もうすぐ春ですね

あんど もあ

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中編

こんな日々がずっと続くと思っていたのに、ルーファス様は冬を越せずに亡くなった。長年体を騙し騙し生きていたのが、とうとう寿命に追いつかれてしまったようだ。
 葬儀の翌日、ルーファス様の代理人によって、私たち商会の従業員と領地の執務官たち、そしてジーモン一家が商会の会議室に集められた。

「これよりジーモン男爵家の相続手続きをいたします」
 期待に顔を輝かせるジーモン一家。
「ジーモン男爵家を相続するのは、養女のコレット・ジーモン嬢です」
 案の定、ジーモン一家の三人はあっけにとられた後に怒り狂った。
「いつの間に汚い手を使った!」
「汚いだなんて。一年前に国王陛下に認められてますよ。一つ、当主が虚弱で実子を望めない。二つ、身内に後継にふさわしい者がいない。三つ、私は長年当主の右腕として働いてきた。文句が出るわけないでしょう」
 七年間商会で働いて礼儀を覚え、私の立ち居振る舞いも男爵として相応しいものとなっている。
「後継なら俺がいるだろう! この孤児風情が!」
「孤児? みなさん聞きました?」
「?」
 代理人が「確かに聞きました」と言い、皆も次々と「聞きました」「聞きました」と宣言する。
「これで、私とこちらのジーモン家とは無関係、ジーモン家もそれを認識しているという事がはっきりしました。今後ジーモン家の借金の補填は一切いたしません。ジーモン家の者が商会や屋敷に押し掛けた場合、見つけ次第警備兵に突き出します」
 ジーモン家の面々が絶望的な顔になる。
 沈黙したジーモン家のおかげで相続手続きはスムーズに行った。




 手続きが終わり、一人ルーファス商会の会長室に入る。いつも私を迎えてくれた人はもういない。耳鳴りがしそうなくらいの沈黙が私を包む。
 壁に掛かったルーファス様と私の肖像画を見上げる。養子縁組をした時にお願いして描いてもらった絵だ。
「ルーファス様…、私、頑張ります」
 答えてくれないのは分かっていても、ルーファス様に話しかける。

 そこに、ドカドカという足音が聞こえ、勢いよくドアが開けられた。
 ドアの向こうには、予想通りの人が。
「ジーモン様、何の用です?」

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