Distortionな歪くん

Sia

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Distortionな歪くん 01 「異能」

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Distortionな歪くん 01 「異能」

 国立異能高校、この学校は「生徒の現実的な自主性」をスローガンに掲げられ、生徒の圧倒的自由が約束されている。
 
だから、この学校では、やりたいことがなんでもできる。


 教育委員会による自殺防止で閉鎖された、屋上に登ることだってできる。

 どんなふざけた部活だって作ることができる。

 生徒会に入れば、学校大半の権力を持つことだってできる。



 そう…中学の三年間を全て捧げたのは、この日の為…
              
わたしは、仰々しいほど装飾された門の前に立ち、まだ肌になじまない異能高校のブレザーのネクタイを、ギュッと締めて深呼吸をする。

 「邪魔だなぁ、一年生、『まっしょー』しちゃうぞー」

 慌てて声がした方を向くと、そこには老眼鏡をかけてスーツを着た男が、首のストレッチをしながら立っていた。

 「えっ、あ、すいません…」

 わたしが謝罪を入れるとその男は無言で現代風の建築がされた立体感のある、白を基調とした校舎へと入っていった。
 
                         エゴ
 「へぇ…あんな“異能”持ちがいるとは…」

 右を向くといつの間にか、同じ一年生だろうか、寝癖が目立つ学ランの男子生徒が、不敵な笑みを浮かべて頭を掻きながら立っていた。

 「え、えごもち…?ってなんですか?」

 コミュ障だが、勇気を振り絞り訊いてみる。わたしは小さい時から、なんでも訊いてしまうタチなのだ。
 すると、その男子生徒の虚ろな目が、わたしの方を向いた。が、明らかに焦点が合っていない…
 

 「あれ?君は特待生じゃないの?」
 
「こっ、この学校に特待生制度なんてあったんですか!?」

 わたしはつい、前のめりになって質問してしまう。



 この学校は、知る人ぞ知る超難関校。
しかも、国家議員であり現校長の智過羅河全(ちからがぜん)は、個人の資産は莫大な規模と言われており、さらに入試はその場で実力を発揮できるかを観るために、筆記試験のみとされている。




  彼は何かを察したのか…学校の玄関を向き、わたしに興味を無くした様にそのままの表情で、歩いていった。

 えっ?無視!?

 わたしはずれた眼鏡をなおす。

 しばらくしてから、わたしも学校の中へと入っていく。

 
 パンフレットに書かれていた、指定の下駄箱に靴を入れたわたしは、一面ガラス張りの廊下に出て、「1-A」の教室に入って行った。

 教室は、沈黙に満ち、もう何人か座っていて、各々でスマホをいじるなどで暇を潰していた。
 

 わたしも指定された席へ座った。
 
 後ろの方の窓枠の席。
 漫画とかの主人公が座りそうな席…

 

 かばんを机の横に掛けながら、わたしはポッケから、スマホを取り出そうとする。

 ふと辺りを見た回すと、さっきの男子生徒があの虚ろで真っ直ぐな目でスマホをいじっていた。
 男子生徒はイヤホンをして、動画を再生をしては止め、再生をしては止めを繰り返していた。

 自撮り動画だが、そこら辺の陽キャとは違う感じがした。

 わたしもスマホでしばらく時間を潰した。




 教室の席が埋まって、少し経つと担任らしきスーツを着た、スポーツ刈りの少し強面な男が入ってきた。

                                               ばんゆう りきどう
 「みんな揃いましたね。私の名前は万優 力動です。それでは入学式まで出席確認をします」

 以外にも丁寧な口調。
 前の席から順に名前が呼ばれていく。

       ゆがみ ひずみ
 「ーー征上 歪」
 「はいっ」

虚ろな目で、しかしはっきりと返事する、さっきの男子生徒はどうやら“征上 歪”と言う名前のようだ。

                    しらぬ りかい
 「ーー次、“志等奴 里懐”…志等奴 里懐、聞いてるのか?志等奴 里懐!」
 
「あ!ちょっとわかりませんでした…」

 わたしの近くまできて何やら不穏な雰囲気…
 他のクラスメイトは、自分に降りかからないように息を殺している。
 わたしも同じだ。

 すると、力動先生は何かの表を取り出した。

                エゴ
  「お前の異能は…そうか…すまなかった、里壊」


 またしても「えご」と言う謎のワードが現れる。
 征上 歪といい、一体なんのことなのか…

              へいわあい
 「…依……平輪 亜依!」

 「はっはい!」

 考えごとに夢中になり、返事が遅れてしまう。

 「呼ばれたらすぐ答えろ…!」

 さっきの口調とは裏腹に、低いトーンで叱られる。
 
 「はい…すみません…」

 わたし少し涙ぐんでしまう。この教師、叱る時は普通の先生みたく叫ぶのではなく、声で相手を圧死させるみたいに言う。

 〈生徒の皆さんは体育館に集合してください。始業式を始めます〉

 叱られ、この場から逃げ出してしまいたい時に、ちょうどよく、放送のアナウンスがなった。

「では、皆さん並んでいきましょう」

 力動先生が最初の時と同じトーンになる。
先生の指示でわたし達は、椅子を持って廊下並び、体育館へと向かった。


 予想以上に広々とした体育館にはもう、二年生が前に、三年生が後ろに列をなしてわたし達一年生に向かい合うようにして綺麗に座っていた。

 〈それでは、始業式を始めます〉
 〈校歌斉唱!〉

 そうアナウンスがなると、ガタッと椅子で静かなるハーモニーを奏でるが如く、一斉に先輩方が立ち、校歌を歌い始める。


 [異能高校 校歌]

「汝 人に非ず」と戯言ふかず
「汝 理に非ず」と虚言はかず

 「異」を受け入れぬ者 此処に立たず
 「能」を認めぬ者 忘却せよ

 「未知」を恐怖と侮るべからず
 「知恵」は個だけのものにあらず

さあ いざ進め「異」を知り「能」を持つ者よ
因果は解き放たれ 世は廻る

 嗚呼 我ら異能高校   

 作詞 作曲 智過羅河 全


 パチ…パチパチパチーーと、ひとつの拍手に遅れてからたくさんの拍手が体育館に響きわたる。
 

  〈着席〉
 
先輩方はステージ方向に椅子を向けてから座る。流石国立。ほぼ無音で方向転換をできている。

 〈続いて、校長式辞 智過羅河 全校長、お願いします〉

 いつのまにかステージには演説台が置かれていて、それに向かって歩く、白髪で筋肉質のスーツ姿のテレビのニュースで観たことのある男性がいた。

 男性はマイクを力強く握りしめると、

 「新入生の皆さん、まずは、元気ですか?
私の名前は智過羅河 全です!」

 「わぁ…本物だ…」
 「めっちゃ筋肉ある…」

 テレビでしか見たことがない、国会議員が目の前にいることに、わたしも含め驚きを隠せないでいる者もいる。

 「いきなりで悪いのですが、重大な発表があります…!」

 重大な発表。なんだろうか…

 「我が異能高校は、実は“特待生制度”があります…!」

 「…まじか…」
 「え、でも『無い』って書いてなかった?」
 
 その場にいる大多数が動揺を隠せないでいる。
 彼が言っていたことが本当だった…
でもいったい条件はなにか……

 校長のマイクを握る手が、より力強くなるように見える。表情も深いものになっていく…気がした。

                                       エゴ
 「それは、異能、我々が“異能”と言う超常現象の特殊能力を持って産まれた者である!」

 Distortionな歪くん 01 「異能」 完
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