妹の初恋は私の婚約者

あんど もあ

文字の大きさ
1 / 3

前編

「カミーユ・アストリエ侯爵令嬢! お前とは今日で婚約破棄だ!」

 王立学園の卒業パーティーで、突然フランツ第一王子が宣言しました。
 会場に一気に緊張が走ります。おめでたいパーティーで何をしてるのでしょう。
 宣言された私は、わざとらしくため息をつきました。

「その件は、父からお断りしているはずですが」
 あなたの一存で決められる事では無いと、分かっているでしょうに……。
「たとえ婚約破棄が認められなくとも、私の気持ちは既に決まっている。お前を愛する事は無い!」
「それは、あなたの後ろにいる令嬢のせいと思って良いのでしょうか?」

 殿下の後ろには、長い金髪をリボンでまとめただけの、青紫のシンプルなドレスを着た、まだ学園に入学する前の年齢の令嬢がいます。
 自分が主役のような華美な服装にしなかった事は、褒めてあげましょう。
 でも、既に会場中の注目を集めてますけどね。

「そうだ。私はこのジョフロアを愛している」
「ジョフロア、あなたはどう思ってますの?」
「わ、私も……、殿下をお慕いしています」
 堂々とした二人の愛の宣言に、周りが息を呑みます。

「そんな事は知ってますわ。あなたが十歳の頃から殿下を好きな事なんて、姉の私が気付かないわけないでしょう?」
 会場にざわめきが広がります。彼女はカミーユ嬢の妹なのか! アストリエ侯爵家にはカミーユ嬢の下に弟と妹がいたはずだ、などと言っているのでしょうが、放っておきましょう。
「聞きたいのは、屋敷から出た事すら数えるほどしかない対人恐怖症のあなたが、殿下の横に立てますの? 皆の、好奇心や侮蔑の目に晒されても平気でいられる?、と言う事よ」
「だ……大丈夫です」
 とても大丈夫とは思えない小さな声。

「ふぅ……。認めるわけにはいきませんわ。ジョフロアは初恋に夢を見ているだけのまだ子供。これで殿下とジョフロアが婚約したら、ジョフロアは『姉から婚約者を略奪した妹』と後ろ指を指されますもの。妹が不幸になる縁組など、論外ですわ」
「略奪では無い! 私がジョフロアを求めているのだ」
「綺麗事を……。世間はそうは見ませんのよ。あなたにジョフロアが守れますの?」
「守ってみせる!」
「口では何とでも言えますわ」
 ふんっ! 大切な妹をそんな口約束に任せられるものですか。

あなたにおすすめの小説

幼馴染が最優先な婚約者など、私の人生には不要です。

たると
恋愛
シュタイン伯爵家の長女エルゼは、公爵子息フィリップに恋をしていた。 彼の婚約者として選ばれた時は涙を流して喜んだが、その喜びもいまは遠い。 『君は一人でも大丈夫だろう。この埋め合わせは必ずする。愛している』 「……『愛している』、ですか」 いつも幼馴染を優先するアルベルトに、恋心はすっかり冷めてしまった。

【完結】婚約破棄?勘当?私を嘲笑う人達は私が不幸になる事を望んでいましたが、残念ながら不幸になるのは貴方達ですよ♪

山葵
恋愛
「シンシア、君との婚約は破棄させてもらう。君の代わりにマリアーナと婚約する。これはジラルダ侯爵も了承している。姉妹での婚約者の交代、慰謝料は無しだ。」 「マリアーナとランバルド殿下が婚約するのだ。お前は不要、勘当とする。」 「国王陛下は承諾されているのですか?本当に良いのですか?」 「別に姉から妹に婚約者が変わっただけでジラルダ侯爵家との縁が切れたわけではない。父上も承諾するさっ。」 「お前がジラルダ侯爵家に居る事が、婿入りされるランバルド殿下を不快にするのだ。」 そう言うとお父様、いえジラルダ侯爵は、除籍届けと婚約解消届け、そしてマリアーナとランバルド殿下の婚約届けにサインした。 私を嘲笑って喜んでいる4人の声が可笑しくて笑いを堪えた。 さぁて貴方達はいつまで笑っていられるのかしらね♪

嘘はあなたから教わりました

菜花
ファンタジー
公爵令嬢オリガは王太子ネストルの婚約者だった。だがノンナという令嬢が現れてから全てが変わった。平気で嘘をつかれ、約束を破られ、オリガは恋心を失った。カクヨム様でも公開中。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

甘そうな話は甘くない

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
「君には失望したよ。ミレイ傷つけるなんて酷いことを! 婚約解消の通知は君の両親にさせて貰うから、もう会うこともないだろうな!」 言い捨てるような突然の婚約解消に、困惑しかないアマリリス・クライド公爵令嬢。 「ミレイ様とは、どなたのことでしょうか? 私(わたくし)には分かりかねますわ」 「とぼけるのも程ほどにしろっ。まったくこれだから気位の高い女は好かんのだ」 先程から散々不満を並べ立てるのが、アマリリスの婚約者のデバン・クラッチ侯爵令息だ。煌めく碧眼と艶々の長い金髪を腰まで伸ばした長身の全身筋肉。 彼の家門は武に長けた者が多く輩出され、彼もそれに漏れないのだが脳筋過ぎた。 だけど顔は普通。 10人に1人くらいは見かける顔である。 そして自分とは真逆の、大人しくか弱い女性が好みなのだ。 前述のアマリリス・クライド公爵令嬢は猫目で菫色、銀糸のサラサラ髪を持つ美しい令嬢だ。祖母似の容姿の為、特に父方の祖父母に溺愛されている。 そんな彼女は言葉が通じない婚約者に、些かの疲労感を覚えた。 「ミレイ様のことは覚えがないのですが、お話は両親に伝えますわ。それでは」 彼女(アマリリス)が淑女の礼の最中に、それを見終えることなく歩き出したデバンの足取りは軽やかだった。 (漸くだ。あいつの有責で、やっと婚約解消が出来る。こちらに非がなければ、父上も同意するだろう) この婚約はデバン・クラッチの父親、グラナス・クラッチ侯爵からの申し込みであった。クライド公爵家はアマリリスの兄が継ぐので、侯爵家を継ぐデバンは嫁入り先として丁度良いと整ったものだった。  カクヨムさん、小説家になろうさんにも載せています。

殿下はご存じないのでしょうか?

7
恋愛
「お前との婚約を破棄する!」 学園の卒業パーティーに、突如婚約破棄を言い渡されてしまった公爵令嬢、イディア・ディエンバラ。 婚約破棄の理由を聞くと、他に愛する女性ができたという。 その女性がどなたか尋ねると、第二殿下はある女性に愛の告白をする。 殿下はご存じないのでしょうか? その方は――。

真実の愛は水晶の中に

立木
恋愛
学園の卒業を祝うパーティーの最中、レイシア・マレーニ侯爵令嬢は第三王子とピンク髪の女、その取り巻きたちによって断罪されようとしていた。 しかし断罪劇は思わぬ方向へ進んでいく。 ※「なろう」にも重複投稿しています。

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。