1 / 1
近すぎて見えない物
しおりを挟む
爽やかな朝、王立学園の馬車停めには大きな衝撃が走っていた。
王家の紋章を付けた馬車から降りたエルリック王子に手を差し伸べられて鼻高々と降りてきたのは、マーリン・ミルフォード男爵令嬢。
『最近、王立学園で人の目もはばからずに密着しているのが話題になっていたが、とうとう一夜を共にしたのか』
『身分を弁えぬ恥知らずな女め、殿下を身体で篭絡したか』
『やだ、殿下の寵愛を受けたなら、あんな女でもそれなりの立場の対応をしなくちゃいけないじゃない』
周りの非難の目に遠慮することなく、マーリンはエルリックの腕に絡みついて歩き出すが、すぐに足を止めた。エルリックの前に、エルリックの婚約者であるシルビア・アモン公爵令嬢が現れたからだ。
「おはようございます。エルリック様」
何事も無いような優雅な態度に、ついエルリックも挨拶を返してしまう。不機嫌になってエルリックの足を早めさせようとするマーリンにも、シルビアは優しく声をかけた。
「お勤めご苦労様」
『彼女は王家が用意した娼婦だったのか!!』
周りは一斉に誤解した。
『私の相手をしたのは仕事だったのか!』
エルリックは誤解した。
『私を誘ったのって、商売女と思っていたからなの?』
マーリンも誤解した。
笑顔で去るシルビア。
シルビアは何もしていない。むしろエルリックとマーリンの邪魔をしないよう周りに働きかけてた。
なので、エルリックがマーリンを寝室に招いて一夜を過ごしても、朝に一緒の馬車で登校しても、反対する者などいなかった。だから二人はそれを不自然だと気付いていなかった。
だが、今気が付いた二人は、お互いを疑い、疑心暗鬼になるだろう。
誰も気づいていない。
誰にも見えていない。
あまりに堂々とした悪意が。
王家の紋章を付けた馬車から降りたエルリック王子に手を差し伸べられて鼻高々と降りてきたのは、マーリン・ミルフォード男爵令嬢。
『最近、王立学園で人の目もはばからずに密着しているのが話題になっていたが、とうとう一夜を共にしたのか』
『身分を弁えぬ恥知らずな女め、殿下を身体で篭絡したか』
『やだ、殿下の寵愛を受けたなら、あんな女でもそれなりの立場の対応をしなくちゃいけないじゃない』
周りの非難の目に遠慮することなく、マーリンはエルリックの腕に絡みついて歩き出すが、すぐに足を止めた。エルリックの前に、エルリックの婚約者であるシルビア・アモン公爵令嬢が現れたからだ。
「おはようございます。エルリック様」
何事も無いような優雅な態度に、ついエルリックも挨拶を返してしまう。不機嫌になってエルリックの足を早めさせようとするマーリンにも、シルビアは優しく声をかけた。
「お勤めご苦労様」
『彼女は王家が用意した娼婦だったのか!!』
周りは一斉に誤解した。
『私の相手をしたのは仕事だったのか!』
エルリックは誤解した。
『私を誘ったのって、商売女と思っていたからなの?』
マーリンも誤解した。
笑顔で去るシルビア。
シルビアは何もしていない。むしろエルリックとマーリンの邪魔をしないよう周りに働きかけてた。
なので、エルリックがマーリンを寝室に招いて一夜を過ごしても、朝に一緒の馬車で登校しても、反対する者などいなかった。だから二人はそれを不自然だと気付いていなかった。
だが、今気が付いた二人は、お互いを疑い、疑心暗鬼になるだろう。
誰も気づいていない。
誰にも見えていない。
あまりに堂々とした悪意が。
413
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
病弱令嬢…?いいえ私は…
月樹《つき》
恋愛
アイゼンハルト公爵家の長女クララは生まれた時からずっと病弱で、一日の大半をベッドの上で過ごして来た。対するクララの婚約者で第三皇子のペーターはとても元気な少年で…寝たきりのクララの元を訪ねることもなく、学園生活を満喫していた。そんなクララも15歳となり、何とかペーターと同じ学園に通えることになったのだが…そこで明るく元気な男爵令嬢ハイジと仲睦まじくするペーター皇子の姿を見て…ショックのあまり倒れてしまった…。
(ペーターにハイジって…某アルプスの少女やんか〜い!!)
謎の言葉を頭に思い浮かべながら…。
このお話は他サイトにも投稿しております。
お前が産め!
星森
ファンタジー
結婚して3ヶ月、夫ジュダルから突然の離婚宣言。
しかし妻アルネは、あっさり「はい、いいですよ」と返答。
だがその裏には、冷徹な計画があった──。
姑ロザリアの暴走、夫ジュダルの迷走、義父バルドランの混乱。
魔方陣が光り、契約精霊が応え、屋敷はいつしか常識の彼方へ。
そして誕生するオシリーナとオシリーネ。
「子供が欲しい? なら、産めばいいじゃない」
冷静沈着な契約者アルネが、家族の常識を魔法でぶち壊す!
愛も情もどこ吹く風、すべては計画通り(?)の異色魔法家族劇、ここに完結。
⚠️本作は下品です。性的描写があります。
AIの生成した文章を使用しています。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺迷音
恋愛
分厚い眼鏡と、ひっつめた髪を毛糸帽で覆う女性・カレン。
彼女はとある想いを胸に北へ向かう蒸気機関車に乗っていた。
王都から離れてゆく車窓を眺めながら、カレンは夫と婚姻してから三年という長い時間を振り返る。
その間、夫が帰宅したのは数えるほどだった。
※ご覧いただけましたらとても嬉しいです。よろしくお願いいたします。
私の夫は妹の元婚約者
彼方
恋愛
私の夫ミラーは、かつて妹マリッサの婚約者だった。
そんなミラーとの日々は穏やかで、幸せなもののはずだった。
けれどマリッサは、どこか意味ありげな態度で私に言葉を投げかけてくる。
「ミラーさんには、もっと活発な女性の方が合うんじゃない?」
挑発ともとれるその言動に、心がざわつく。けれど私も負けていられない。
最近、彼女が婚約者以外の男性と一緒にいたことをそっと伝えると、マリッサは少しだけ表情を揺らした。
それでもお互い、最後には笑顔を見せ合った。
まるで何もなかったかのように。
甘そうな話は甘くない
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
「君には失望したよ。ミレイ傷つけるなんて酷いことを! 婚約解消の通知は君の両親にさせて貰うから、もう会うこともないだろうな!」
言い捨てるような突然の婚約解消に、困惑しかないアマリリス・クライド公爵令嬢。
「ミレイ様とは、どなたのことでしょうか? 私(わたくし)には分かりかねますわ」
「とぼけるのも程ほどにしろっ。まったくこれだから気位の高い女は好かんのだ」
先程から散々不満を並べ立てるのが、アマリリスの婚約者のデバン・クラッチ侯爵令息だ。煌めく碧眼と艶々の長い金髪を腰まで伸ばした長身の全身筋肉。
彼の家門は武に長けた者が多く輩出され、彼もそれに漏れないのだが脳筋過ぎた。
だけど顔は普通。
10人に1人くらいは見かける顔である。
そして自分とは真逆の、大人しくか弱い女性が好みなのだ。
前述のアマリリス・クライド公爵令嬢は猫目で菫色、銀糸のサラサラ髪を持つ美しい令嬢だ。祖母似の容姿の為、特に父方の祖父母に溺愛されている。
そんな彼女は言葉が通じない婚約者に、些かの疲労感を覚えた。
「ミレイ様のことは覚えがないのですが、お話は両親に伝えますわ。それでは」
彼女(アマリリス)が淑女の礼の最中に、それを見終えることなく歩き出したデバンの足取りは軽やかだった。
(漸くだ。あいつの有責で、やっと婚約解消が出来る。こちらに非がなければ、父上も同意するだろう)
この婚約はデバン・クラッチの父親、グラナス・クラッチ侯爵からの申し込みであった。クライド公爵家はアマリリスの兄が継ぐので、侯爵家を継ぐデバンは嫁入り先として丁度良いと整ったものだった。
カクヨムさん、小説家になろうさんにも載せています。
二年間の花嫁
柴田はつみ
恋愛
名門公爵家との政略結婚――それは、彼にとっても、私にとっても期間限定の約束だった。
公爵アランにはすでに将来を誓い合った女性がいる。私はただ、その日までの“仮の妻”でしかない。
二年後、契約が終われば彼の元を去らなければならないと分かっていた。
それでも構わなかった。
たとえ短い時間でも、ずっと想い続けてきた彼のそばにいられるなら――。
けれど、私の知らないところで、アランは密かに策略を巡らせていた。
この結婚は、ただの義務でも慈悲でもない。
彼にとっても、私を手放すつもりなど初めからなかったのだ。
やがて二人の距離は少しずつ近づき、契約という鎖が、甘く熱い絆へと変わっていく。
期限が迫る中、真実の愛がすべてを覆す。
――これは、嘘から始まった恋が、永遠へと変わる物語。
女神様、もっと早く祝福が欲しかった。
しゃーりん
ファンタジー
アルーサル王国には、女神様からの祝福を授かる者がいる。…ごくたまに。
今回、授かったのは6歳の王女であり、血縁の判定ができる魔力だった。
女神様は国に役立つ魔力を授けてくれる。ということは、血縁が乱れてるってことか?
一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる