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3 私の恩人を求めて

町一番の支援魔法の使い手は 28

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「そんな正規ギルドがクズだって話はどうでもいいんだよ。結局、不正はなかったのか? どうなんだ?」
「も、もちろん、ありません!」
 私の言葉に、彼はとても残念そうに首を落とした。
「そう言うわけだ。じゃあ、この金は全部頂くとしよう」
「金なんてくれてやるよ! 勝てると思ったのによ……くそがぁ! 俺に賭けた奴にはすまねえことしたな」
「誰もお前に賭けてないから安心しろ」
「何だとぉ! 一人ぐらい俺に賭けやがれ!」
 勝負に負けて落ち込むのかと思っていたが、いつも通り、叫んでいてテンションはMAXだった。
「いやぁ……一時はどうなるかとヒヤヒヤしたよ」
「すいません。私が無知なばっかりに……」
「知らないことは仕方ないさ。それより、これ、君の取り分だよ」
 そう言って渡されたのは、私たちが集めた魔石で換金した硬貨に、彼が出した金貨を合わせて半分にしたお金が入っていた。およそ、金貨80枚ほど。
「い、いえいえ、こんな……もらえませんよ! 私、ダンジョンでも役に立たなかったし、換金所では絡まれたところを助けてもらって、最後は私の勘違いでヘイトさんを疑ったのに……」
「最後の二つは気にしてないよ。ただ、ダンジョンで役に立たなかったなんてことはないよ。君の支援魔法のおかげで私はいつも以上の力が発揮できたんだから」
「でも……私がいなかったら、一人でもっと奥まで行けたんでしょうし……やっぱり、足手まといだったんじゃないかって」
「何か勘違いしているみたいだね。パーティーっていうのは役に立つとか、足手まといとか、そんな理由で組んだりはしないんだよ。パーティーメンバーに自分の命を預けれるかどうか。君の噂は聞いていたけど、まだ出会って初日だからね。私は君に命を預ける度胸はなかったから一人でもどうにかなる範囲で戦った。でも、君は私に命を預けてくれた。支援魔法しか使えない君は、どんなダンジョンであれ、一人では何も出来ない。そんな君に比べたら、半分も貰っている私の方が卑怯者って奴だよ」
「それじゃあ……貰っておきます」
 こんな賛辞を言われて、それでもお金を返すなんてことはできない。このお金は大事に受け取った。
「そうだ。半分も貰ったから、私が夕飯を奢るよ」
「そ、そんな、そこまでしていただかなくても……」
「いいのいいの。私はもう少し、君と話したいし。それに、このギルドのご飯、おいしいから。食べていきなって」
「それじゃあ……お言葉に甘えて……」
 ヘイトさんが席を勧めてくれたので、私もそこに進んだ。
「何が食べたい? って言っても、ここの料理初めてだから何がいいかも分からないか。こっちで良さそうなの頼もうか?」
「はい、お願いします」
 賭けの勝敗が分かったことで、周囲の野次馬はみんな散っていた。でも、話しかけてくる人はたくさんいて……。
「ここは料理だけじゃなくて酒もうまいんだぞ!」
「確かに酒もうまいが、今日はやめておいた方がいい。酔いつぶれて帰れなくなっては困るだろ?」
「ここに泊まって行けよ。どうせみんなここで酔いつぶれるんだから。部屋の一つぐらい余っているだろ?」
「女の子なんだぞ? 少しは気を使え」
 話しかけられてもどう返せばいいのか、どぎまぎしていたら、全部ヘイトさんが返してくれた。こんなわいわい騒いでいるところで話しかけられるのは緊張するけど、でも、なんだか少しうれしかった。
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