ホリー・ノイ・ストーリー

ナツメ・カオ

文字の大きさ
1 / 1

掟のある幻の島

しおりを挟む
この大陸・マスターマインド大陸には、ザヤ国、ローム国、エクスシア国、テーンモール国などの歴史ある国、島が集う大陸。その大陸から何百キロ離れた島・ディバイン島。かつて、エーアスト島とよばれ、島自体が海の上を動き続けた伝説の島。

エーアスト島、この島の上には国がある。ノイ国。そこにはノイ族がいる。
その島は、ホーリージャイアント・ジェリーフィッシュというジェリーフィッシュの中でも大きく、伝説の生き物で、聖なる巨大クラゲと、いわれている。大きさは、面積は三百七十九平方キロメートルとも言われ、大陸一つ分の大きさに匹敵するという。このジェリーフィッシュは薄い青色で、触手が、少し赤みがあることで有名。そして、人の心に話かける幻のジェリーフィッシュとも言われる。だが、言葉がわかるのは、ノイ族と、そのジェリーフィッシュが認めた人だけ。
この国には掟があった。それは海を世界一週すると、また、元の場所に帰る。つまりUターンするのだ。そして、掟とはホーリージャイアント・ジェリーフィッシュがUターンする際の労働力として、国の人を一人生け贄にすることで、元の場所へと動き始める。ただ、生け贄を頂くのは、元の場所に着いてからになる。ジェリーフィッシュ本人が人々に語りかけ、ホーリージャイアント・ジェリーフィッシュが生け贄を選ぶことができる。
そういった掟がある。
ノイ族の人々はその掟に恐怖心があった。
人の命で、島が、ジェリーフィッシュが動いている。そんな事を思うと、悲しくなっていた。生け贄になるたびに墓地も造らないといけない。
人々は、そのホーリージャイアント・ジェリーフィッシュを悪魔の巨大クラゲと呼んだ。だが、逆らうことは出来なかった。
 ある日、その「 掟 」を失くしたと言われる一人の偉大なる男の子がいたという。しかも13歳の子供だったと伝説にある。
 この誰もが望んだ、下らない、命を粗末にする
「 掟 」から終止符をうった男の子、名をレオ・シャガーヴァルケ。

綺麗なシャガに蜜を探しにとまった蝶々。
レオは母・ローゼ、父・ライナー、妹・アンネと共に、シャガを摘みにきた。シャガはアヤメ科の植物。湿り気のある森林に多く生息する。シャガは扁桃腺炎などを抑える作用があり、薬草として用いられるので、薬草として作るためシャガを摘みにきた。
「 お母さん!みて!あったよ! 」
妹のアンネははしゃいでいた。元気よくお母さんに声を掛けた。
「 はいはい、まちなさい 」
それに母は答えた。
妹のアンネは扁桃腺炎の病気に掛かっているので、シャガは特効薬ということになる。
それで、家族は幸せになる。
シャガはほかの役割や使い道もある。
レオたちの家族にとって、無くてはならないものになっていた。レオには夢があった。この島を出て植物学者になり、植物を研究し妹や病に苦しむ人々を治癒すること。
だが、レオたちは、まだ知らなかった。想像も、考えたくもないことが起きてしまった。この幸せがぐちゃぐちゃになることを。

そんなある日のことだった。ノイ国を乗せたホーリージャイアント・ジェリーフィッシュが世界一週を果たし、元のマスターマインド大陸の東にUターンする。そして、動き始めた。
人々は恐れた。レオたちも恐れていた。
時間よ過ぎないでくれ、このまま時よ止まってくれ、などと願いをいう者もいた。
次は誰が「 掟 」の生け贄になるかと、考えるだけで怖い。皆は生きている実感が持てなかった。ホーリージャイアント・ジェリーフィッシュの移動速さは他のクラゲと違って、速い。世界一週には二年間の速さで一週しUターンをし元の場所に帰る。それ繰り返す。つまり、二年で一人、命がなくなる。なんと不適合な世のなかなのか、この国の人々には最悪な出来事だ。ホーリージャイアント・ジェリーフィッシュは大人、子供、関係なく生け贄にする。綺麗な生き物には毒がある。というように、この生き物も綺麗なのに、人の命を喰らう化け物だ。

そして、遂にその日がおとずれる。Uターンは成功し、語りかけた。

「 “汝、我の掟において、人々、命の選択 生け贄を 我に与えよ。 もとにより、我が 生け贄を選択する“ 」

ホーリージャイアント・ジェリーフィッシュはそう人々に語りかけた。

皆は愕然としていた。今日に限って、本人ではなく、人々たちが命の選択をする。 

「 “選ばれし、生け贄は レオ シャガーヴァルケ家のもの レオよ、母 父 兄弟よ 命の選択をせよ“ 」

なんと、レオが家族の誰かを選び生け贄に捧げろということを告げた。

レオたちは、悲しくなった。

すると、レオの目の前にいた家族が消えた。

「 “レオよ 我のもとへ ホーリーエンシェントに“ 」
ホーリーエンシェントとは、古くからある儀式をするための遺跡だ。

レオは向かった。走った。レオはホーリーエンシェントの前の草原で転けてしまった。レオは泣いた。悲しく、虚しくて、苦しくて、胸が張り裂けそうになった。
「 どうしてだよ! なんでおれらから幸せを奪うんだ! 応えろ! 悪魔! 」

その声は人々の心にも届いていた。
「 レオ...無駄だよ、あいつは、おれたちのことを虫けら同然だと思ってんだ 」

レオは怒った。ホーリーエンシェントの中に入ると、突然、光に襲われ、青い透き通った海のようなところにいた。呼吸も、声もでる。けど、あたりは、ホーリージャイアント・ジェリーフィッシュの群れが泳いでいた。

すると、その一匹がレオの前に。
「 “さあ、レオ 選べ 母か? 妹か? 父か?
 生け贄は誰だ?“ 」

すると、レオは険しい顔つきで話した。
「 ふざけるな!この悪魔! いいか、家族は生け贄になんてしない! 返せ! 」

「 “それは、できぬ願いだ もう一度考えてこの地に踏み出せ 差もなくば、全員喰う“ 」
そういうと、レオを外に出した。

レオは草原で倒れていた。もう一度考えた。
何度も、何度も、どうしたらいいのかわからない。
そんな思いで、近くに咲いていたシャガを採り、レオは眼を閉じて、願いを込めた。涙を流しながら。
「 神様、お願いです。こんな掟、世界なんてもう嫌だ 助けてくれ... 俺が生け贄になる だから だから 家族をどうか 助けてください....助けてください.... 」

レオの涙がシャガに落ちた。次の瞬間、シャガが光始めた。
レオは、驚いている。
すると、目の前が光に包まれる。
レオは先ほどの海の中にいるような感覚だった。けど、呼吸もできる、苦しくない、それどころか、凄く涼しく、優しい風の中にいるようだった。
そこに、先ほどのホーリージャイアント・ジェリーフィッシュが現れた。
「 “汝の願い 聞き入れよう。ただし、おぬしが生け贄と掟の崩壊、そして、家族の幸せ 聞き入れよう“ 」
そういうと家族を解放した。なんと、レオの願い、奇跡が起こったのだ。
レオは家族と掟を無くすため、生け贄になることを決意した。
「 “最後に、言い残したことはあるか?“ 」
「 最後に家族に一言だけ 」
「 “よかろう“ 」
そういうと、光の中で、家族に語りかけた。
「 ごめん、ありがとう.... 」
「 大丈夫... みんなの心の中でいきてるから 」
それを、聴いた、父、母、妹は泣いた。いつまでも。
次第にレオの身体は消えていった。
その姿を見たホーリージャイアント・ジェリーフィッシュは思った。
「 “この国のために作った掟、我は少し厳しすぎたのかも知れぬ“ 」
そう慈悲したという。
ホーリージャイアント・ジェリーフィッシュは姿を消した。島を海に置いて、関わりを消した。

数年後。
ホーリーエンシェントの中には一つの墓が建てられている。

 「 ー 偉大なる13歳の少年 聖なる英雄
       レオ・シャガーヴァルケ
             ここに眠る ー 」
という名が刻まれている。

人々はレオに感謝した。

レオは夢も自分の幸せをおいて、家族と島の掟を壊し、終止符をうったのだ。
この話はいまでも語り継がれる伝説の民話。

そして、何百年以上もたち、国も滅び、ノイ族は幻化した。だれも見ることはできない幻の民族・ノイ国のノイ族。

そして、後にこの伝説が広まり、他国の王の埋葬、王や英雄の罪の島流し、ザヤ帝国王・トビアス王が島流しにされた島。
この伝説で、エーアスト島から改名し、神聖なる島、ディバイン島と呼ばれ、選ばれたものたちの聖なる神聖な島と言われる事になった。
あの時、なぜかホーリージャイアント・ジェリーフィッシュがレオの願いを聴いた。そして、一つの奇跡が起きた。
これは、マスターマインド大陸のエーアスト島で起きた、掟に歯向かった、一人の少年レオの幻の伝説物語である。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

私は逃げ出すことにした

頭フェアリータイプ
ファンタジー
天涯孤独の身の上の少女は嫌いな男から逃げ出した。

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

真実の愛のおつりたち

毒島醜女
ファンタジー
ある公国。 不幸な身の上の平民女に恋をした公子は彼女を虐げた公爵令嬢を婚約破棄する。 その騒動は大きな波を起こし、大勢の人間を巻き込んでいった。 真実の愛に踊らされるのは当人だけではない。 そんな群像劇。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

修道院送り

章槻雅希
ファンタジー
 第二王子とその取り巻きを篭絡したヘシカ。第二王子は彼女との真実の愛のために婚約者に婚約破棄を言い渡す。結果、第二王子は王位継承権を剥奪され幽閉、取り巻きは蟄居となった。そして、ヘシカは修道院に送られることになる。  『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿、自サイトにも掲載。

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

『伯爵令嬢 爆死する』

三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。 その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。 カクヨムでも公開しています。

処理中です...