司令官さま、絶賛失恋中の私を口説くのはやめてください!

茂栖 もす

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私と司令官様の日常

まさかの告白②

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 部屋には妙な沈黙が続いている。

 ちなみに私はキャパオーバーの為、思考を放棄している。いっそここでウィルさんの登場を期待してみるけれど、物音一つしない。

 沈黙やばし。でも、すぐに司令官さまが、口を開いた。

「───………とはいえ、突然このようなことを言われ、君も驚いているだろう」
「はい」

 食い気味に答えれば、司令官さまは、ふむといった感じで顎に手を当てながら頷いた。

「…………まさか、ここまではっきり頷かれるとは思わなかったが、これも想定内………としておこう」

 いや、想定外ということで、即刻この話、なかったことにしてください。

 と、言おうとしたけれど、私はそれよりも前に、純粋な疑問が頭に浮かんだ。

「あのぉ…………質問なんですが、司令官さまは、何で私にそんなことを言うんですか?」

 おずおずと手を挙げながらそう問えば、司令官さまは表情を変えずに、あっさりと答えてくれた。

「惚れているからだ」

 自信満々に言い切ってくれてありがとうございます。

 でも、その答え、ちっとも嬉しくないです。あとそれ、答えになってません。

「いえ、あの…………そうじゃなくって、なんで突然そんなことを私に言うんですか?」
「言わなければ何も始まらないではないか」
「はぁ、そうですが。でも………」

 質問を重ねても欲しい答えが返ってこないこの現実に、どうしたら良いのだろうと途方に暮れる。

 けれど司令官さまは、頭の出来はそんなに悪くなかったようで、やっとこさ私が聞きたかったこを察してくれた。

 でも、先に言っておくけれど、頭の出来は良いけれど、そのヤバイ思考の持ち主だった。

「昨日、君が私に興味を持ってくれたことを知ったから。だからこれはもう、自分の気持ちを伝えるべきだと判断したのだ」
「は?」

 興味……ですと?

 残念ながら、あなた様に興味を持ったことなど一度もございません。

 それと、強迫されて無理矢理絞り出した手袋のワードを、勝手にそんなふうに都合よく解釈しないで欲しい。

 っていうか、手袋もお前の身体の一部なのか?ならその手袋、即刻燃やしてやるよ。全部持ってこいっ。

 なんてことを言いたいけれど、私はあらぬ方向に視線を泳がせながら、イケメンを視界に入れないようにすることしかできない。

 だって、この人、無意識なのか意図的なのかわからないけれど、さっきから口を開くたびに、ぐいぐい近づいてくるのだ。

 っという、こちらの心境など良い感じに無視して、司令官さまは、なぜかここで顔を綻ばせた。

「私は、君に興味を持ってもらえて大変嬉しかった。年齢差を考えて一歩踏み出せなかったが、君から話題を振ってくれたことで、自信を持つことができた。それに、結婚式の話も………素敵という素晴らしい感想をもらえ、近い将来、君と共に歩くバージンロードが目に浮かんできた」

 そう言いながら、司令官さまは、ちょっと頬を赤く染めている。

 あの、わけのわからないうんちく話をしている途中にそんなアホなことを想像していたってこと!?

 何そのジャンピング発想、付いていけないっ。嫌だ、キモイ、怖い。マジで引く。

 サブいぼ全開になった二の腕をこすりつつ、とにかくこんな頭のイカれたイケメンとこれ以上話すのは不毛だという結論になる。即刻、諦めて貰おう。
 
 ふっ、大丈夫。どんなに頭のイカレたイケメンであろうとも、すぐに私という存在に興味を無くす魔法の言葉を、私はちゃんと知っている。

「ごめんなさい。私、お金持ってないです。そして今後もあなたに援助はできません」
「そうか。だが、この話は、君に何か金銭を要求している類のものではない」

 なんですとっ!?じゃあ、何の話をしているんだ!?

 思わず食い入るように司令官さまを見つめてしまう。でも2秒が限界でさっと視線をずらす。

 そんな中、司令官さまは、ぞっとするほど柔らかい声で私に語りかけた。

「もちろん、君に惚れた経緯はきちんとこれからしっかり時間をかけてじっくり話していきたいと思う。ただ、それより前に、まず私の事を知って欲しい」
「もう、十分知っています」

 なにせ、この半月毎日顔を突き合わせてきたのだ。

 そして金銭の要求という話ではないのがわかったら、もうこれ以上、このイケメンと会話をする必要はない。

 だが、司令官さまは、なかなか食い下がらない。

「私の何を知っているというんだ?」
「………………」

 逆に問われると、なんと答えて良いやら…………。だって全部が暴言になりそうだ。

「シンシア殿、私は質問をしている。きちんと答えたまえ」

 うわぁー、ここでまさかの命令!?

 司令官さまは、ドSというか、良い性格をしていらっしゃる。

 しかし、ここは答えなければ。あと、なんかどんどん司令官さまは、前のめりになって顔が近い。

「ええっとぉ………まず、大変勤勉でいらっしゃいます。あと、時間に細か……いえ、きっちりされております。あと、えっと…………何かありましたっけ?」

 ずるずるとソファの位置を移動しながら、たった二つの司令官さま情報を口にしただけで、私はネタが尽きた。そして、うっかり質問を質問で返してしまった。

 慌てて両手で口元を押さえるけれど、もう遅い。司令官さまは、ここでドヤ顔を決めてきた。

「だろう?君は私の事を何も知らないのだ。だから、これから互いの事を知って行こ───」
「ごめんなさいっ」

 私は本日二度目の謝罪の言葉を口にして、深々と頭を下げた。次いできっぱりと自分の気持ちを伝えることにする。

「私、司令官さまのことは好きにはなれません」
「なぜだ?」

 急に険しいになった司令官さまは、更にぐいっと前のめりになる。

「だって…………」
「だって、何だ?」

 思わず身を引けば、その分……いや、それ以上の距離を司令官さまは詰めてくる。もう、イケメンが視界いっぱいに広がり、私の頭は真っ白だ。

「答えてもらおう、シンシア」

 更に顔を近づけられれば、もう互いの息がかかる程の至近距離となってしまう。しかもあろうことか、司令官さまはそれでも足りないのか私に手を伸ばそうとする。

 その瞬間、私の中の何かがプッチンと弾けた。

「だって、司令官さまはイケメンですから!あなたの言葉なんて、何一つ信用できませんっ!!」

 ああああああああっっ!またやっちゃったっ!

 今更だけれど、私はテンパり過ぎると、所構わず本音を口にしちゃう短所がある。

 でももう、覆水盆に返らず状態。『言い捨て御免!』と心の中で三度目の謝罪をして、私はソファから逃げ出し、扉のドアノブに手をかけた。

「おっおいっ、待ちたまえっ」

 司令官さまの呼び止める声が背後から刺さる。

 けれど、私はそれを無視して、廊下へと飛び出し、そのまま自室へと逃げ込んだのであった。
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