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206:そして終息へ
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(え・・・と、その1回しかしていないんだけど・・・)
セレスティアはかなり戸惑っていた。確かに身に覚えはあるが、それも直近のことで、正直なところ、そういう行為であることは承知していたが、あの時は子供が欲しくてした訳ではなく、結界解除を急いでいたからだ。そんな経緯であることから、セレスティアは複雑な心境であった。
「え?嘘だろ?姉貴本当なのか?」
カイエルは信じられないような表情で、
「冗談でこんなこと言わないわ。私にはわかるもの。知ってるでしょ?」
『竜の祖』の女性陣には、女性の受胎の有無がわかるのだ。
「!」
カイエルはセレスティアに振り向くと、満面の笑みであった。
「やったな!セレスティア!!」
「え?」
カイエルはイシュタルのお墨付きをもらい、屈託のない笑みで喜んでいた。そしてセレスティアの脇下を両手で持って、クルクルと回り始めた。
「カ、カイエル?」
「セレスティア!俺達の子供だ!できたんだぞ!!俺達の子供が!」
カイエルは複雑な心境のセレスティアと違い、心底嬉しそうに、そして珍しくはしゃいでいた。(まさかこんなに喜んでくれるなんて・・・)想定外ではあったけれども、カイエルの嬉しそうな顔を見たら、セレスティアの複雑な心境であったものは、いい方向に浮上した。
「『竜の祖』と人間の子だと?」
イリスには聞き捨てならなかった。そう自身が混血児であったから。
「はっ!混血児の末路は哀れなモノだ!わざわざ災いを作るとは滑稽なことだ!」
イリスは自身の経験から、辛辣な言葉を放った。
「・・・・本当に可哀想な人ね。」
先ほどセレスティアの言葉が再度紡がれた。そしてイリスに向けたセレスティアの眼差しは憐れむ同情的なものであった。
「!さっきから可哀想可哀想などと!お前に蔑まされる謂れなどない!!」
イリスにはセレスティアの言葉も向けられる視線も屈辱的だった。だがセレスティアは続けた。
「貴方が生まれた時はわからないけれど、きっと今まで愛情を感じて生きてこなかったのでしょうね。だから可哀想だと言ったのよ。」
「なんだと?!そんなものが何だっていうんだ!」
イリスは今にも噛みつきそうな顔をセレスティアに向けていた。
「そんなもの・・・ね。だから自分の痛みには敏感でも、他人の痛みには鈍感なのよ。」
「う、うるさ、グブッ!!」」
イリスがまた言い返そうとしている時、イリスの顔面は床にのめり込んだ。
「てめぇ、もう黙れ。てか、俺の番とそれ以上口聞いてんじゃねぇ。」
イリスはラーファイルとダンフィールに押さえつけられてるところを、カイエルに足で頭を踏まれてしまった。
「ぐ、ぐ、ぐっ~~」
「イリス様!!」
イリスの安否をただ一人ディアナだけが心配していた。
「ふむ、ともかくじゃ!今はまだ受胎したばかりじゃ。このような殺伐とした場所は妊婦にはふさわしくないからのぉ。そやつをひっ捕らえた後のことは男衆に任せて、妾たちは、先に上がるぞえ。ルディ、ユージィンよ、そういうことで構わぬな?」
「あ、あぁ確かにアンのいう通りだ。あとは僕たちで対処しよう。」
「僕たちで事足りますから大丈夫です。今は大事な体だからね、セレスティアをお願いします。」
「待て待て待て!俺も、俺も行く!」
カイエルは、アンティエルとイシュタルに連れて行かれるセレスティアに同行しようとしたが、
「男衆と言ったであろう?お前も後片付けをしておくのじゃ。」
「!」
カイエルはまさか、拒否されるとは思わずショックを受けていた。
「お、俺は番だぞ!!赤ん坊のと、父ちゃんなんだぞ!!」
「カイエル、私と姉さまがいるから安全面は大丈夫よ。だから、ね?」
「な、なんでだよ!」
「あと、他にセレスティアには大事な話があるのよ。」
「大事な話?」
「あとでそれは教えてあげるわ。とにかく、カイエルはヴェリエルを見てなさい。今はヒルダさんと一緒だから堪えているけど、目を離したらイリスを殺しかねないわ。イリスには事件の全容を聞き取りしなくちゃいけないからね。短気を起こされると困るのよ。」
「見張っておけってか・・・くそ!」
カイエルは悪態を付いてはいたが、イシュタルの言わんとすることはわかった。実際のところカイエルもヴェリエルの気持ちはわからないでもなかった。自分だったらとっくに手を出していただろうが、ヴェリエルはさすが、姉弟の中で一番の冷静さを持っていると言われているのは伊達ではなく、必死で殺したいという本能的な衝動を、理性で耐えているのはわかっていたからだ。
「わかったよ。じゃ後はくれぐれもセレスティアは丁重に扱えよ!」
「カ、カイエル私さっきまで剣を振り回していたんだから、大丈夫よ。」
セレスティア自身、妊娠がわかった途端の皆の自分の扱いに苦笑いであった。(気持ちはすごく有り難いのだけどね。)
「ふふ、安心して。じゃ、セレスティアの家に帰ってるわね。」
カイエルは渋々その場に残り、後始末を手伝う羽目になった。
こうして、魔物討伐の事件は、真の目的が魔王化であることが露見し、そして未然に防ぐことができたのであった。そしてまさかのセレスティアのおめでたという『竜の祖』達にとっては、待ちに待った懐妊の知らせだったのだ。
※GWの祝日はお休みを挟みますので、次回更新は5/6になります(-人-;)
セレスティアはかなり戸惑っていた。確かに身に覚えはあるが、それも直近のことで、正直なところ、そういう行為であることは承知していたが、あの時は子供が欲しくてした訳ではなく、結界解除を急いでいたからだ。そんな経緯であることから、セレスティアは複雑な心境であった。
「え?嘘だろ?姉貴本当なのか?」
カイエルは信じられないような表情で、
「冗談でこんなこと言わないわ。私にはわかるもの。知ってるでしょ?」
『竜の祖』の女性陣には、女性の受胎の有無がわかるのだ。
「!」
カイエルはセレスティアに振り向くと、満面の笑みであった。
「やったな!セレスティア!!」
「え?」
カイエルはイシュタルのお墨付きをもらい、屈託のない笑みで喜んでいた。そしてセレスティアの脇下を両手で持って、クルクルと回り始めた。
「カ、カイエル?」
「セレスティア!俺達の子供だ!できたんだぞ!!俺達の子供が!」
カイエルは複雑な心境のセレスティアと違い、心底嬉しそうに、そして珍しくはしゃいでいた。(まさかこんなに喜んでくれるなんて・・・)想定外ではあったけれども、カイエルの嬉しそうな顔を見たら、セレスティアの複雑な心境であったものは、いい方向に浮上した。
「『竜の祖』と人間の子だと?」
イリスには聞き捨てならなかった。そう自身が混血児であったから。
「はっ!混血児の末路は哀れなモノだ!わざわざ災いを作るとは滑稽なことだ!」
イリスは自身の経験から、辛辣な言葉を放った。
「・・・・本当に可哀想な人ね。」
先ほどセレスティアの言葉が再度紡がれた。そしてイリスに向けたセレスティアの眼差しは憐れむ同情的なものであった。
「!さっきから可哀想可哀想などと!お前に蔑まされる謂れなどない!!」
イリスにはセレスティアの言葉も向けられる視線も屈辱的だった。だがセレスティアは続けた。
「貴方が生まれた時はわからないけれど、きっと今まで愛情を感じて生きてこなかったのでしょうね。だから可哀想だと言ったのよ。」
「なんだと?!そんなものが何だっていうんだ!」
イリスは今にも噛みつきそうな顔をセレスティアに向けていた。
「そんなもの・・・ね。だから自分の痛みには敏感でも、他人の痛みには鈍感なのよ。」
「う、うるさ、グブッ!!」」
イリスがまた言い返そうとしている時、イリスの顔面は床にのめり込んだ。
「てめぇ、もう黙れ。てか、俺の番とそれ以上口聞いてんじゃねぇ。」
イリスはラーファイルとダンフィールに押さえつけられてるところを、カイエルに足で頭を踏まれてしまった。
「ぐ、ぐ、ぐっ~~」
「イリス様!!」
イリスの安否をただ一人ディアナだけが心配していた。
「ふむ、ともかくじゃ!今はまだ受胎したばかりじゃ。このような殺伐とした場所は妊婦にはふさわしくないからのぉ。そやつをひっ捕らえた後のことは男衆に任せて、妾たちは、先に上がるぞえ。ルディ、ユージィンよ、そういうことで構わぬな?」
「あ、あぁ確かにアンのいう通りだ。あとは僕たちで対処しよう。」
「僕たちで事足りますから大丈夫です。今は大事な体だからね、セレスティアをお願いします。」
「待て待て待て!俺も、俺も行く!」
カイエルは、アンティエルとイシュタルに連れて行かれるセレスティアに同行しようとしたが、
「男衆と言ったであろう?お前も後片付けをしておくのじゃ。」
「!」
カイエルはまさか、拒否されるとは思わずショックを受けていた。
「お、俺は番だぞ!!赤ん坊のと、父ちゃんなんだぞ!!」
「カイエル、私と姉さまがいるから安全面は大丈夫よ。だから、ね?」
「な、なんでだよ!」
「あと、他にセレスティアには大事な話があるのよ。」
「大事な話?」
「あとでそれは教えてあげるわ。とにかく、カイエルはヴェリエルを見てなさい。今はヒルダさんと一緒だから堪えているけど、目を離したらイリスを殺しかねないわ。イリスには事件の全容を聞き取りしなくちゃいけないからね。短気を起こされると困るのよ。」
「見張っておけってか・・・くそ!」
カイエルは悪態を付いてはいたが、イシュタルの言わんとすることはわかった。実際のところカイエルもヴェリエルの気持ちはわからないでもなかった。自分だったらとっくに手を出していただろうが、ヴェリエルはさすが、姉弟の中で一番の冷静さを持っていると言われているのは伊達ではなく、必死で殺したいという本能的な衝動を、理性で耐えているのはわかっていたからだ。
「わかったよ。じゃ後はくれぐれもセレスティアは丁重に扱えよ!」
「カ、カイエル私さっきまで剣を振り回していたんだから、大丈夫よ。」
セレスティア自身、妊娠がわかった途端の皆の自分の扱いに苦笑いであった。(気持ちはすごく有り難いのだけどね。)
「ふふ、安心して。じゃ、セレスティアの家に帰ってるわね。」
カイエルは渋々その場に残り、後始末を手伝う羽目になった。
こうして、魔物討伐の事件は、真の目的が魔王化であることが露見し、そして未然に防ぐことができたのであった。そしてまさかのセレスティアのおめでたという『竜の祖』達にとっては、待ちに待った懐妊の知らせだったのだ。
※GWの祝日はお休みを挟みますので、次回更新は5/6になります(-人-;)
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