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前編
「エレクトラ・シーモルト公爵令嬢! 貴様とは婚約破棄だ!」
私、エレクトラは、男爵令嬢のアナ様を腕に絡みつかせて私の前にやって来た第一王子に、いきなり婚約破棄を宣言されました。
ここは王立学園の卒業パーティー会場。周りの卒業生たちは、成り行きにワクワクしています。
勝手にパーティーの余興にされた私は、かなり不愉快です。
どうやら殿下は、世間で流行の『真実の愛』に感化されてしまったようです。
もともと殿下が『真実の愛』に憧れている事は気付いていました。政略で結ばれたご自分の両親、国王陛下と妃殿下の仲が決していいものでは無かったので……。
両親と同じく政略で婚約させられた私ではなく、これから出逢う運命の女性と『真実の愛』で結ばれたい。
私とはそれなりに仲良くしてくださったのですが、内心ではそう願っているのが、見てて分かりました。
何故、私とだと幸せになれないと思うのかはよく分かりませんが。
でも、陛下夫婦の不仲の理由は、妃殿下が結婚前からの『真実の愛』の相手を忘れられないからなんですよね……。
妃殿下には幼い頃からの『真実の愛』の相手がいたのに王妃に決まってしまい、立派な王妃となるため泣く泣く別れた……、というのは舞台にもなってる有名な美しい悲恋の物語です。
そんな妃殿下が、未だに国王陛下を愛していない事は公然の秘密です。
あなたの欲しがってる「仲の良い両親」の邪魔をしてるのが『真実の愛』だというのに、なぜ『真実の愛』に夢を見られるのか、私には理解できません……。
あ、こんなだから婚約者に相応しく無いのですね。
そんな殿下が、王立学園で『真実の愛』のアナ様と出会いました。
それはいいのですが、『真実の愛』を見つけたら『政略の相手』を辱めなくてはならない、とでも決まっているのでしょうか、私への扱いが酷くなりました。
エスコートを断るのならまだしも、約束をしておいてすっぽかし、アナ様をエスコート。
二人で会う約束にはアナ様を同伴して現れ、私は蚊帳の外。
普通に婚約を解消をすればいいのに、『真実の愛』とは無駄なエネルギーを使いたいものなのですね。
婚約者としての愛情なんて、枯れ果てましたわ。
などと考えていたら、私は殿下とアナ様を中心に、二十人くらいの男女生徒に取り囲まれている事に気付きました。まるで、逃がさないと言うように。
輪の外にいる友人たちが「助けようか」と目線で聞いてきますが、放っておくように首を振ります。何をするのか見極めたいですから。
「エレクトラよ、私は『真実の愛』に目覚めた! 私の愛はこのアナ・スェルト男爵令嬢のものだ!」
取り囲んだ人たちが、嘆く私を見ようとニヤニヤしてますが、そんなの、殿下が会場にアナ様をエスコートして入場した時に分かってましたわ。
何より、私が大好きだった殿下の長い黒髪が今日はバッサリと切られて短髪になっています。これで今日何があるか、察することが出来ない人はいないでしょう。
ただ、婚約破棄するにもマナーがあると思うのです。なぜ皆の見世物にならないといけないのです?
悲しさより怒りが湧いてきます。
「貴様は自分の考えが正しい、『真実の愛』などくだらない、と決めつける! そんな女とは、もう話す事は無い! 二度と私の前に姿を見せるな!」
なるほど、どうせ決めつけるから話し合いたくないのでこういう手段に出た、と言うのですね。
確かに、『真実の愛』を免罪符に後先を考えず自分の感情のまま行動し、親の決めた婚約をナンセンスとする頭の軽い人たちに呆れていましたわ。……まさか、自分の婚約者もそっちの人だったとは。
「私は、このアナを妻とする!」
と、アナ様の肩を抱き寄せて宣言すると、観衆は歓声をあげて拍手喝采です。幸せそうに微笑むアナ様。
何ですか、この三文芝居。
とりあえず、のってみましょうか。
「殿下。最後に、一言だけよろしいでしょうか……」
殿下が鷹揚に頷く。「お幸せに」とか言って、惨めに去って行くとでも考えているのでしょう。
では、言わせてもらいましょう。
「私が『真実の愛』を嫌いなのは、私の婚約者が『真実の愛』で生まれた不貞の子だったからです。私は、殿下にそんな宿命を背負わせた『真実の愛』を許せません」
会場から音が消えた。
私、エレクトラは、男爵令嬢のアナ様を腕に絡みつかせて私の前にやって来た第一王子に、いきなり婚約破棄を宣言されました。
ここは王立学園の卒業パーティー会場。周りの卒業生たちは、成り行きにワクワクしています。
勝手にパーティーの余興にされた私は、かなり不愉快です。
どうやら殿下は、世間で流行の『真実の愛』に感化されてしまったようです。
もともと殿下が『真実の愛』に憧れている事は気付いていました。政略で結ばれたご自分の両親、国王陛下と妃殿下の仲が決していいものでは無かったので……。
両親と同じく政略で婚約させられた私ではなく、これから出逢う運命の女性と『真実の愛』で結ばれたい。
私とはそれなりに仲良くしてくださったのですが、内心ではそう願っているのが、見てて分かりました。
何故、私とだと幸せになれないと思うのかはよく分かりませんが。
でも、陛下夫婦の不仲の理由は、妃殿下が結婚前からの『真実の愛』の相手を忘れられないからなんですよね……。
妃殿下には幼い頃からの『真実の愛』の相手がいたのに王妃に決まってしまい、立派な王妃となるため泣く泣く別れた……、というのは舞台にもなってる有名な美しい悲恋の物語です。
そんな妃殿下が、未だに国王陛下を愛していない事は公然の秘密です。
あなたの欲しがってる「仲の良い両親」の邪魔をしてるのが『真実の愛』だというのに、なぜ『真実の愛』に夢を見られるのか、私には理解できません……。
あ、こんなだから婚約者に相応しく無いのですね。
そんな殿下が、王立学園で『真実の愛』のアナ様と出会いました。
それはいいのですが、『真実の愛』を見つけたら『政略の相手』を辱めなくてはならない、とでも決まっているのでしょうか、私への扱いが酷くなりました。
エスコートを断るのならまだしも、約束をしておいてすっぽかし、アナ様をエスコート。
二人で会う約束にはアナ様を同伴して現れ、私は蚊帳の外。
普通に婚約を解消をすればいいのに、『真実の愛』とは無駄なエネルギーを使いたいものなのですね。
婚約者としての愛情なんて、枯れ果てましたわ。
などと考えていたら、私は殿下とアナ様を中心に、二十人くらいの男女生徒に取り囲まれている事に気付きました。まるで、逃がさないと言うように。
輪の外にいる友人たちが「助けようか」と目線で聞いてきますが、放っておくように首を振ります。何をするのか見極めたいですから。
「エレクトラよ、私は『真実の愛』に目覚めた! 私の愛はこのアナ・スェルト男爵令嬢のものだ!」
取り囲んだ人たちが、嘆く私を見ようとニヤニヤしてますが、そんなの、殿下が会場にアナ様をエスコートして入場した時に分かってましたわ。
何より、私が大好きだった殿下の長い黒髪が今日はバッサリと切られて短髪になっています。これで今日何があるか、察することが出来ない人はいないでしょう。
ただ、婚約破棄するにもマナーがあると思うのです。なぜ皆の見世物にならないといけないのです?
悲しさより怒りが湧いてきます。
「貴様は自分の考えが正しい、『真実の愛』などくだらない、と決めつける! そんな女とは、もう話す事は無い! 二度と私の前に姿を見せるな!」
なるほど、どうせ決めつけるから話し合いたくないのでこういう手段に出た、と言うのですね。
確かに、『真実の愛』を免罪符に後先を考えず自分の感情のまま行動し、親の決めた婚約をナンセンスとする頭の軽い人たちに呆れていましたわ。……まさか、自分の婚約者もそっちの人だったとは。
「私は、このアナを妻とする!」
と、アナ様の肩を抱き寄せて宣言すると、観衆は歓声をあげて拍手喝采です。幸せそうに微笑むアナ様。
何ですか、この三文芝居。
とりあえず、のってみましょうか。
「殿下。最後に、一言だけよろしいでしょうか……」
殿下が鷹揚に頷く。「お幸せに」とか言って、惨めに去って行くとでも考えているのでしょう。
では、言わせてもらいましょう。
「私が『真実の愛』を嫌いなのは、私の婚約者が『真実の愛』で生まれた不貞の子だったからです。私は、殿下にそんな宿命を背負わせた『真実の愛』を許せません」
会場から音が消えた。
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