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なぎさくん、どうしたの?
親友
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昼寝休憩している呼々夏おじさんの隣で配達の受付待ちをしている私は夏休みなのにもかかわらず、あまり電話がかかってこなかったので頼まれていた品出しを全て終えてしまった。
苺「暇だなぁ…。」
私は明日の配達分を箱詰めしながらBGMはセミの音しか聞こえない店で自分1人と会話していると、キリキリと鳴る荷台の音がやってきた。
きっと渚くんが配達を終えて帰ってきたんだろう。
真夏日の今日、500mlのペットボトル1つしか持っていかなかった渚くんのために煮出しておいた麦茶を用意していると汗一滴流れていない渚くんが回収した段ボールと一緒に入ってきた。
苺「…お疲れ。」
渚「ありがとう。」
そう言って渚くんは私が差し出した麦茶を一気飲みしてグラスを片付けに流しへ向かったけれど、渚くんのズボンのポケットに入っていたペットボトルは飲まれるどころか開封もされていなかった。
…意外と涼しいの?
私はクーラー病にならないよう、一歩外に出てみるとドライヤーの直風を浴びているように暑い。
こんな暑い中、町の端っこの家3件分の配達を終えた渚くんは無汗症ってやつ?
そんなことを1人で考えていると、珍しく人の声がやってくるのが聞こえた。
すると、私の知ってる2人がこちらに手を振ってきた。
私はその2人に手を振り返し、駆け寄る。
苺「なんで満彦おじさんいるの?」
珍しく外で出歩いているところを見た田中くんのお父さんである満彦おじさんは、手に持っていた買い物リストを私に見せてきた。
満彦「祭り使う物の仕入れ。苺ちゃんは買い物?」
苺「ううん。バイト。」
満路「え?いいの?」
と、買い物リストと一緒になにか資料を読み込んでいた田中くんが私の発言に驚いた。
苺「家で手伝いしてお駄賃もらうのとそんな変わんないよ。」
満彦「まあ、そうだな。呼々夏いるか?」
苺「いるよー。お昼寝してるけど。」
私は2人と一緒にお店へ戻ると、満彦おじさんが出入り口の扉に手を置いた瞬間、顔がこわばった。
満彦「…なんだ?」
苺「なにが?」
満彦「いや…、なんでも…なくはないけど…」
満路「なんか嫌な感じ。」
満彦「…そう。悪寒が走る。」
2人は何か嫌なものを感じたみたいだけど、私は何も分からず首を傾げ満彦おじさんが開けた扉に最初に入る。
苺「呼々夏おじさーん、幸呼神社の神主さん直々に発注しに来たよー。」
私は大いびきをかいている呼々夏おじさんの肩を揺すり、目を覚まさせると呼々夏おじさんは耳をつんざくような大あくびをして体を伸ばした。
呼々夏「誰が来たって?」
苺「満彦おじさんと満路くん。」
呼々夏「あー、満彦たちな。」
そう言って呼々夏おじさんは立ち上がって店内を見渡すように目を動かしたけれど、眉を寄せた。
呼々夏「なんでそこにいる?」
私はその言葉を投げた呼々夏おじさんの目線の先を追うと2人はお店の扉前に立ったまま動いていなかった。
呼々夏「冷気が逃げるから入れ。」
満彦「…いや、ここがいい。」
満路「俺も。」
呼々夏「ぼんぼんはワガママだから困る。」
と、呼々夏おじさんは顔が白くなっている2人の元へ発注書と一緒に行き、外のベンチで仕事の話をし始めた。
私はさっきの詰め作業の続きをしようと思い、ふとお店の中を見渡すけど渚くんはまだ呼々夏おじさんの部屋から出てきていなかった。
いつもなら淡々と仕事をして無駄な時間なんか1秒も作らないのにどうしたんだろうと私は心配になり、あまり上がったことのない呼々夏おじさんの部屋へ向かう廊下を進むとカチャカチャとお皿が定期的に物音を立てる。
…なんだ、グラス以外にも洗い物してたのか。
私はまた渚くんが消えたと思ったのでホッと一息ため息を漏らすと、さっきまで流れていた水の音が止まりお皿が当たる音が一瞬でなくなる。
それだけで少し不気味なのに自然光しか取り入れてなかった向こうの台所がだんだんと暗くなってきて私は足がすくみ、その場から動けなくなってしまう。
苺「あの…」
私が声を絞り出し、半開きの引き戸とのれんに隠れている渚くんに声をかけようとすると背後から大きくて汗ばんだ手に口と体を抑えられる。
「静かに。」
と、物音ひとつ立てずに私の後ろに来た田中くんはこの異様な空気感に私が飲み込まれないように強く抱きしめてきた。
すると、日が閉ざされて薄暗かった台所が煤を落とすように明るくなり、あの不気味な空気もいつのまにか消えていた。
満路「…よかった。」
田中くんはとても気を張っていたのか、廊下に腰を下ろし一度大きく深呼吸した。
苺「何が…、“よかった”なの?」
私はいつにも増してみんなが奇妙なことを言うので、まだ何か教えてくれそうな田中くんに聞いてみた。
田中「とられなくて。」
まだ何を言っているのか分からない私は顔をしかめて首を傾げると、また水が流れる音がし始めた。
田中「誰かいるのか…?」
苺「うん。渚くん。」
私は渚くんの洗い物の手伝いをしに台所へ行こうとすると、田中くんが私の手を掴んで引き止めた。
田中「ちょっと話がある。」
そう言われ、私は田中くんとお店の裏口から外に出てそばに林に身を隠すように入った。
待永 晄愛/なぎさくん。
苺「暇だなぁ…。」
私は明日の配達分を箱詰めしながらBGMはセミの音しか聞こえない店で自分1人と会話していると、キリキリと鳴る荷台の音がやってきた。
きっと渚くんが配達を終えて帰ってきたんだろう。
真夏日の今日、500mlのペットボトル1つしか持っていかなかった渚くんのために煮出しておいた麦茶を用意していると汗一滴流れていない渚くんが回収した段ボールと一緒に入ってきた。
苺「…お疲れ。」
渚「ありがとう。」
そう言って渚くんは私が差し出した麦茶を一気飲みしてグラスを片付けに流しへ向かったけれど、渚くんのズボンのポケットに入っていたペットボトルは飲まれるどころか開封もされていなかった。
…意外と涼しいの?
私はクーラー病にならないよう、一歩外に出てみるとドライヤーの直風を浴びているように暑い。
こんな暑い中、町の端っこの家3件分の配達を終えた渚くんは無汗症ってやつ?
そんなことを1人で考えていると、珍しく人の声がやってくるのが聞こえた。
すると、私の知ってる2人がこちらに手を振ってきた。
私はその2人に手を振り返し、駆け寄る。
苺「なんで満彦おじさんいるの?」
珍しく外で出歩いているところを見た田中くんのお父さんである満彦おじさんは、手に持っていた買い物リストを私に見せてきた。
満彦「祭り使う物の仕入れ。苺ちゃんは買い物?」
苺「ううん。バイト。」
満路「え?いいの?」
と、買い物リストと一緒になにか資料を読み込んでいた田中くんが私の発言に驚いた。
苺「家で手伝いしてお駄賃もらうのとそんな変わんないよ。」
満彦「まあ、そうだな。呼々夏いるか?」
苺「いるよー。お昼寝してるけど。」
私は2人と一緒にお店へ戻ると、満彦おじさんが出入り口の扉に手を置いた瞬間、顔がこわばった。
満彦「…なんだ?」
苺「なにが?」
満彦「いや…、なんでも…なくはないけど…」
満路「なんか嫌な感じ。」
満彦「…そう。悪寒が走る。」
2人は何か嫌なものを感じたみたいだけど、私は何も分からず首を傾げ満彦おじさんが開けた扉に最初に入る。
苺「呼々夏おじさーん、幸呼神社の神主さん直々に発注しに来たよー。」
私は大いびきをかいている呼々夏おじさんの肩を揺すり、目を覚まさせると呼々夏おじさんは耳をつんざくような大あくびをして体を伸ばした。
呼々夏「誰が来たって?」
苺「満彦おじさんと満路くん。」
呼々夏「あー、満彦たちな。」
そう言って呼々夏おじさんは立ち上がって店内を見渡すように目を動かしたけれど、眉を寄せた。
呼々夏「なんでそこにいる?」
私はその言葉を投げた呼々夏おじさんの目線の先を追うと2人はお店の扉前に立ったまま動いていなかった。
呼々夏「冷気が逃げるから入れ。」
満彦「…いや、ここがいい。」
満路「俺も。」
呼々夏「ぼんぼんはワガママだから困る。」
と、呼々夏おじさんは顔が白くなっている2人の元へ発注書と一緒に行き、外のベンチで仕事の話をし始めた。
私はさっきの詰め作業の続きをしようと思い、ふとお店の中を見渡すけど渚くんはまだ呼々夏おじさんの部屋から出てきていなかった。
いつもなら淡々と仕事をして無駄な時間なんか1秒も作らないのにどうしたんだろうと私は心配になり、あまり上がったことのない呼々夏おじさんの部屋へ向かう廊下を進むとカチャカチャとお皿が定期的に物音を立てる。
…なんだ、グラス以外にも洗い物してたのか。
私はまた渚くんが消えたと思ったのでホッと一息ため息を漏らすと、さっきまで流れていた水の音が止まりお皿が当たる音が一瞬でなくなる。
それだけで少し不気味なのに自然光しか取り入れてなかった向こうの台所がだんだんと暗くなってきて私は足がすくみ、その場から動けなくなってしまう。
苺「あの…」
私が声を絞り出し、半開きの引き戸とのれんに隠れている渚くんに声をかけようとすると背後から大きくて汗ばんだ手に口と体を抑えられる。
「静かに。」
と、物音ひとつ立てずに私の後ろに来た田中くんはこの異様な空気感に私が飲み込まれないように強く抱きしめてきた。
すると、日が閉ざされて薄暗かった台所が煤を落とすように明るくなり、あの不気味な空気もいつのまにか消えていた。
満路「…よかった。」
田中くんはとても気を張っていたのか、廊下に腰を下ろし一度大きく深呼吸した。
苺「何が…、“よかった”なの?」
私はいつにも増してみんなが奇妙なことを言うので、まだ何か教えてくれそうな田中くんに聞いてみた。
田中「とられなくて。」
まだ何を言っているのか分からない私は顔をしかめて首を傾げると、また水が流れる音がし始めた。
田中「誰かいるのか…?」
苺「うん。渚くん。」
私は渚くんの洗い物の手伝いをしに台所へ行こうとすると、田中くんが私の手を掴んで引き止めた。
田中「ちょっと話がある。」
そう言われ、私は田中くんとお店の裏口から外に出てそばに林に身を隠すように入った。
待永 晄愛/なぎさくん。
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