八百万異戦ラプソディ~残念美人よ異能を尻に敷くがいい~

カムロ

文字の大きさ
11 / 18

僕だけの味方②

しおりを挟む
「くらぇぇぇ!」

ガトリング乱射。鉛玉の雨が百尼びゃくにを襲う。弾痕で道の舗装が次々と剥げていく。

「精度はイマイチだけどギャラリーが……流れ弾がいかないようにしないとねぇ。」

まだ周囲には逃げ遅れた人々がいた。

「だったらここはあえてぇ!」

百尼は機体に突っ込んでいく。

「なっ?!」
「ここまで潜り込んだら、逆に狙えないでしょぉ。」

腰を落として屈み、脚に力を溜め、一気に飛び上がる。

「ちぇりゃあああ!」

ガトリングにハイキック。銃身が曲がり、爆ぜる。

「ぬぁぁぁ?!」
「まず一つねぇ。」
「舐めんなぁぁぁ!」

機体の肩が開き、ミサイルがいくつも射出される。百尼は身をかわすが、かわした先についてくる。

「げぇ?!追尾性能あんのぉ?!ダルぅ!」

何発か直撃。

「ほげぇぇぇ!」

機体の腹部が開き、大弾頭のミサイルが顔を出す。

「コイツも、食らいやがれぇぇぇ!」

射出。煙を吐き円を描きながら百尼の元へ。

「さすがに、ソレはないでっしょぉい!」

逆にミサイルに向かってダッシュ。当たる寸前で左に避け、すれ違う。その瞬間、バックステップ。ミサイルの推進力に同調しながら、ミサイルを小脇に挟む。勢いを殺さずに体を一回転。弾頭の先を機体に向ける。

「は、はぁぁぁ?!」
「クーリングオフよぉぉぉ!」

腕を振り切って投げつける。

「どっはぁぁぁ?!」

大爆発。機体が尻もちをつく。その隙に機体に馬乗りになる。

「どぉらぁぁぁ!そこから叩き出してやるわぁぁぁ!」

コックピットを殴る殴る。機体が揺れる。

「うわっ、うわぁぁぁ!フレア、フレアァァァ!」

金属粉がばら撒かれ、着火。火花が爆ぜる。

「げふっ?!目がぁぁぁ!」

ひるんだ百尼を引っ剥がす。

「ちくしょうちくしょう、ちくしょぉぉぉ!」

肩の砲塔のダイナモが起動し、電磁エネルギーが満ちる。

「人に使ったことないけど……やってやる、ぶっ殺してやるぅぅぅ!」

エネルギーの圧で空気が揺れる。百尼に冷や汗が流れる。

「やっばい……けど、避けたらギャラリーが……」

射線上、遠くにはまだ人がいた。

「いっけぇぇぇ!超電磁砲レールガン!」
「チィッ!」

刹那、百尼の体が消えた。音を超越した弾丸の前に人体はなすすべもなかった。百尼のサングラスが舞う。張り裂けるような轟音が響く。地面が大きく抉れ、クレーターができた。

「百さん?!」

千尋の声は届かない。

「はぁ、はぁ……お、お前が悪いんだぞ!僕の邪魔をするから!これは、『ビスマルク』は神がくれたプレゼントだ!僕は好きに生きる!欲しいもの全部手に入れて、気に入らないもの全部ぶっ壊して……この世界に復讐するんだぁぁぁ!」

灰と化した辺り一面にコックピットからの叫びが染み渡る。

「……もう、傲慢ねぇ。」

誰かの声がした。

「あぁ?!」
「このアタシでもなかなかそんな生き方できないわよぉ……身のほどを知りなさぁい……」

声の主はズルズルとほふく前進していた。下半身が無く、立つことができない。

超電磁砲レールガンが当たって生きてる……なんで……?ありえない……」
「ありえないのがアタシなのよぉ。分かるぅ?」

下半身の再生が始まっていた。

「……知るかぁぁぁ!」

再度誘導ミサイルを射出。寝転ぶ百尼まっしぐら。

「ふんぬぅぅぅ!」

赤黒い紐が右脚に集中し、一瞬で形作る。

「ぬぁぁぁ!ビリビリに耐性ついてて良かったぁ!」

どうにか右脚一本、ケンケンでミサイルをかわす。

「ちょこまかとうっとうしい!直接やってやる!」

機体は右の拳を握りしめ、ドスドス近づいてくる。

「あらぁ素手格闘ステゴロは望むところよぉ。」

その間に左脚も再生を終え、両足を踏みしめる。

「ごぁぁぁ!」

機体が渾身の右ストレートを繰り出す。

「ハァァァ!」

百尼も右の拳を繰り出す。
衝突。衝撃波で地面に亀裂が走る。

「潰れちまぇぇぇ!」
「ぐっ、うぐぅ………」

百尼の拳が砕け、腕が折れる。

「……まだまだまだまだぁぁぁ!」

折れた腕が、拳が、壊れたそばから再生していく。百尼が押し返す。

「んなぁっ?!」
「ぁぁぁあああっはあああ!」

百尼が拳を振り抜く。機体のアームが砕け散った。

「うぉぉぉ?!」
「よっしゃぁぁぁ!」

勢いそのままに機体を駆け上がる。肩の砲塔に抱きつき、

「おイタするビリビリちゃんはコイツねぇ……ふんぬぅぅぅ!」

引っこ抜こうとする。音を立てて土台が外れかかる。

「やめろ、やめろぉぉぉ!フレアァァァ!」

火花が爆ぜる。しかし百尼は止まらない。

「おぁぁぁ!」

バガンと音を立てて砲塔が抜ける。

「うぁぁぁ!『ビスマルク』ゥゥゥ!頑張れぇぇぇ!」

機体の左アームからソードが飛び出す。

「うがぁぁぁ!」

ブンブン振り回す。百尼はいったん距離を取る。

「子どもが刃物持っちゃあ危なっかしいわねぇ、全くぅ。」

外れた砲塔を抱え、殴りかかる。

「うらぁぁぁ!」
「んなぁぁぁ!」

砲塔をソードで受け止める。鍔迫り合いが続く。だんだん砲塔が削れて短くなる。

「あぁもうダメね、コレ!」

砲塔をポイ捨てする百尼。機体は百尼の真上、大きくソードを振りかぶる。

「しゃらぁぁぁ!」
「おぉっとぉ。」

ソードは百尼の顔をかすめて空を切り、地面を割る。

「CHU♡」

百尼はソードに口づけしてから、左アームの肘裏目がけて蹴りを入れる。

「うっりゃぁぁぁ!」

関節と逆方向に力が加わり、アームがミシミシと音を立てる。

「だっせぇぇぇい!」

そのまま振り上げた。左アーム粉砕。

「な……嘘……?」
「さぁさ、腕ちょんばしちゃったしぃ、クライマックスよぉ。」

棒立ちする機体の足をひっかけ、大外刈りで仰向けに転ばせる。

「げぇっ?!」

無防備になったコックピットに百尼が立ちはだかる。

「引きこもりはおしまいよぉ。」

グッと両の拳を握りしめ、ドカドカ殴りまくる。

「やめてぇぇぇ!『ビスマルク』ゥゥゥ!何とかしてぇぇぇ!」

あらゆるところがパカパカ開いて機械音が鳴るが、何も出てこない。

「あき!らめ!なさぁい!大人に!なる!のよぉ!」

コックピットにヒビが入る。一際大きく振りかぶり力を溜める。

「嫌だぁぁぁ!」
「うっりゃぁぁぁ!」

拳がコックピットを貫通し、操縦者に届いた。

「ぶぇぇぇっ?!」
「でっりゃぁぁぁ!」

拳ごと体当たり。コックピットが弾け飛ぶ。そして機体が爆発。黒煙に包まれる。全ての武装を失い主もいないくなった機体は、ただ黒く焼け焦げていった。

「そんな……僕の最強の味方が……」
「どこが最強なのよぉ。アタシに負けるくらいなのよ、大したことないじゃなぁい。」
「う、うるさい!僕の全てだったんだ、アレが無いと、僕は……」
「また作ればいいじゃなぁい。」
「え?」

百尼を見上げる。

「そんなに好きなら何度でも作ればいいじゃなぁい。ま、その度にアタシが壊してあげちゃるけどねぇ。」
「な、何を……」
「世界をモノにしたいならそのくらいしてみなさぁい。それまでは反省、ねぇ。」

ポカンと頭に一発。気絶した。

「あ~あ、つっかれたぁ。グラサンも壊れちゃったしぃ、千尋に用意してもらわないと……あの店長いくら払ってくれるのかしらねぇ。」

のんびり歩いて事務所に帰った。

後日、事務所。

「五百万?安くなぁい?」
「まぁまぁこんなものですよ。百さんあのロボット壊しちゃって、中の宝石もダメにしちゃったじゃないですか。」
「そ~れは不可抗力でしょ~。アタシのせいにしてくれちゃってもねぇ~。」
「とにかく今回もお疲れ様でした。サングラスはまた用意しておきますね。」
「お願いねぇ……それにしても最近異能が多いわねぇ。強いヤツは強いし。世の中が心配だわぁ。」
「ですね。いつか誰もが安心して暮らせる未来が来るんですかね?」
「来るかもしれないしぃ、来ないかもしれない。アタシは来ないと思うけどぉ。」
「そんな夢も無いこと言わないでくださいって。」

今後を案じる一日だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...