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「お前を愛する事は無い」ですか、やっぱり
「お前を愛する事は無い」
結婚初夜の夫婦の寝室で旦那様から言われた言葉に、
「やっぱりね」
と、漏らしてしまった。
私、貧乏子爵家の長女ルイーゼ18歳は、フリード・ロアー伯爵25歳と本日めでたく結婚した。
「やっぱりとは何故だ」
不思議そうに聞く旦那様。自覚が無かったのでしょうか。
「いきなり婚約を申し込まれて、顔を見たのは婚約申請届を記入した三か月前。それから何の音沙汰もないまま結婚式となったら、これは不本意な婚姻なのだと分かりますわよ」
「いや、忙しくて」
「分かっています。半年前、ロアー伯爵領に大きな水害があった事は。それで、家政を仕切る即戦力が欲しくて私に目を付けたのでしょう?」
先代の伯爵夫妻も急な増水に巻き込まれて亡くなった。弟と妹さんは既に他の家に婿入り・嫁入りしていて当てに出来ない。肝心の自分の婚約者は、二年前に急な病気で亡くなっている。
いきなり爵位継承と水害からの復旧が一人の上にのしかかって手一杯なのだろう。
まあ、こちらは持参金が用意できなくて婚姻は諦めていた所に「持参金は不要」という縁談が来て飛びついたのだけど。
「では、失礼いたします」
と、立ち上がって寝室を出ようとすると、旦那様に腕を掴まれる。
「どこへ行く」
「私の部屋ですけど……?」
「何故だ。これから初夜だろう」
「私とですか?」
「当たり前だろう。跡取りを生んでもらうのも君の仕事だ」
「……旦那様には身分違いの愛する人がいるのではないのですか?」
「は? どこからそんな思い込みを……」
本気で途方に暮れてる顔だ。あれ? 違った?
「多分、旦那様には身分違いのために結ばれない愛する人がいて、私は表向きの妻で、きっと子供はその女性と作って、私に育てさせる計画かと……」
「妄想はもういい」
ベッドに放り込まれる。本気ですか? いや、結婚したのだから当然といえば当然なのだけど。
「ちょっと待って! じゃあ、『お前を愛する事は無い』って何ですか!」
「女は嫌いだ」
「あ、そちらの趣味の方ですか」
「そうじゃない! 女たちは、今まで私と結婚したそうな素振りをしていたくせに、私の家が大変な事になったらそっぽを向く。婚姻を申し込んだら侮蔑の言葉を投げつける。もう信用などできるか!」
あー、今まで顔良し家柄良しでチヤホヤされてきたのに手のひら返しされて傷付いたんだ。
……でもねぇ、今までいくらアプローチしても相手にしなかった男が、家の状況が悪くなったらいきなり婚姻の申し込みって、そりゃあふざけんなって嫌みの一つや二つ言いたくなると思うよ?
なんて、誤解を解いてあげる気は無いけど。これからも彼女たちを嫌いでいてね。
「お前だって金目当てだろう」
「目当てっていうのとはちょっと違うかな。うちは、持参金を一人分しか工面できないので妹を嫁に出そうとしてたんです。そしたら持参金無しの縁談が持ちこまれてラッキー!、という感じですね」
「…………」
「あ、支度金までいただいたので、子供服と子供の肌着を100着ほど仕立てました。水害で親を亡くした子供と、親が山道の修復に駆り出されて残された子供で救児院が満杯だと聞きましたので」
「100着も仕立てられる金額では無かったろう」
「仕立てたのは私ですよ。安い布を買って。婚約者と出かける事も無い暇な婚約期間でしたので」
「う……」
「ちなみに、全部デザインや色の組み合わせを微妙に変えてあるので、『安い布で大量に作った服』じゃなく『おしゃれなお揃いの服』レベルになってますよ。子供服は、サイズは小さいし、プリーツやドレープを作らなくていいし、ビロードやシルクじゃなく木綿なので縫いやすいし、はかどりましたわ」
ってか、チクチクと没頭してたから脳内で旦那様の許されぬ恋妄想が育ってしまったのよね……。
「見事な技術を持ってるのだな」
「技術というかコツですね。惨めにならない貧乏生活は得意ですの」
「惨め……。そうか、これが惨めと言う感情なのか」
うっ、旦那様には私との婚姻は惨めなんですか。
「自分は怒っていると思っていたのだが、大変な時に誰も寄り添ってくれない自分を惨めに思っていたのだな」
「……縁談を断られた方を、そんなにお好きだったのですか?」
「いや……」
「それでは、『お前を愛する事は無い』『だが、お前以外も愛していない。なのでお前は俺のナンバーワンだ』という解釈でよろしいでしょうか?」
「何でそうなる!」
「私以外の人と子を作るつもりですの?」
「そんな不誠実な事はせぬ!」
「なら、私が一番ですわね」
私はにっこりと笑った。
一年後、無事に跡取りが生まれ、その後も子宝に恵まれた。
私はナンバーワンの座を生涯誰にも譲らなかった。
結婚初夜の夫婦の寝室で旦那様から言われた言葉に、
「やっぱりね」
と、漏らしてしまった。
私、貧乏子爵家の長女ルイーゼ18歳は、フリード・ロアー伯爵25歳と本日めでたく結婚した。
「やっぱりとは何故だ」
不思議そうに聞く旦那様。自覚が無かったのでしょうか。
「いきなり婚約を申し込まれて、顔を見たのは婚約申請届を記入した三か月前。それから何の音沙汰もないまま結婚式となったら、これは不本意な婚姻なのだと分かりますわよ」
「いや、忙しくて」
「分かっています。半年前、ロアー伯爵領に大きな水害があった事は。それで、家政を仕切る即戦力が欲しくて私に目を付けたのでしょう?」
先代の伯爵夫妻も急な増水に巻き込まれて亡くなった。弟と妹さんは既に他の家に婿入り・嫁入りしていて当てに出来ない。肝心の自分の婚約者は、二年前に急な病気で亡くなっている。
いきなり爵位継承と水害からの復旧が一人の上にのしかかって手一杯なのだろう。
まあ、こちらは持参金が用意できなくて婚姻は諦めていた所に「持参金は不要」という縁談が来て飛びついたのだけど。
「では、失礼いたします」
と、立ち上がって寝室を出ようとすると、旦那様に腕を掴まれる。
「どこへ行く」
「私の部屋ですけど……?」
「何故だ。これから初夜だろう」
「私とですか?」
「当たり前だろう。跡取りを生んでもらうのも君の仕事だ」
「……旦那様には身分違いの愛する人がいるのではないのですか?」
「は? どこからそんな思い込みを……」
本気で途方に暮れてる顔だ。あれ? 違った?
「多分、旦那様には身分違いのために結ばれない愛する人がいて、私は表向きの妻で、きっと子供はその女性と作って、私に育てさせる計画かと……」
「妄想はもういい」
ベッドに放り込まれる。本気ですか? いや、結婚したのだから当然といえば当然なのだけど。
「ちょっと待って! じゃあ、『お前を愛する事は無い』って何ですか!」
「女は嫌いだ」
「あ、そちらの趣味の方ですか」
「そうじゃない! 女たちは、今まで私と結婚したそうな素振りをしていたくせに、私の家が大変な事になったらそっぽを向く。婚姻を申し込んだら侮蔑の言葉を投げつける。もう信用などできるか!」
あー、今まで顔良し家柄良しでチヤホヤされてきたのに手のひら返しされて傷付いたんだ。
……でもねぇ、今までいくらアプローチしても相手にしなかった男が、家の状況が悪くなったらいきなり婚姻の申し込みって、そりゃあふざけんなって嫌みの一つや二つ言いたくなると思うよ?
なんて、誤解を解いてあげる気は無いけど。これからも彼女たちを嫌いでいてね。
「お前だって金目当てだろう」
「目当てっていうのとはちょっと違うかな。うちは、持参金を一人分しか工面できないので妹を嫁に出そうとしてたんです。そしたら持参金無しの縁談が持ちこまれてラッキー!、という感じですね」
「…………」
「あ、支度金までいただいたので、子供服と子供の肌着を100着ほど仕立てました。水害で親を亡くした子供と、親が山道の修復に駆り出されて残された子供で救児院が満杯だと聞きましたので」
「100着も仕立てられる金額では無かったろう」
「仕立てたのは私ですよ。安い布を買って。婚約者と出かける事も無い暇な婚約期間でしたので」
「う……」
「ちなみに、全部デザインや色の組み合わせを微妙に変えてあるので、『安い布で大量に作った服』じゃなく『おしゃれなお揃いの服』レベルになってますよ。子供服は、サイズは小さいし、プリーツやドレープを作らなくていいし、ビロードやシルクじゃなく木綿なので縫いやすいし、はかどりましたわ」
ってか、チクチクと没頭してたから脳内で旦那様の許されぬ恋妄想が育ってしまったのよね……。
「見事な技術を持ってるのだな」
「技術というかコツですね。惨めにならない貧乏生活は得意ですの」
「惨め……。そうか、これが惨めと言う感情なのか」
うっ、旦那様には私との婚姻は惨めなんですか。
「自分は怒っていると思っていたのだが、大変な時に誰も寄り添ってくれない自分を惨めに思っていたのだな」
「……縁談を断られた方を、そんなにお好きだったのですか?」
「いや……」
「それでは、『お前を愛する事は無い』『だが、お前以外も愛していない。なのでお前は俺のナンバーワンだ』という解釈でよろしいでしょうか?」
「何でそうなる!」
「私以外の人と子を作るつもりですの?」
「そんな不誠実な事はせぬ!」
「なら、私が一番ですわね」
私はにっこりと笑った。
一年後、無事に跡取りが生まれ、その後も子宝に恵まれた。
私はナンバーワンの座を生涯誰にも譲らなかった。
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