真実の愛に祝福を

あんど もあ

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真実の愛に祝福を

 まあ、私と婚約破棄ですか? 
 たとえ王太子と言えど、このような舞踏会で大勢の人の前で個人的な事をおっしゃるなんて……。

 婚約破棄の理由は、お隣のミレイユ様ですか? まあ、真実の愛とおっしゃるの。
 つまり、私より真実の愛を選ぶという事でよろしいのかしら。

 ……ご決心は固いのですね。わかりました、婚約破棄を承ります。

 皆様! 真実の愛を見つけた王太子とそのお相手に祝福の拍手を!


 + + + + + + +

 
 あら、お久しぶりですわね殿下。
 はい、先日貴族院の議会で殿下の従兄弟のライアン様が王太子となり、私が婚約者としてライアン様を支える事が決定しました。これから詳しい打ち合わせに呼ばれてますの。

 殿下から王位を奪った? いえ、これは一時的な対応ですわ。
 殿下は、真実の愛のミレイユ様と婚約が認められました。結婚するのは、ミレイユ様が王太子妃としての教育を終えられたら、という条件で。
 でも、あれからずいぶん経つのにミレイユ様の王太子妃の勉強が終わりそうにありません。もし今、国王陛下に万一の事が起きたら、ミレイユ様は王太子妃としても不完全なのに王妃にならなくてはいけません。これでは国が混迷してしまいます。
 なので、非常時には私とライアン様が王位に就けるようにこれを決めたのです。
 もちろん、ミレイユ様が王太子妃として相応しい教養を身に付けたら、私たちは喜んで王太子の座を殿下にお返ししますわ。
 国王陛下がご健勝な内にお願いしますわね。

 ミレイユ様の勉強が終わるまでどれくらいかかるか、ですか? ご自分の婚約者ですのに、知りませんの? ミレイユ様が登城するたびに勉強より長い時間お二人で過ごしてらっしゃると聞いてますのに。
 ええと、嫉妬とかでは無いのですが。私にはライアン様がいますし。

 ミレイユ様の勉強が終わるのは……、あと10年というところでしょうか。頑張れば一、二年縮まるかもしれません。
 ミレイユ様が優秀ではないという事ではありません。ただ、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていない方が王族レベルの振る舞いと教養を身に付けるには道のりが遠すぎるのです。
 特に、我が国の王太子妃は近隣三国の歴史と文化と言語をマスターしなくてはならないので大変でしょうね。これは、四カ国の均衡を崩さないために必須ですから。もし、王太子妃が友好の場で相手国をちゃんと理解していなければ、「我が国を軽んじられた」と憤慨ふんがいするか、愚か者と侮られてしまいますもの。
 王家や私の公爵家などでは、友好のために嫁いだり嫁いできたりで、幼い頃から親しんでいる親戚の国ですが、ミレイユ様には縁もゆかりも無い国ですもの、ご苦労なさるでしょうね。

 10年も待てるか!、と私に言われましても……。

 だから、婚約破棄の時に私でなくていいのかとちゃんと確認したじゃありませんの。
 全ては殿下が無計画で無配慮な婚約破棄で私を排除したからです。

 あ、今更婚約破棄は許されませんよ。私と婚約破棄をして結ばれた若き王子と美しい男爵令嬢の「真実の愛」は国中が感動した愛の物語ですから。
 はあ? 男爵令嬢ごときなんとでも処分できる? 
 真実の愛の相手に何クズな事をおっしゃってますの。

 はっきり言わせていただきますと、その場合処分されるのは殿下の方です。

 何を驚いているんです? ミレイユ様は世間の話題を独占するシンデレラガール。一挙手一投足を全国民が注目しています。 彼女に何かあったら、王家が手をまわしたと思われて国の信憑しんぴょうが失われる事になるに決まってるじゃないですか。今の彼女の存在は、殿下より上と言えますわ。

 ですので、婚約破棄は諦めてくださいな。

 それから、お気づきでは無いようですが、ミレイユ様の方から「婚約を破棄したい」と思った場合も殿下が処分されますので。
 当然でしょう? 真実の愛のはずが婚約破棄で泥沼破局、その後王子は三度目の婚約をしました、なんて外聞の悪い。
 突然の病で王子が亡くなったという話の方が真実の愛の体面が保てるではありませんの。きっと「悲劇の王子」として伝説になりますわ。

 それがお嫌でしたら、ミレイユ様が王太子妃教育を諦めずに進めるよう、がんばってご機嫌を取って褒め上げておだて続けてくださいな。

 殿下のお命は、ミレイユ様次第ですのよ。

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