果がない。口に含ませたがやはり効果はなかった。
「どうして!」
俺がうつむいているとマーラは右手を上げ、俺の頬に触れた。
「ユキハル……ユキハル、私のことを妻にしてほしいにゃ」
「まだ言ってるんですか」
俺は涙声で笑った。マーラも微笑んでいる。
「私はにゃユキハル、本当にユキハルのことが好きなのにゃ。毎日ユキハルのことを考えてたにゃ」
マーラはまた血を吐き出した。一瞬苦悶の表情を浮かべ、まるで命にしがみつくようにそれに耐えて、息を吐き出した。額には脂汗が浮き出ている。
「ユキハル。キスして欲しいにゃ」
「いくらでもしてあげます。だから待ってください。今別のポーションを……」
「お願いにゃ、もう苦しくて……」
俺はマーラにキスをした。柔らかい唇は鉄の味がした。
「えへへ、ありがと……にゃ」
マーラの体が重くなった。右腕は落ち、地面を打った。
「マーラさん。マーラさん!」
彼女の頬をなでた。
目の前が滲んでいく。
初めて会ったときお風呂に感動していた姿。
ワンピースを来てはしゃいでいた姿。
銭湯をつくったのにわざわざダンジョンの家まで入りに来て、いたずらに成功した子供みたいに笑う顔。
妻にしてほしいと、最後に力を振り絞って微笑んだ顔。
慟哭した。
もう一度笑ってほしかった。今ならいくらでも言うことを聞くから。お願いなら何でも聞くから。夫にだってなってあげるよ。だから、
「だから、お願いだから目を開けてくれ、マーラ!!!」
風が吹いて垂れた耳が愛らしく揺れた。
彼女は初めにあげたワンピースを着ていた。服は割かれて白いワンピースは真っ赤に染まっていた。
剣に切り裂かれた跡だ。
マーラを静かに横たえた。後でしっかり埋葬してあげる。
「少し待っててくれ」
俺はマーラの頭をなでた。
レイは首を切り落とされて死んでいた。頭を胴体のところまで持っていく。
マーラにしたように、俺はレイにキスをした。また涙が溢れてきて、俺はレイに額を合わせた。
俺があのとき騎士たちを全員殺していればこんなことにはならなかった。
俺は選択を誤った。
選択肢を持たなかった。
従うだけじゃ足りない。
従うだけじゃ守れない。
その時、ポケットに入っていたスマホが鳴った。着信音だ。
俺はズボンで手を拭いて、スマホを取り出すと画面を見た。
『非通知』
電話に出る。
「やあ、久しぶりだね。元気は……なさそうだね」
「……」
「今回は真面目な話だ。LEVELが一気に20になったからね。できることも増えたよ」
俺は電話を切ろうとした。
「切るな」
ひどく低く、恐怖の根幹を揺るがすような声が聞こえた。
「説明は最後まで聞くものだよ。まず1つ。スマホでPCと同じ操作ができるようになった。アプリを入れておいたから見てくれ。それからもう一つ。気づいているとは思うがインベントリとパンの箱は別の場所につながっている。それを一つにしてクローゼットとして部屋においておいた。行き先を指定できるようになっているから行ける場所を確認してほしい。説明は以上だよ」
「聞きたいことがある」
「なんだい?」
「どうしてマーラに特級ポーションが効かないんだ。低級のポーションは効いただろ」
「低級ポーションはただの薬草汁だよ。傷薬だ。それと違って特級ポーションは飲んだ者の体内にある魔石を使って体を治す。獣人は魔石をもっていないからね」
「どうして早く教えてくれなかった」
「聞かれなかったからね」
「くそ! じゃあ、どうして結界は消えている?」
「直接教えることはできない。ルールでね。ただヒントを教えよう。死んでいる騎士たちを調べるんだ」
そこで電話は切れた。
俺はすぐに倒れている騎士を散策した。なにか情報はないか。
すると、一人見かけたことのある騎士がいた。あの顔に傷のある女と一緒にいた騎士だ。
こいつは胸をバリスタの矢が通り抜けたようで、左肩から先がなくなっていた。
鎧を外すと、腹の部分に血で濡れた羊皮紙のようなものが入っていた。
どうやらこいつがこの騎士たちの隊長だったらしい。
羊皮紙には詳細ではないもののある程度の場所を示す地図が描かれており、それとともに手紙が同封されていた。
手紙には次のようなことが書かれていた。
――獣人の村へ迎い殲滅せよ。ライアン・バーネル
目の前が真っ赤になった。
背中が熱い。
ライアン・バーネル
この男のせいでマーラとレイは死んでしまった。
殺された。
俺は誓う。
マーラに。
レイに。
死んでしまった獣人たちに。
俺はもう指示に従わない。
恐れない。
俺は
村の結界は消えていて、あたりは血の海になっていた。
死屍累々の中にかすかに動く腕。
駆け寄るとそれはマーラだった。
俺は彼女の頭を抱き上げる。マーラは一瞬顔を歪めた。
彼女は俺の顔をみるとかすかに微笑んだ。
「ユキハル……ユキハルにゃ。来てくれたのかにゃ」
マーラは口から血を吹き出して咳き込んだ。腹がざっくりと切り裂かれ赤黒いものが飛び出している。
「待っててください、今……」
「もういいのにゃ。レイも……死んでしまったにゃ。みんな……死んでしまったにゃ」
涙が落ちて頬の血を少しだけ洗い流した。
彼女の視線の先には無残な姿のレイの体が横たわっていた。
俺はポーションを取り出した。家で作ってきた特級ポーションだ。
彼女の傷口にかけたが、全く効果がない。口に含ませたがやはり効果はなかった。
「どうして!」
俺がうつむいているとマーラは右手を上げ、俺の頬に触れた。
「ユキハル……ユキハル、私のことを妻にしてほしいにゃ」
「まだ言ってるんですか」
俺は涙声で笑った。マーラも微笑んでいる。
「私はにゃユキハル、本当にユキハルのことが好きなのにゃ。毎日ユキハルのことを考えてたにゃ」
マーラはまた血を吐き出した。一瞬苦悶の表情を浮かべ、まるで命にしがみつくようにそれに耐えて、息を吐き出した。額には脂汗が浮き出ている。
「ユキハル。キスして欲しいにゃ」
「いくらでもしてあげます。だから待ってください。今別のポーションを……」
「お願いにゃ、もう苦しくて……」
俺はマーラにキスをした。柔らかい唇は鉄の味がした。
「えへへ、ありがと……にゃ」
マーラの体が重くなった。右腕は落ち、地面を打った。
「マーラさん。マーラさん!」
彼女の頬をなでた。
目の前が滲んでいく。
初めて会ったときお風呂に感動していた姿。
ワンピースを来てはしゃいでいた姿。
銭湯をつくったのにわざわざダンジョンの家まで入りに来て、いたずらに成功した子供みたいに笑う顔。
妻にしてほしいと、最後に力を振り絞って微笑んだ顔。
慟哭した。
もう一度笑ってほしかった。今ならいくらでも言うことを聞くから。お願いなら何でも聞くから。夫にだってなってあげるよ。だから、
「だから、お願いだから目を開けてくれ、マーラ!!!」
風が吹いて垂れた耳が愛らしく揺れた。
彼女は初めにあげたワンピースを着ていた。服は割かれて白いワンピースは真っ赤に染まっていた。
剣に切り裂かれた跡だ。
マーラを静かに横たえた。後でしっかり埋葬してあげる。
「少し待っててくれ」
俺はマーラの頭をなでた。
レイは首を切り落とされて死んでいた。頭を胴体のところまで持っていく。
マーラにしたように、俺はレイにキスをした。また涙が溢れてきて、俺はレイに額を合わせた。
俺があのとき騎士たちを全員殺していればこんなことにはならなかった。
俺は選択を誤った。
選択肢を持たなかった。
従うだけじゃ足りない。
従うだけじゃ守れない。
その時、ポケットに入っていたスマホが鳴った。着信音だ。
俺はズボンで手を拭いて、スマホを取り出すと画面を見た。
『非通知』
電話に出る。
「やあ、久しぶりだね。元気は……なさそうだね」
「……」
「今回は真面目な話だ。LEVELが一気に20になったからね。できることも増えたよ」
俺は電話を切ろうとした。
「切るな」
ひどく低く、恐怖の根幹を揺るがすような声が聞こえた。
「説明は最後まで聞くものだよ。まず1つ。スマホでPCと同じ操作ができるようになった。アプリを入れておいたから見てくれ。それからもう一つ。気づいているとは思うがインベントリとパンの箱は別の場所につながっている。それを一つにしてクローゼットとして部屋においておいた。行き先を指定できるようになっているから行ける場所を確認してほしい。説明は以上だよ」
「聞きたいことがある」
「なんだい?」
「どうしてマーラに特級ポーションが効かないんだ。低級のポーションは効いただろ」
「低級ポーションはただの薬草汁だよ。傷薬だ。それと違って特級ポーションは飲んだ者の体内にある魔石を使って体を治す。獣人は魔石をもっていないからね」
「どうして早く教えてくれなかった」
「聞かれなかったからね」
「くそ! じゃあ、どうして結界は消えている?」
「直接教えることはできない。ルールでね。ただヒントを教えよう。死んでいる騎士たちを調べるんだ」
そこで電話は切れた。
俺はすぐに倒れている騎士を散策した。なにか情報はないか。
すると、一人見かけたことのある騎士がいた。あの顔に傷のある女と一緒にいた騎士だ。
こいつは胸をバリスタの矢が通り抜けたようで、左肩から先がなくなっていた。
鎧を外すと、腹の部分に血で濡れた羊皮紙のようなものが入っていた。
どうやらこいつがこの騎士たちの隊長だったらしい。
羊皮紙には詳細ではないもののある程度の場所を示す地図が描かれており、それとともに手紙が同封されていた。
手紙には次のようなことが書かれていた。
――獣人の村へ迎い殲滅せよ。ライアン・バーネル
目の前が真っ赤になった。
背中が熱い。
ライアン・バーネル
この男のせいでマーラとレイは死んでしまった。
殺された。
俺は誓う。
マーラに。
レイに。
死んでしまった獣人たちに。
俺はもう指示に従わない。
恐れない。
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