一輪の花

月見団子

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第八話〜太陽と薬草の知恵比べ〜

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「まさかカリアちゃんが7カ国語も話せるとは、ねぇ」「僕も驚いたよ」「て言うか、ラテン語なんて今時どこで習うんだよ」「確かに、ね~ラテン語の論文があるわけでもないだろうし…いや、分からないけど」「だとしてもじゃない?そう簡単に読めないでしょ」「うーん、やっぱ天才っているんだな」「それ、カリアちゃんに言った?」「なにがだ?」「天才って言葉」「ううん、言ってないよ、なんで?」その言葉を聞き、水月は胸をなでおろした。と、同時に説明を始めた。「日向君。“天才”という言葉は、人によっては褒めを通り越して侮辱になりうるんだよ」「ぶじょく?なんで?」「頭の良い人全員が天才ってわけじゃないってことだよ。授業一つで理解できる天才も居れば、死ぬほど努力をした努力家も居る」「簡単にその言葉を使うと、その努力を、踏みにじる事につながる可能性があるって事だね」「そういう事」また一つ、勉強になる事を教えてもらった。気をつけよう…。
ーーー「なぁなぁカリアちゃんは英語できるんだよね?」
「うん、できるよー」
「課題で分からないところがあるんだけど…」
「教えて欲しいのー?」
カリアちゃんは察してくれるのが早くてありがたい。
「うん…」
「いいよー、教えてあげるー!」
「ありがとぉ」
そして優しい。
「それで?お兄ちゃんはどこが分からないのー?」
「どこがと言うか、どこが分からないか分からないというか… 」
英語はほんとに少しできるがほとんど分からない、小学校からの苦手意識のせいもあって全然内容が入ってこないんだよな。
「そ、そうかー、どこが分からないか分からないかー」
「あぁ、なぜ分からないのか分からない」
「それは重症だ…」
「そうだろ、重症患者だろ…」
「そんな貴方には私が付いている!」
「おぉーすげぇ、心強えぇぇ(棒)」
「あらすごい棒読みだこと」
「ところで早速この単語なんて意味なのか教えて欲しい」
「んん!?教えて欲しぃ!?欲しぃ!?」
カリアちゃんがだいぶ強めに欲しいを強調しながら、何かをアピールしてきた。
「あっ、教えてください先生お願いします」
「よろすぅぃ」
上手く理解出来ていたようだ、カリアちゃんはニコニコに戻った。
「ありがとうございます、先生」
「それで?分からないのはどこかなー?」
「ここなんだけど」
「あぁここね」
「この単語自体は分かるよね?」
「うん、ファイヤーだろ?(火)だ」
「だけど動詞になってるでしょー?」
「火の動詞ってどういうことだ?」
「英語ってのは同じスペルでも違う意味になる単語があるんだよ」
「なるほどぉ」
「例えばlightは右と権利って意味がふたつある、英語の厄介なところは色々あるけどここもなかなかなLvでめんどくさいと思うんだよねー」
「なるほどなるほど」
「だからあれこの単語の意味と文の内容が違うぞって思ったら、辞書で引くのをおすすめする」
「そうすると意味が2個出て来て正しい意味がわかると…」
「うん、そゆことー」
「なるほどな、ありがとう」
「他に分からないところはあるかい?生徒君」
「んー、全部分からないからなー」
「だけど見た感じ少しはできてるじゃん」
「い、一応少しはわかるんだよ」
「さすがの生徒君も全部分からない訳じゃないじゃん」
「教えてくれてありがとう、僕も何かお返しに分からないとこあったら教えるぞ」「んー、どうしようかな~?」「僕が教えられるのは3教科くらいだよ」「私、数学は苦手なんだよね」「それは、どういった理由で?」「あの教科って何種類もの言語を一つの文に混ぜてくるじゃん。数字に平仮名に漢字に…偶に片仮名に…終いの果てには公式で英語も出てくるし…分けわかんなくなるよ~」「なるほど…」確かにそれは数学を嫌いになる理由のトップに躍り出るだろう。「因みに、私やってるのは三角関数とか順列、組み合わせ…後は微分・積分かな」「うん?まって、君今中学生だよね?」「そうだけど」「三角関数は…まだぎりぎりわかるけど、順列、組み合わせ、微分・積分はなんで知ってるの!?」「いや、なんか名前が面白かったからその3つは知ってる。」「なまえ?」「そう。公式で使うことばがリズム良いし、覚えやすいし。」「な、なるほど…」「でも、計算嫌い」数学が嫌いな人は聞きたくない言葉かもしれないが、三角関数は正弦関数「sinサイン」と余弦関数「cosコサイン」、正接関数「tanタンジェント」、余割関数「cosコセカント」、正割関数「secセカント」、余接関数「cotコタンジェント」に分ける事ができ、この時点で僕も一回嫌になった記憶がある。『なんで《三角関数》と言う名前があるのにその中に《関数》という言葉が6つもあるんだよ!ややこしいだろ!』と、嘆いた時期があった。なんせ頭がこんがらがる。三角関数の余弦関数がなんたらこうたら…なんて話を聞くたびに頭がこんがらがっていた。
ただ、リズムがいいことも頷ける。そんなことを考えているとカリアちゃんが変な歌を歌い始めた。「サーイン、コサイン、ターンジェント♪パァーミテーション、コンビネーション♫そして最後にインテグラル!」…数学嫌いごめんよ…こんな変な歌を聞かせちまった…。そんな訳で、カリアに数学を教えている間は数学の先生たちの苦労が良くわかった。人に教える為には人の3倍の理解が必要だとはよく言ったものだ。教えているのに自分も勉強をしている感覚になった。その後、国語と英語はカリアの得意分野でもあったので理解は早かった。なんなら英語に関しては気づかぬ間に途中からまたしても教えられていたのだった。
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