【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん

文字の大きさ
72 / 233

71:カルベルス王国の滅亡~⑬~(過去編)

しおりを挟む
 その少し前

 「早く!早く用意しろ!!!」

 「お父様、一体どうなさったの?」

 ユリアンヌは怪訝な表情をした。

 「いいから!早く逃げるんだ!!と、とにかく急いでアーベンレック国に向かうのだ!あそこだったら、匿ってくれるだろうし、そこなら手出しできないはず・・・」

 ロレンシオ王は必死なあまり、ブツブツと言ってはいたが、アーベンレック国が匿ってくれる保証もカイエルが手出しできないというのも、現実逃避がしたいが為の妄想にすぎないということを彼はわかっていなかった。

 「お父様、一体・・・」

 ユリアンヌ王女は、父ロレンシオ王の様子が尋常でないことはわかった。その様子が、何かに怯えているということもよくわかった。

 「お父様、理由を言ってくれないとわからないわ。アロイス王子の国に行くにしろ、あまりにも急すぎよ?」

 「な、何を悠長なことを言っておる!殺されるぞ!!」

 ロレンシオ王の必死の形相と「殺される」という物騒な単語がユリアンヌの恐怖心を一瞬にして煽った。

「お、お父様、殺されるってどういうこと?」

だが、その時、大きな音がした。

 「塔が竜に破壊されたぞーー!!」
 「うわ――逃げろー!!」

 その時、城中に響き渡る声がした。

 『待たせたな。』

 「ひ、ひぃいいいいい!!!」

 ロレンシオ王はわかった。カイエルの声だと。

 「な、なんだこの声は?」
 「一体どこから聞こえてくるんだ?!」

 『さぁ、どうしてエレノアが死んでしまったのか、教えてもらおうか?何故エレノアが死ななければならなくなったのか?俺はこう見てもちゃんと平等を心掛けていてな。片方だけでなく、お前の言い分も聞いてやると言ってるんだ。優しいだろう?』

「え?エレノア死んじゃったの?」

 ユリアンヌは驚いたが、

「え、やだ。じゃどうするのよ。代わりにペルニツァ王国にお嫁に行ってもらえないじゃない。役にも立たずに死んじゃったのね、ホント使えない女だわ。」

 エレノアの訃報を聞いても、ユリアンヌの態度は傲慢で思いやりに欠けるものであった。

 「ば、ばか!」

 ロレンシオ王は慌てて、ユリアンヌ王女を窘めようとしたが、時すでに遅し

 『ほぅ・・・不遜な輩は1匹ではなかったか・・・』

 「ち、違うんです。ユリアンヌは、その!!」

 ロレンシオ王は必至で取り繕うとしていたが、

 『さすがお前の娘だな。と言いたいところだが、エレノアという心優しい娘もいた。育ちの差がこうもでてるとはな。ふむ、聞くまでもない。やはり、神父の言ったことは正しかったようだ。』

 「だ、誰よ?!この私に上から物を言うなんて、顔を見せないさい!」

 ユリアンヌは声の主のことは知らなかったので、あくまで傲慢な物言いであった。

 『顔を見たいのか、いいだろう。』

 ドゴォオオオオオン

 「キャーーーーー!!」
 「うわぁああああああ!!」
 「いやぁーーーーー!!!」

 すると突如ものすごい音と共に、城の天井が無くなってしまった。カイエルが塔の上部分をなぎ倒してしまったのだ。あまりの突然のことに城の住人は悲鳴を次々にあげていた。

そして、ピンポイントで狙ったかのように、

 『女・・・死者に鞭うつ態度では看過することはできんな。』

 「りゅ、竜?!なんで、なんでこんな化け物が!」

 ユリアンヌは驚愕した。城のなくなった天井から見える黒い竜があまりにも禍々しく、すぐにでも逃げたかったが、恐怖でユリアンヌは泣きながら後ずさるのが精一杯であった。他の者は、王女であるユリアンヌを置いてけぼりに逃げていった。

 『父親はお前を見捨てたようだな。』

 「え?え?え?」 

 ユリアンヌが振り返ると、父、ロレンシオ王は既に逃げてしまっていた。

 「お父様、ひどい!!」

 ユリアンヌはまさか父親である、ロレンシオ王が自分を置いていくなどと思ってもみなかっただけに、ショックを受けていた。

 『大丈夫だ、安心しろ。』

 「え、じゃ、許して・・・」

 ユリアンヌは助かったとばりに、ホッとしたのも束の間、カイエルは鼻で笑い、

 『許す訳ないだろう、お前が元凶なのに。あとで、必ず父親もお前の元に連れていってやる。安心しろ。』

 「え?」

 その瞬間、カイエルの鋭い爪の攻撃で、ユリアンヌの首と胴体はあっさりと切り離されてしまった。





 
 その頃ロレンシオ王は馬車で、必死に逃走していた。

 「早く、早く!!アーベンレック国に向かうのだ!」

 ロレンシオ王は、身近にあった金目の物を取り急ぎ持って、馬車に乗り、城から離れていた。初めは娘のユリアンヌがいれば、なんとかアーベンレック国に迎えて貰えると算段したが、ユリアンヌに事情を説明している時間はないと思い、ユリアンヌを置いて逃げてきたのだ。そして城にいた者には、時間稼ぎのために竜に総攻撃をするように命令をしていた。

 カイエルは、城の兵士から弓やら攻撃魔法や砲撃等で多様な攻撃を一身に受けてはいたが、カイエルは自身に結界を使っていたので、カイエルを傷つけることは敵わなかった。ロレンシオ王が逃げたことはわかっていたが、追う必要性については考えていなかった。いや、考える必要がなかったからだ。

 「何も、効いていないぞ!」
 「こんな化け物どうやって戦えって・・!」
 「王をお守りするんだ!」

 カイエルは攻撃してくる輩をみて、何も知らず滑稽だなと思っていた。元凶であるユリアンヌを瞬殺したが、カイエルの心は何も晴れなかった。カイエルは自分の傍で浮いている結界に包まれエレノアを見た。カイエルの目には涙が溢れていた。エレノアとの思い出を思い返していたのだ。一緒に通った教会と城までの往復の道程、教会で神父や子供たちと交流したり遊んだり、たったそれだけの事だったけど、カイエルにはかけがえのない時間だったのだ。自分の名前を呼んでくれて、微笑んで・・・・・だけどもうそのエレノアは・・・・今目の前にいるエレノアは、もう笑いかけてくれることはないのだ。 

 『ガァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』

 カイエルの咆哮が、国中に響き渡った。

 『・・・エレノアを、俺の番を蔑ろにして、死なせてしまうような、こんな国、無くなってしまえばいい!!!』

 カイエルは4枚の翼でその場を飛び立った。そして下を見下ろしながら、呪文のようなものを唱えた。

 すると、国中の至る所に、いきなり地響きがあちこちで鳴り響いていた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォ・・・

 「な、なんだ、一体?」
 「え・・・地震?」

 建物があちこちで突如崩れ落ちて行った。 

 「せ、戦争がおこったのか?」
 「な、一体何が起こっているんだ――」

 「!地面が、地面がのめり込んでいるんだ!!!」 

 カイエルの呪文に寄って、地面が液状化してしまったのだ。だから建物は耐えられなくなり、そして人も・・・


 そしてロレンシオ王は、

 「い、一体、何が起きたのだぁああ!」

 地面が揺れる中、ロレンシオ王の馬車は特にひどい液状化に飲まれてしまい、そのま地中へ引き摺り込まれてしまったのだ。

 それは大規模な蟻地獄のようであった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。

木山楽斗
ファンタジー
宿屋で働くフェリナは、ある日森で卵を見つけた。 その卵からかえったのは、彼女が見たことがない生物だった。その生物は、生まれて初めて見たフェリナのことを母親だと思ったらしく、彼女にとても懐いていた。 本物の母親も見当たらず、見捨てることも忍びないことから、フェリナは謎の生物を育てることにした。 リルフと名付けられた生物と、フェリナはしばらく平和な日常を過ごしていた。 しかし、ある日彼女達の元に国王から通達があった。 なんでも、リルフは竜という生物であり、国を繁栄にも破滅にも導く特別な存在であるようだ。 竜がどちらの道を辿るかは、その母親にかかっているらしい。知らない内に、フェリナは国の運命を握っていたのだ。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。 ※2021/09/03 改題しました。(旧題:刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。)

処理中です...