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第二章 選択する、選択させる
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「国内はすべて制圧したな」
俺は城の中にある会議室で国王の椅子に座り、膝の上にナオミを座らせて言った。ナオミは俺に体を預けて今にも眠りそうだ。
「さて、この後どうしようか、ステイシー」
ステイシーはびくっと体を震わせて言った。
「どうって……?」
「一つ、国外に手を広げる、例のヘンリー王の国がいいかな。一つ魔族を侵略する。どっちがいい? 選択しろ」
俺はナオミの頭をなでて言った。
ステイシーは言った。
「隣国に範囲を広げます」
「それでいい。魔族とは協力関係を結んでおきたいからな」
俺はテーブルに乗っていた黒いリングを持ち上げ、じっくりと見た。
「まさか向こうから接触してくるとはな」
◇
魔族が接触してきたのは数日前、謁見の間にトカゲの魔族が現れた。俺は最初獣人かと思ったが魔力量が桁違いらしい。漂う空気が違った。
「国王が新しくなったと聞きまして、お近づきのしるしにと」
奴が俺に渡したのはリングと、紫色の液体だった。液体はガラスの瓶に入っており、中で蟲のようなものがうごめいていた。
「なんだこれは」
「それは魔力を増幅させるものであります。……死んだ奴隷兵士を強制的に動かす材料でもあります」
「そんなことが可能なのですか?」
ステイシーが叫んだ。
「ええ。可能です宰相様。ただ、それを飲んだ死体は体がバラバラになってしまうのです。それを防ぐためには体をミスリルで覆う必要があります」
「ミスリルね」
俺は生成可能なものの一覧からミスリルを探し出した。消費ポイントは多いが使える兵は多いほうがいい。
「リングには何の意味がある」
「隣国には特にスキルを持つものが多くいます。彼らにそのリングをつけさせるとスキルが使えなくなるのです」
「ほう、便利だな」
俺はリングをインベントリに入れた。どうやら複製可能なものらしい。大量に複製しておいた。
◇
「このリングがあれば隣国を攻められる」
「あの……」
ステイシーが意見した。
「なんだ?」
「隣国のうちノリッチだけは攻めないでください。……知人がいるんです……」
「ああ、わかった」
俺が肯くとステイシーはほっと胸をなでおろした。
◇
会議が終わった後、俺はドレークを呼んだ。筋骨隆々の巨漢で元Aランク冒険者だが今では完全に洗脳されている。奴に耳打ちをした。
「ノリッチを攻めろ」
「仰せのままに」
ドレークはにやりと笑って応えた。
◇
何気ない秋の日だった。太陽は高く上り、牛が牧草を食(は)んでいた。村の男たちは畑で、いつもより少ない収穫を嘆いていた。ヘンリーは父について畑にいき、収穫の手伝いをしていた。心地よい風が吹いていた。父親は今日の夕飯について語り、ヘンリーは肯いた。
そんな日が、ずっと続くと思っていた。
蹄が地を蹴る音が鳴り響いた。ヘンリーは諸侯か、もしくは王都に向かう兵士たちがそばを通っているのだろうと思った。父親は手で日よけを作って遠くを見やった。
そして、その表情を曇らせた。
「家に戻るぞ」
父はヘンリーの腕をつかむと、収穫物を投げおいて走り出した。ヘンリーはぎょっとして、父を見上げた。
「どうしたの、父さん」
「わからない。ただ、何かが来てる」
ヘンリーは振り返った。背の高さほどもある麦の向こう側に人の頭がいくつも現れた。その数がどんどん増えていくにつれて、ヘンリーは、馬に乗った何者かが村に近づいているのだと気づいた。
兵士だった。アイアンプレートの鎧を着ていた。頭には何もつけず無表情で彼らは駆けてきた。鬨の声も上がらなかった……。
了
俺は城の中にある会議室で国王の椅子に座り、膝の上にナオミを座らせて言った。ナオミは俺に体を預けて今にも眠りそうだ。
「さて、この後どうしようか、ステイシー」
ステイシーはびくっと体を震わせて言った。
「どうって……?」
「一つ、国外に手を広げる、例のヘンリー王の国がいいかな。一つ魔族を侵略する。どっちがいい? 選択しろ」
俺はナオミの頭をなでて言った。
ステイシーは言った。
「隣国に範囲を広げます」
「それでいい。魔族とは協力関係を結んでおきたいからな」
俺はテーブルに乗っていた黒いリングを持ち上げ、じっくりと見た。
「まさか向こうから接触してくるとはな」
◇
魔族が接触してきたのは数日前、謁見の間にトカゲの魔族が現れた。俺は最初獣人かと思ったが魔力量が桁違いらしい。漂う空気が違った。
「国王が新しくなったと聞きまして、お近づきのしるしにと」
奴が俺に渡したのはリングと、紫色の液体だった。液体はガラスの瓶に入っており、中で蟲のようなものがうごめいていた。
「なんだこれは」
「それは魔力を増幅させるものであります。……死んだ奴隷兵士を強制的に動かす材料でもあります」
「そんなことが可能なのですか?」
ステイシーが叫んだ。
「ええ。可能です宰相様。ただ、それを飲んだ死体は体がバラバラになってしまうのです。それを防ぐためには体をミスリルで覆う必要があります」
「ミスリルね」
俺は生成可能なものの一覧からミスリルを探し出した。消費ポイントは多いが使える兵は多いほうがいい。
「リングには何の意味がある」
「隣国には特にスキルを持つものが多くいます。彼らにそのリングをつけさせるとスキルが使えなくなるのです」
「ほう、便利だな」
俺はリングをインベントリに入れた。どうやら複製可能なものらしい。大量に複製しておいた。
◇
「このリングがあれば隣国を攻められる」
「あの……」
ステイシーが意見した。
「なんだ?」
「隣国のうちノリッチだけは攻めないでください。……知人がいるんです……」
「ああ、わかった」
俺が肯くとステイシーはほっと胸をなでおろした。
◇
会議が終わった後、俺はドレークを呼んだ。筋骨隆々の巨漢で元Aランク冒険者だが今では完全に洗脳されている。奴に耳打ちをした。
「ノリッチを攻めろ」
「仰せのままに」
ドレークはにやりと笑って応えた。
◇
何気ない秋の日だった。太陽は高く上り、牛が牧草を食(は)んでいた。村の男たちは畑で、いつもより少ない収穫を嘆いていた。ヘンリーは父について畑にいき、収穫の手伝いをしていた。心地よい風が吹いていた。父親は今日の夕飯について語り、ヘンリーは肯いた。
そんな日が、ずっと続くと思っていた。
蹄が地を蹴る音が鳴り響いた。ヘンリーは諸侯か、もしくは王都に向かう兵士たちがそばを通っているのだろうと思った。父親は手で日よけを作って遠くを見やった。
そして、その表情を曇らせた。
「家に戻るぞ」
父はヘンリーの腕をつかむと、収穫物を投げおいて走り出した。ヘンリーはぎょっとして、父を見上げた。
「どうしたの、父さん」
「わからない。ただ、何かが来てる」
ヘンリーは振り返った。背の高さほどもある麦の向こう側に人の頭がいくつも現れた。その数がどんどん増えていくにつれて、ヘンリーは、馬に乗った何者かが村に近づいているのだと気づいた。
兵士だった。アイアンプレートの鎧を着ていた。頭には何もつけず無表情で彼らは駆けてきた。鬨の声も上がらなかった……。
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