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あなたと私のすれ違い
逃亡
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ハスキー領主とフィリカの修羅場を目撃してしまった私は、自分が思うよりショックを受けていたようだった。
ベッドに潜り込んだけれど、二人の姿が脳裏に焼きついて離れない。
ハスキー領主は、あの後どうしたのだろう。この部屋に来ないということはきっとフィリカの後を追ったのかもしれない。そしてその後、彼らはどんな話をするのだろうか。
あの二人を見たとき、裏切られたような気がして本当は腹を立てていた。虚しくて惨めだった。そして、背を向けた私を追って来てくれないハスキー領主に対して、見捨てられたような気がした。
……私より、フィリカの方が大切なんだ。
そんなことばかり考えてしまう自分に嫌気がさして、水を飲もうとベッドから起き上がる。それから、立ったまま一口水を口に含むと、少しだけ冷静さを取り戻すことができた。
そもそも私は、ハスキー領主に対してずっと他人行儀で無愛想な態度ばかり取ってきたのだ。例え私が彼の花嫁であっても、無条件に大切に想われるわけがない。
大事にされたいなら、最初からつまらない意地など張らなければ良かったんだ。でも、どうやって素直になればいいのだろう。この世界に来てから、私はすっかり素直になるやり方を忘れてしまった。
グラスを手にして何気なく窓に目をやると、アーシャともう一人の女性が中庭で楽しそうに歩いているのが見えた。でも、雰囲気が違う。ああそうか、二人とも私服だったのだ。
どうやらアーシャは、ハスキー領主が私の部屋にいる間は息抜きをしているのらしい。もちろんそれを咎めることはできない。メイドというのはれっきとした職業の一つなのだ。だから、休日もあれば休息だって必要なのだ。
ただ、二人が互いの包みをみせあいながら何かを囁きあって、わっと笑い声を出すのを見ていると、不意に切ない感情が湧き上がる。
───………………いいなぁ、私もそこに行きたい。
ほんの少し前まで、私だってあの二人と同じように友達と買い物をしたり、おしゃべりをしたり楽しい時間を過ごしていた。なのに今は、こんな牢獄のような居城で一人ぼっちでいる。
悔しかった。そして、寂しかった。
傍から見たら、私は領主の花嫁で、この部屋にはハスキー領主から贈られた品々が封も開けられず積まれている。
きっと、このフィラントでこんな短期間にこれほど贈り物を貰えるのは、私だけかもしれない。そう、私は幸せ者なのだ……見かけだけは。
でも、こんな形だけの贈り物なんていらない。私は誰かと、時間を共有したい。そうか、そうだったのだ。カラカラに喉が渇くように、私は誰かとのつながりを切望していた。
翌朝、早朝誰もいないのを確認して、私は部屋を抜け出した。
逃亡するつもりはなかった。ただ、外の空気に触れたかっただけ。いつの間にか、この部屋は至る所にハスキー領主の面影がある。今の私には、それがとても窮屈で虚無感に囚われてしまうのだ。
早朝の雪国は、朝日が山々の新雪を照らして黄金色に輝いている。その輝きとと冷たさのせいで、目が痛くなるくらい眩しくて思わず目を細めた。
居城の中では既に働き始めている者もいるだろう。けれど、全ての音が雪に吸い込まれてしまったみたいに静寂に包まれている。
そんな中、中庭を横切り、行く宛てもなくふらふらと歩いていた────が。
「どこにいかれるのですか?」
「え?」
突然、背後から尖った声をかけられ、驚いて振り返ると、そこにリシャードがいた。咎めるようなきつい眼差しで私を見下ろしている。
「ここは、城門です。そして、この先は場外です。花嫁様、あなたはどこに行こうとしていたのですか?」
リシャードはさらに声音を尖らせて私を追及する。まるで生活指導の先生のようだ。
「私…………」
そこまで言って、言葉に詰まる。リシャードは私が逃亡しようとしたと勘違いしているのだ。咄嗟に、なんでもないと言葉を濁してこの場を去ろうかと考える。けれど、すぐにその考えを打ち消し、ありのままを説明することにした。
どうせ適当に誤魔化しても、子供みたいに突っぱねても、この側近からは逃げられる訳もない。なにせ彼は、領主を5時間も説教できる人物なのだから。
「何も考えてなかったです。ただ、部屋にいるのが息が詰まるから、適当に歩いていただけです」
正直に答えた私と、リシャードの間に沈黙が落ちる。探るような視線が痛い。
ひりひりと突き刺さる視線に耐えきれず黙って見上げたら、その視線に気づいたリシャードは苦笑した。
「そうですか。では、もう気が済みましたか?」
呆れ半分、探り半分といった口調でリシャードは私に問いかける。ただ、もう視線は穏やかなものに変わっている。ほっと安堵の息をついて、私は素直にこくりと頷いた。
「では、部屋に戻りましょう。送ります」
「!?あ、あの…歩けます」
ひょいと抱き上げられ、一瞬で視界が高くなる。フィラント領の人は皆、背が高い。慣れない視界の高さに、怯え身じろぎした私をリシャードは、諭すような口調でこう言った。
「あなたの歩調に合わせるより、この方が早いので」
確かにこのほうが合理的だ。そう言われてしまえば、拒む理由が見つからない。
同意する意思をみせるために、リシャードの肩に手を置く。それが合図となり、彼はしっかりとした足取りで城内へと踵を返した。
「……あまり食事を取らないと伺っていますが、フィラントの食べ物は口に合いませんか?」
中庭が視界に入った辺りで、リシャードがそう唐突に口を開いた。
そう問いかけられた私は、思わず苦笑を漏らしてしまう。もうこの問いは何度目だろう。ただ、きちんと答えたことは一度もなかった。
リシャードの低い声と落ち着いた口調、それに背を押され私は素直に自分の気持ちを吐き出した。
「いいえ、フィラントの食べ物はどれも美味しいです。ただ。私は……あまり食べれないだけです」
それに、お腹が減る程、動いていないからと付け加える。
私がそう言った瞬間、リシャードの腕に微かに力が篭る。また何か言われると身構えたけれど、リシャードは可笑しそうに喉をならしただけだった。
「ははっ……なるほど。確かに動いていなければ、お腹は空きませんね。でも、少しずつ食べる努力はしてください。無理はしてはいけませんが、せめて毎日一口ずつ多く食べてみてください」
まるで幼子に言い聞かせる口調だ。
ハスキー領主より少し年上のリシャードにはもう妻子がいるのかもしれない。今みたいな事を日頃から口にしているのか、随分と言い慣れた口調だ。
そんなことをぼんやりと考えている私に、リシャードはぽつりと、こう零した。
「……領主も毎日心配していますよ。先にあのお方が倒れてしまいそうだ」
「どうでしょう……領主は、私のことがお嫌いでしょうから」
思わずこぼれた本音がなんだか可笑しくて、乾いた笑みがこぼれてしまった。私の笑いが自嘲と他の意味を含んでいるのに気付いたリシャードはピタリと足を止めた。
「なぜそのようなことを?」
そう私に問いかけながらリシャードは、信じられないといわんばかりに目を見開いている。どうやら本当に驚いているようだ。彼の驚きに私まで驚いてしまい、また私たちの間に沈黙が落ちてしまう。
けれどすぐにリシャードは再び歩き出した。中庭を横断して長い廊下を歩き始めた頃、やっとリシャードは口を開いた。ただ、おずおずといった口調だったけれど。
「あなたは、領主のことがお嫌いですか?」
「わかりません。……知らないことが多すぎて」
そう俯いた私に、リシャードはふうと大仰に溜息を付いた。けれど、今度は彼の口からは何も言葉は出てこなかった。
それから、部屋まではすぐで扉の前に到着するとリシャードは膝を折り、そっと私を下ろしてくれた。
「ありがとうございました」
丁寧に頭を下げた私に、よく温まりなさいとリシャードは言葉をかける。
その言葉に素直に頷いて部屋に入る。ただ、扉を閉じる軋む音に混じって、あなた達二人には手を焼かされますね、というリシャードの言葉が聞こえてきた。その苦笑交じりに呟いたリシャードの言葉は、どこか優しさを含むものだった。
意味深長な彼の言葉の真意がわかるのは翌日のこととなる。
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ハスキー領主は、あの後どうしたのだろう。この部屋に来ないということはきっとフィリカの後を追ったのかもしれない。そしてその後、彼らはどんな話をするのだろうか。
あの二人を見たとき、裏切られたような気がして本当は腹を立てていた。虚しくて惨めだった。そして、背を向けた私を追って来てくれないハスキー領主に対して、見捨てられたような気がした。
……私より、フィリカの方が大切なんだ。
そんなことばかり考えてしまう自分に嫌気がさして、水を飲もうとベッドから起き上がる。それから、立ったまま一口水を口に含むと、少しだけ冷静さを取り戻すことができた。
そもそも私は、ハスキー領主に対してずっと他人行儀で無愛想な態度ばかり取ってきたのだ。例え私が彼の花嫁であっても、無条件に大切に想われるわけがない。
大事にされたいなら、最初からつまらない意地など張らなければ良かったんだ。でも、どうやって素直になればいいのだろう。この世界に来てから、私はすっかり素直になるやり方を忘れてしまった。
グラスを手にして何気なく窓に目をやると、アーシャともう一人の女性が中庭で楽しそうに歩いているのが見えた。でも、雰囲気が違う。ああそうか、二人とも私服だったのだ。
どうやらアーシャは、ハスキー領主が私の部屋にいる間は息抜きをしているのらしい。もちろんそれを咎めることはできない。メイドというのはれっきとした職業の一つなのだ。だから、休日もあれば休息だって必要なのだ。
ただ、二人が互いの包みをみせあいながら何かを囁きあって、わっと笑い声を出すのを見ていると、不意に切ない感情が湧き上がる。
───………………いいなぁ、私もそこに行きたい。
ほんの少し前まで、私だってあの二人と同じように友達と買い物をしたり、おしゃべりをしたり楽しい時間を過ごしていた。なのに今は、こんな牢獄のような居城で一人ぼっちでいる。
悔しかった。そして、寂しかった。
傍から見たら、私は領主の花嫁で、この部屋にはハスキー領主から贈られた品々が封も開けられず積まれている。
きっと、このフィラントでこんな短期間にこれほど贈り物を貰えるのは、私だけかもしれない。そう、私は幸せ者なのだ……見かけだけは。
でも、こんな形だけの贈り物なんていらない。私は誰かと、時間を共有したい。そうか、そうだったのだ。カラカラに喉が渇くように、私は誰かとのつながりを切望していた。
翌朝、早朝誰もいないのを確認して、私は部屋を抜け出した。
逃亡するつもりはなかった。ただ、外の空気に触れたかっただけ。いつの間にか、この部屋は至る所にハスキー領主の面影がある。今の私には、それがとても窮屈で虚無感に囚われてしまうのだ。
早朝の雪国は、朝日が山々の新雪を照らして黄金色に輝いている。その輝きとと冷たさのせいで、目が痛くなるくらい眩しくて思わず目を細めた。
居城の中では既に働き始めている者もいるだろう。けれど、全ての音が雪に吸い込まれてしまったみたいに静寂に包まれている。
そんな中、中庭を横切り、行く宛てもなくふらふらと歩いていた────が。
「どこにいかれるのですか?」
「え?」
突然、背後から尖った声をかけられ、驚いて振り返ると、そこにリシャードがいた。咎めるようなきつい眼差しで私を見下ろしている。
「ここは、城門です。そして、この先は場外です。花嫁様、あなたはどこに行こうとしていたのですか?」
リシャードはさらに声音を尖らせて私を追及する。まるで生活指導の先生のようだ。
「私…………」
そこまで言って、言葉に詰まる。リシャードは私が逃亡しようとしたと勘違いしているのだ。咄嗟に、なんでもないと言葉を濁してこの場を去ろうかと考える。けれど、すぐにその考えを打ち消し、ありのままを説明することにした。
どうせ適当に誤魔化しても、子供みたいに突っぱねても、この側近からは逃げられる訳もない。なにせ彼は、領主を5時間も説教できる人物なのだから。
「何も考えてなかったです。ただ、部屋にいるのが息が詰まるから、適当に歩いていただけです」
正直に答えた私と、リシャードの間に沈黙が落ちる。探るような視線が痛い。
ひりひりと突き刺さる視線に耐えきれず黙って見上げたら、その視線に気づいたリシャードは苦笑した。
「そうですか。では、もう気が済みましたか?」
呆れ半分、探り半分といった口調でリシャードは私に問いかける。ただ、もう視線は穏やかなものに変わっている。ほっと安堵の息をついて、私は素直にこくりと頷いた。
「では、部屋に戻りましょう。送ります」
「!?あ、あの…歩けます」
ひょいと抱き上げられ、一瞬で視界が高くなる。フィラント領の人は皆、背が高い。慣れない視界の高さに、怯え身じろぎした私をリシャードは、諭すような口調でこう言った。
「あなたの歩調に合わせるより、この方が早いので」
確かにこのほうが合理的だ。そう言われてしまえば、拒む理由が見つからない。
同意する意思をみせるために、リシャードの肩に手を置く。それが合図となり、彼はしっかりとした足取りで城内へと踵を返した。
「……あまり食事を取らないと伺っていますが、フィラントの食べ物は口に合いませんか?」
中庭が視界に入った辺りで、リシャードがそう唐突に口を開いた。
そう問いかけられた私は、思わず苦笑を漏らしてしまう。もうこの問いは何度目だろう。ただ、きちんと答えたことは一度もなかった。
リシャードの低い声と落ち着いた口調、それに背を押され私は素直に自分の気持ちを吐き出した。
「いいえ、フィラントの食べ物はどれも美味しいです。ただ。私は……あまり食べれないだけです」
それに、お腹が減る程、動いていないからと付け加える。
私がそう言った瞬間、リシャードの腕に微かに力が篭る。また何か言われると身構えたけれど、リシャードは可笑しそうに喉をならしただけだった。
「ははっ……なるほど。確かに動いていなければ、お腹は空きませんね。でも、少しずつ食べる努力はしてください。無理はしてはいけませんが、せめて毎日一口ずつ多く食べてみてください」
まるで幼子に言い聞かせる口調だ。
ハスキー領主より少し年上のリシャードにはもう妻子がいるのかもしれない。今みたいな事を日頃から口にしているのか、随分と言い慣れた口調だ。
そんなことをぼんやりと考えている私に、リシャードはぽつりと、こう零した。
「……領主も毎日心配していますよ。先にあのお方が倒れてしまいそうだ」
「どうでしょう……領主は、私のことがお嫌いでしょうから」
思わずこぼれた本音がなんだか可笑しくて、乾いた笑みがこぼれてしまった。私の笑いが自嘲と他の意味を含んでいるのに気付いたリシャードはピタリと足を止めた。
「なぜそのようなことを?」
そう私に問いかけながらリシャードは、信じられないといわんばかりに目を見開いている。どうやら本当に驚いているようだ。彼の驚きに私まで驚いてしまい、また私たちの間に沈黙が落ちてしまう。
けれどすぐにリシャードは再び歩き出した。中庭を横断して長い廊下を歩き始めた頃、やっとリシャードは口を開いた。ただ、おずおずといった口調だったけれど。
「あなたは、領主のことがお嫌いですか?」
「わかりません。……知らないことが多すぎて」
そう俯いた私に、リシャードはふうと大仰に溜息を付いた。けれど、今度は彼の口からは何も言葉は出てこなかった。
それから、部屋まではすぐで扉の前に到着するとリシャードは膝を折り、そっと私を下ろしてくれた。
「ありがとうございました」
丁寧に頭を下げた私に、よく温まりなさいとリシャードは言葉をかける。
その言葉に素直に頷いて部屋に入る。ただ、扉を閉じる軋む音に混じって、あなた達二人には手を焼かされますね、というリシャードの言葉が聞こえてきた。その苦笑交じりに呟いたリシャードの言葉は、どこか優しさを含むものだった。
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