町一番の支援魔法の使い手は元オタサーの姫! ~本気の想いは届かない~

小森 輝

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3 私の恩人を求めて

町一番の支援魔法の使い手は 10

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 無事、ダンジョンから脱出した私たちパーティーは何もなかったかのように町へと帰り、いつもの酒場に来ていた。
「今日は大量だ!」
 そこでは4人の大宴会が始まっていた。
 今日はいつもより深い場所、つまり強いモンスターと戦った。つまり、いつもより魔石1個あたりの換金率が高かった。さらに加え、私を助けてくれたモングレルの冒険者が倒した巨人モンスターの魔石に高値が付いたらしく、みんな浮かれていた。
「今日は収入もいいし、奥まで行って疲れただろうから、明日は休みだ! みんな! 今日はとことん飲むぞぉ!」
 乾杯の音頭に私も水で答えた。ただ、私は少し不満だ。助けてくれた冒険者にお礼も言えず、さらに彼の功績だったはずの魔石まで奪ってしまったこともそうなのだが、一番はみんなが大量だと浮かれている報酬についてだ。確かに、今日の報酬はいつもより多い金貨5枚だ。金貨1枚で銀貨10枚の価値があるので銀貨にしたら50枚。ただ、これで明日はダンジョンで狩りをしないとなると、1日の収入は半分の25枚という計算になる。私はあんな死にそうな思いをしたにも関わらず、いつもと比べて銀貨5枚分しか増えていない。それなのに、この宴会。大体、いつもダンジョン終わりに酒場に来なければもっと収入は多いはずなんだ。今日は特に、一人銀貨8枚ぐらい使っている気がする。明日休みにするならこんな豪勢な夕食はしないでほしい。
「なんだよ、キラリ。今日はやけに不機嫌じゃんか。今日はたくさん稼げたんだから、キラリもぱっーと飲もうぜ?」
 剣士のアタッカーの人が絡んでくるが、不機嫌だろうがなんだろうが、お酒は好きじゃないから飲みたくない。
「こら、嫌がっているのが分からないのか? ごめんね。飲めないのは知ってるんだけど、今日はいい気になってるみたいで」
「ううん。大丈夫」
 そもそもお酒を勧められているのが不愉快なわけではないので気にはならない。
「あ、分かった。一人だけ落ちたのを気にしてるんだろ?」
 その瞬間、私の眉がピクリと動いたのが分かった。
「一人だけ落ちて、あの狂犬モングレルに襲われそうになったのが怖かったんだろ? 俺たちが後少し来るのが遅かったらどうなっていたか分からないもんな」
 その勘違いで、私の怒りは冷めてしまった。私が襲われそうになったのは巨人のモンスターで彼ではない。彼は私を助けてくれた命の恩人。まあ、確かに、私も変な勘違いを抱かれていたのは事実だけど……。
「あんなに強い人、始めてみた……。もしかして、有名人なのかな……?」
「あいつは有名人だよ。まあ、悪い方のな。通り名は……確か……バリアントソウル」
「バリアントソウル……」
 酔っぱらいとも話すものだ。まさか私のパーティーから彼の情報が聞けるとは思わなかった。
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