妹の初恋は私の婚約者

あんど もあ

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後編

 そう思っていたのに。
「何故、そなたもそなたの父も私の申し込みを疑う。口先の言葉が信じられないと言うのなら、私は王位継承権を捨てよう」
「それほどのお覚悟ですか……!」
 会場にどよめきが広がります。なんて爆弾発言してくれてるんでしょう。

「……分かりました。婚約破棄を受け入れますわ」
「カミーユ……。すまない」
「いいえ。おめでとう、ジョフロア」
「姉様……」
 あり得ないと思っていた妹の初恋が叶った…! 私とジョフロアは手を取り合う。

「ここに宣言する! 私は、このアストリエ侯爵家 長男 ジョフロアと婚約する!」

 一瞬の沈黙の後、
「長男ーーーーーー?!」
という皆の叫びが会場を揺らしました。



「殿下! 何をお考えなのですか!」
「わが国では男同士の婚姻は許されませんぞ!」
 殿下が、興奮した貴族たちに囲まれています。
「なら、法を変える。変えられなければ、生涯婚約者でいればいい事だ」
「そうはまいりません!」
 ……仕事面ではやたら優秀な殿下に、口では勝てないでしょうねぇ。

 私とジョフロアの事は、声をかけたいけどためらっている令嬢たちが遠巻きに見ています。

 弟として生まれたジョフロア。鬼神と言われた将軍の名前をいただいたのに、幼い頃は病弱で、丈夫に育つまじないに女の子の格好をさせていたので、キャシーと遊ぶ姿は姉妹のようでした。
 やがて健康になり男の子の格好になったのですが、本人はそれを歓迎していないのが分かりました。戸惑っているのかと見守っている間に、目に見えて元気が無くなり、とうとう「無理です」と泣き出して私と両親は驚きました。

 自分は男の子として生きられない。周りに「男の子なんだから」「嫡男なんだから」と言われるのがつらい。自分は期待に応えられない。
「こんなでごめんなさい」
 そう言うあなたに、私たちは何としてもあなたを守ると決めたのですよ。

 こちらをうかがっている令嬢たちに、こちらに来るように手を振ります。
 恐る恐る近づいてきた人たちの中で、親しくしている伯爵令嬢が
「ジョフロア様は……、男性なのに『妹』なのですか?」
と、皆を代表して尋ねます。
 殿下が最初に聞いた事と同じ事を聞きますのね。
「この子が妹でなくて何ですの?」
 笑顔で答えました。



 ……本当は、最初の頃はジョフロアがいつか男の子に戻るだろうと思ってましたのよ。女の子の姿は、幼い頃の微笑ましい思い出になるのでは、と。
 でも、あなたが殿下に、男性に恋をしたのに気付いた時に分かったんです。あなたは婚約者よりずっと大切な私の妹なのだ、と。

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