出会ったのは喫茶店

ジャム

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本編

番外編・真実は隠し通す

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陽翔が家を去ったあと・・・

「・・・フッw言うようになったなw」

俺は陽翔の成長を誇らしく思った

妻「よかったの?真実を伝えないで」

「いいんだ。伝えたら・・・あいつは通帳を受け取らないだろう。とても優しい子だからな」

妻「でも・・・」

「もういいんだ。縁は切れた。あいつは前に進んだ」

そう・・・
俺たちとあいつは・・・もう・・・

妻「でも、子供の頃から悪役にならなくても・・・」

「そうだな・・・そこは反省してる。いや、そんな言葉じゃ足りないな」

妻「ちゃんと愛情を注いであげれば・・・」

「言うな。約束しただろう?忘れたのか?」

妻「・・・『この子に手をあげた分、責任を取ろう。将来、自分たちを追い詰めて』でしょう。覚えてるよ」

「なら言うな。絶対に・・・」

俺は・・・仕事を失い働くことも難しくなった怒り、家族を養えない己の不甲斐なさのせいで陽翔に暴力をしてしまっていた
あいつは悪くない
わかっていたのに・・・止められなかった
その責任は・・・取る
全部、自分を悪者にしてでも・・・

妻「私も・・・責任は取る覚悟はできてる。でも・・・愛してるのよ・・・あの子を・・・」

と妻は涙を流す
俺は妻を抱き寄せる

妻「愛しているのに・・・なんで・・・暴力をしてしまったのだろう・・・なんで・・・止められなかったんだろう・・・」

「俺も同じだ。自分の弱さに負けてあいつを殴ったりした・・・だからこそ償うんだ。あいつのためにも」

妻は泣きながら頷く

「ホントはちゃんとしたかった・・・すまないな。お前も巻き込んで・・・」

妻「いいのよ。私も・・・償うと決めたのだから・・・」

「ああ・・・」

俺たちに選択肢があるとすれば・・・陽翔の未来が明るいものであることを祈るだけだ

妻「そういえば・・・気になってたことがあるんだけど」

「なんだ?」

妻「あなたがやろうとしてた『レンタル』って・・・なんだったの?」

「え、知らずに話に乗ってたのか?」

妻「あの子の前では「悪役」で居なくちゃいけなかったからね。でも、気になってたのよ。まさか本当に身体を売らせるつもりだったの?」

「いや、あれはSOSだ」

妻「SOS?」

「ああ、親友への・・・な」

妻「???」

「俺は・・・その・・・素直に言えないからな・・・ああいう形でしか助けを求められなかったんだよ」

妻「助けを?」

「陽翔をあれ以上俺たちの傍に置いておいたらダメになると判断した。だから俺はあいつが閲覧するであろうネットに投稿したんだ」

妻「でも、色々な人から連絡来てたよね?」

「もちろん断ったさ。大切な息子なんだから」

妻「そうなの・・・安心した」

「すまないな・・・」

俺は取り返しのつかないことを愛する息子にしてしまった
もちろん妻も同じことを思ってるんだろう
だからこそ、成し遂げる
取り返しがつかないなら・・・せめて・・・自分に罰を・・・

「・・・陽翔・・・幸せになってくれ」

俺たちの分も・・・
誰よりも・・・誰よりも・・・幸せを手にしてくれ・・・

「それにしても・・・」

妻「ん?」

「いや、また殴られるのを覚悟してたんだよ」

妻「私も・・・正直・・・」

「でも、あいつはしてこなかった。あいつは俺なんかよりもずっと大人で、強い・・・こんなこと思ってはいけないけど・・・誇りに思うよ」

妻「そうね・・・私も誇りに思うわ」

「まぁ、俺たちはもうあいつには会わない。あとは・・・罪を償うだけだ」

妻「ええ」

「お前まで一緒に付き合う必要はないんだぞ?」

妻「いいの。私も暴力をした。なら、償うわ」

「・・・そうか・・・わかった」

この先、俺たちには「罪」という重い・・・とても重いものが残ってる
でも、陽翔の受けた傷に比べれば軽いぐらいだと思う
だから、償ってみせる

ドンドンドン!!

扉を激しく叩く音が聞こえる

「・・・」

これが俺たちの選んだ道なのだ・・・
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