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お隣さんの秘密
10.西崎家の危機
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ドボンと一発異世界へ!
そんなキャッチフレーズを思いついた途端、異世界へと到着した。本当に早いね。ちなみに今度は池に飛び込んでも、息を止めたりしなかった。
2回目の異世界訪問にして、もう私はコツをつかみつつある。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
お姫様抱っこをされた状態で、異世界ことリデュースヴェンサルフィン国の引きこもり部屋に到着した私を待っていたのは、おばさんだった。
「水樹ちゃん、起こしちゃった?本当にこんな夜分にごめんなさいね」
おばさんは、馴染みの普段着ではなく、西洋風のドレスに身を包んでいる。頭には冠も乗っかっている。普段着でも憧れるほどの美貌を持つおばさんは、王妃様スタイルになると、神々しいくらいに美しい。
でも、私はいつもの癖で神々しい王妃様に向かって庶民の挨拶をしてしまう。
「おばさん、こんばんは」
「はい、水樹ちゃんこんばんは」
とりあえずといった感じで挨拶をした私に、おばさんもいつもの流れで挨拶を返してくれた。けれど、はっと表情を変えた。
「さっ、話は後で。時間がないから、水樹ちゃんを部屋に運んでちょうだい」
「母さんの部屋で良いか?」
「そうしてちょうだい。とにかく急いで」
「了解、じゃ水樹行くぞ。しっかり掴まっとけ」
そう言うが早いが、おばさんを先頭にピカピカに磨かれた大理石の廊下を走り抜ける。
ちなみに、中世ヨーロッパ風のコスプレをした親子が肩を並べてダッシュする姿は、なかなかシュールでした。
そしてあっという間に、おばさんの私室らしい部屋に入ると、隆兄ちゃんはさっさと締め出されてしまった。
労いの言葉もなく追い出されてしまったお兄ちゃんは、しょんぼりと寂しそうだった。どんまい、元気を出してほしい。特に王子様スタイルの時には。
締め出されたドアを見つめながら隆兄ちゃんにエールを送っていたら、ぽんと足元に何かが置かれた。
「とりあえず、水樹ちゃんコレはいて」
足元に置かれたのは、おばさん御用達のダイエットスリッパだった。
王妃様の部屋に庶民愛用のスリッパが置かれているのは、異様な光景でスリッパも恐縮しているように見える。私と一緒だね。
ちょっとこの豪華な部屋に、ダイエットスリッパを履いている私を想像して虚しくなったけど、裸足の私は、選択肢はない。それにTシャツに短パン、パイル地のパーカーを着ている私には、ダイエットスリッパは良く似合う。
……ということで、おばさんのダイエットスリッパをありがたくお借りする。
ちらりとおばさんを見ると、あわただしくクローゼットからドレスを物色している最中だった。え、まさかコレ私が着るの?足元、サンダルだよ!?もちろん予感は的中した。
レースとフリルがふんだんに使っている、ザ・お姫様ドレスを手にしたおばさんは、あっという間にわたしのパーカーとTシャツを脱がすと、ガバリと頭からドレスを被せた。その間たったの3秒。そして───
「はい、水樹ちゃん、前のボタン閉めて」
「はい!」
「次はこっちのリボンを結んでちょうだい」
「はい!」
「髪の毛とかすから、こっちに座って」
「はい!」
台所でお手伝いをしているノリで言われたら、返事をしてもくもくと手を動かしてしまう。習慣というのは恐ろしい。
そして事情を知らされぬまま、私はあっというまにドレスに着替え終わっていた。髪にも何だか高そうな宝石がくっついている。今、この中で一番価値が低いのは私の身体だろう。
「じゃ、水樹ちゃん行きましょうか」
「……は、はい」
一応、お伺いを立てているみたいだけど、NOと言える雰囲気ではない。おばさんに手を引かれてずんずん奥へと進んでいく。
それにしても、おばちゃんはドレスを着ているのに、歩くのが早い。追いつく為に裾を掴んでダッシュをしてるけど、如何せん足元はダイエットスリッパだ。つま先立ちの状態でのダッシュでは限界がある。
ということで、追いつくことは諦めて、おばさんに速度を落としてもらう方向にシフトする。
「おばさん、あの……聞いても良い?」
「あんまり時間がないから、詳しくは話せないけど……」
おばさんの歩く速度は若干落ちたけど、まだまだ早い。息切れをしながら、私は質問を続ける。
「だ、大体で良いから…はぁ…わ、私がここに来た理由を教えて」
「……そう?」
ぴたりとおばさんの足が止まり、私を見つめる。その目は真剣だ。
「一言で言うと、西崎家の危機なの。協力して、水樹ちゃん」
「はい!」
説明はそれだけで充分だ。西崎家の危機なら、私は何でもする。
小さいころからお世話になり続けてきたのだ。忙しい母親に代わって、入学式から卒業式、運動会の観戦から毎日のお弁当まで、とにかくおんぶにだっこで今まで来てしまったのだ。
代表的なエピソードとして、あれは、私が小学校6年生の時だった。
遠足にキャラ弁を持っていきたいと半泣きになって駄々をこねた私の為に、おばさんは友達が羨むほどのキャラ弁を作ってくれた。ただ、後から知ったけど、キャラ弁作りに時間を取り過ぎて、その日は隆兄ちゃんとおじさんのお弁当までキャラ弁だったらしい。
思春期だった隆兄ちゃんには、さぞかし拷問に近いことだっただろう。しかも、今思えば、おじさんは王様なのだ。冠かぶってキャラ弁を食べるおじさんを想像したら、申し訳なさに涙が浮かぶ。
それを笑いながら話してくれた隆兄ちゃんとおじさんには、感謝の言葉もみつからない。そしてこれは数あるエピソードの一つでしかない。
そう、これまでの恩を少しでも返せるなら、私、田澤水樹は何でも致します。
でも、でもね……高校生に、国を左右する役目を押し付けるなんて……責任重大過ぎるよ、おじさん、おばさん。あと隆兄ちゃんもね!
そんなキャッチフレーズを思いついた途端、異世界へと到着した。本当に早いね。ちなみに今度は池に飛び込んでも、息を止めたりしなかった。
2回目の異世界訪問にして、もう私はコツをつかみつつある。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
お姫様抱っこをされた状態で、異世界ことリデュースヴェンサルフィン国の引きこもり部屋に到着した私を待っていたのは、おばさんだった。
「水樹ちゃん、起こしちゃった?本当にこんな夜分にごめんなさいね」
おばさんは、馴染みの普段着ではなく、西洋風のドレスに身を包んでいる。頭には冠も乗っかっている。普段着でも憧れるほどの美貌を持つおばさんは、王妃様スタイルになると、神々しいくらいに美しい。
でも、私はいつもの癖で神々しい王妃様に向かって庶民の挨拶をしてしまう。
「おばさん、こんばんは」
「はい、水樹ちゃんこんばんは」
とりあえずといった感じで挨拶をした私に、おばさんもいつもの流れで挨拶を返してくれた。けれど、はっと表情を変えた。
「さっ、話は後で。時間がないから、水樹ちゃんを部屋に運んでちょうだい」
「母さんの部屋で良いか?」
「そうしてちょうだい。とにかく急いで」
「了解、じゃ水樹行くぞ。しっかり掴まっとけ」
そう言うが早いが、おばさんを先頭にピカピカに磨かれた大理石の廊下を走り抜ける。
ちなみに、中世ヨーロッパ風のコスプレをした親子が肩を並べてダッシュする姿は、なかなかシュールでした。
そしてあっという間に、おばさんの私室らしい部屋に入ると、隆兄ちゃんはさっさと締め出されてしまった。
労いの言葉もなく追い出されてしまったお兄ちゃんは、しょんぼりと寂しそうだった。どんまい、元気を出してほしい。特に王子様スタイルの時には。
締め出されたドアを見つめながら隆兄ちゃんにエールを送っていたら、ぽんと足元に何かが置かれた。
「とりあえず、水樹ちゃんコレはいて」
足元に置かれたのは、おばさん御用達のダイエットスリッパだった。
王妃様の部屋に庶民愛用のスリッパが置かれているのは、異様な光景でスリッパも恐縮しているように見える。私と一緒だね。
ちょっとこの豪華な部屋に、ダイエットスリッパを履いている私を想像して虚しくなったけど、裸足の私は、選択肢はない。それにTシャツに短パン、パイル地のパーカーを着ている私には、ダイエットスリッパは良く似合う。
……ということで、おばさんのダイエットスリッパをありがたくお借りする。
ちらりとおばさんを見ると、あわただしくクローゼットからドレスを物色している最中だった。え、まさかコレ私が着るの?足元、サンダルだよ!?もちろん予感は的中した。
レースとフリルがふんだんに使っている、ザ・お姫様ドレスを手にしたおばさんは、あっという間にわたしのパーカーとTシャツを脱がすと、ガバリと頭からドレスを被せた。その間たったの3秒。そして───
「はい、水樹ちゃん、前のボタン閉めて」
「はい!」
「次はこっちのリボンを結んでちょうだい」
「はい!」
「髪の毛とかすから、こっちに座って」
「はい!」
台所でお手伝いをしているノリで言われたら、返事をしてもくもくと手を動かしてしまう。習慣というのは恐ろしい。
そして事情を知らされぬまま、私はあっというまにドレスに着替え終わっていた。髪にも何だか高そうな宝石がくっついている。今、この中で一番価値が低いのは私の身体だろう。
「じゃ、水樹ちゃん行きましょうか」
「……は、はい」
一応、お伺いを立てているみたいだけど、NOと言える雰囲気ではない。おばさんに手を引かれてずんずん奥へと進んでいく。
それにしても、おばちゃんはドレスを着ているのに、歩くのが早い。追いつく為に裾を掴んでダッシュをしてるけど、如何せん足元はダイエットスリッパだ。つま先立ちの状態でのダッシュでは限界がある。
ということで、追いつくことは諦めて、おばさんに速度を落としてもらう方向にシフトする。
「おばさん、あの……聞いても良い?」
「あんまり時間がないから、詳しくは話せないけど……」
おばさんの歩く速度は若干落ちたけど、まだまだ早い。息切れをしながら、私は質問を続ける。
「だ、大体で良いから…はぁ…わ、私がここに来た理由を教えて」
「……そう?」
ぴたりとおばさんの足が止まり、私を見つめる。その目は真剣だ。
「一言で言うと、西崎家の危機なの。協力して、水樹ちゃん」
「はい!」
説明はそれだけで充分だ。西崎家の危機なら、私は何でもする。
小さいころからお世話になり続けてきたのだ。忙しい母親に代わって、入学式から卒業式、運動会の観戦から毎日のお弁当まで、とにかくおんぶにだっこで今まで来てしまったのだ。
代表的なエピソードとして、あれは、私が小学校6年生の時だった。
遠足にキャラ弁を持っていきたいと半泣きになって駄々をこねた私の為に、おばさんは友達が羨むほどのキャラ弁を作ってくれた。ただ、後から知ったけど、キャラ弁作りに時間を取り過ぎて、その日は隆兄ちゃんとおじさんのお弁当までキャラ弁だったらしい。
思春期だった隆兄ちゃんには、さぞかし拷問に近いことだっただろう。しかも、今思えば、おじさんは王様なのだ。冠かぶってキャラ弁を食べるおじさんを想像したら、申し訳なさに涙が浮かぶ。
それを笑いながら話してくれた隆兄ちゃんとおじさんには、感謝の言葉もみつからない。そしてこれは数あるエピソードの一つでしかない。
そう、これまでの恩を少しでも返せるなら、私、田澤水樹は何でも致します。
でも、でもね……高校生に、国を左右する役目を押し付けるなんて……責任重大過ぎるよ、おじさん、おばさん。あと隆兄ちゃんもね!
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