蒸気機関街

仇花七夕

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終幕

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希望の渦巻くビビットカラーの街。
夕日が傾く黄昏時から、鮮やかなネオンの色へと姿を変える。
洗練された摩天楼が幾棟も天を衝く一方で、歴史を匂わせる建物や異彩を放つ路地裏。ただの都会では無いと主張している。
中心には車両の通行が制限される大きな通りや大量の情報が詰め込まれた電子の巨大な板が掲げられている。わかりやすい誘蛾灯に、わかりやすい洗脳装置だ。
ビル群だけでなく公園や広場が無数に存在し、周辺に住む人々に季節の移ろいを感じさせる事ができるのも評価できる点だろう。


ただ問題もある。
治安の低下だ。
栄華を誇るこの街も、発展の代償か犯罪が横行していた。
しかも誘拐だ。物騒なことこの上ない。
幼子ではなく、大人が標的らしい。
どんな手段を使っているのか未だにわかっていない。

普通に生活している被害者を見ただとか、家出でもう帰ってきましただとか。
人口だけは笑えるほど多いこの街だ。深刻化はしないだろう。



そんな我が街にも新たな産業が興った。
怪しげな会社の独占販売。
商品は「奴隷」。

当然このご時世、批判で溢れ返ると思っていた。
いや、当初は実際に溢れていた。
だが段々と気付き始めた。


当の本人たちは文句の一つも言っていないぞ。


そうなると勝手に、かつ急速に沈静化するのが世論というものだ。
かくして、歪な形で新しい産業が確立された。


会社が出来てからしばらく、鋼鉄の飛行船を目にする機会が増えた。
今の時代、つまり飛行機やロケットが飛ぶ時代に飛行船か、とも思ったが。
逆に先進的なのだろうな。
行き先は誰にもわからない。


実際に彼らと会話する機会があった。
愛想はよく言葉遣いも丁寧で、今の待遇に微塵の不満も抱いていないようだった。
自分の素性についてはあまり語りたがらなかった。
というより興味が薄いらしい。

かくしてこの口当たりの良い甘味のような彼らは受け入れられた。


だがある時事件は起きた。
突如会社が潰れたのだ。
巷では、「奴隷」の反乱だの、政府の圧力だの、仕舞には年端も行かぬ男女が悪事を暴いた等という英雄譚まで語られる始末。
いかに混乱が大きかったかが窺い知れるだろう。
更にこの混乱に乗じて、「奴隷」たちが一斉に身分を隠して一般人に紛れ込み始めた。



いつしか彼ら「奴隷」はこの街、東京に溶けた。


だがこの真実を知る者は殆どいないようだ。
皆、記憶でも弄られたのかい?



オッドアイの猫は静かに囁く。
「次はこの街だな」

無機質な声は大都会の雑踏に掻き消された。
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