英華女学院の七不思議

小森 輝

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英華女学院の七不思議 3

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 この学校では、最後の授業の後に清掃の時間がもうけられている。それは、教師も同様で、職員室の清掃をする教師もいれば、生徒と一緒に教室や廊下を清掃する教師もいる。そして、私の清掃場所は職員室から一番近くにあるトイレ。新人教師の清掃場所としては、この上なく適した場所だと言えるだろう。
「掃除するのはいいんだけど、普段使わない場所まで掃除しなきゃいけないのはね……」
 便器に愚痴を聞いてもらいながら、私は代わりに隅々までブラシで磨いていた。ちなみに、私はいつも同じ場所を使っているので、この磨いている便器は一度も使ってない。自分が使わない場所まで掃除するというのは、やはり気分が乗らない。だからといって、生徒にやらせるのも申し訳ない。このトイレは職員室のすぐ近くにあると言うこともあって、生徒は一切使わない。女子高生が教師しか使わないトイレを掃除するというのも変な話だ。
 これは新任教師である私の役目。そして、平川先生が言っていたように、教師は生徒たちの模範となるのだから、どこのトイレよりも綺麗に磨いているつもりだ。ただ、私は他のトイレを使わないから、どこよりも綺麗かどうかは分からないし、そもそも、このトイレを生徒が使わない以上、どれだけ綺麗に磨いても模範にはなりそうにない。
 それでも、トイレの神様はいると信じて、いつも通り綺麗に磨いて、私の清掃時間は終了した。
「いつもながら、屈んで何かをするのは腰が疲れる……」
 私は腰をさすりながら職員室に戻っていた。まだピチピチの二十代だと言うのに、老化が進んでしまいそうだ。こんな姿を平川先生に見られてしまっては、また怒られてしまう。
 別に噂をしていたわけではないのだが、職員室に入ってすぐのところに平川先生がいた。
「ひ、平川先生!」
 驚いた拍子に、背骨が針金を通したように真っ直ぐになった。
 平川先生も教師なので職員室にいて当然なのだが、想像していた出会うとまずい人物が目の前に現れると驚いてしまうのは必然だ。
「あら、橋本先生。いいところに」
 姿勢が悪いと怒られなかったのはよかったが、何か用事があるようだ。
「……どうかされましたか?」
「ゴミが多くでたので捨てに行ってもらおうと思いまして」
 職員室に入ってすぐ横に、ゴミ袋が三つ置いてある。
「分かりました。捨てに行ってきますね」
 荷物運びのようなものは私の務め。後輩がいない以上、ちょっとした雑用なんかも私に割り振られることが多い。
「毎回、助かります。歳を取ると重い物が大変で……」
「いえ、これぐらい、大したことはないですよ」
 高い給料を貰っている分、これぐらいの雑務は許容範囲だ。
「それでは、行ってきます」
「ゴミを巻き散らかさないように気をつけて行ってください」
 ゴミの心配より私の体の心配をして欲しいものだが、せっかく掃除した場所にゴミを巻き散らかすのは申し訳ないので、それだけは注意して行こう。
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