町一番の支援魔法の使い手は元オタサーの姫! ~本気の想いは届かない~

小森 輝

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4 私の想いが届かない

町一番の支援魔法の使い手は 43

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 申し訳ない気持ちでその場を去り、コンさんについて行くと、そこには馬車が用意されていた。
「乗るぞ」
「はい」
 私は荷台の方に乗せてもらって、コンさんが馬の手綱を握った。
 コンさんは粗暴なので、馬車を借りるのでも一悶着ありそうだし、馬の扱いも雑で嫌がって進まないんじゃないのかと思ったりしていたのだが、以外と普通で何事もなく馬車は進んだ。
 町を駆け抜け、東の門から町を後にし、そこからさらに東へと向かっていく。そして、その間、全く会話はない。完全に無言だ。とても気まずい。
 とりあえず、このままずっと手綱をコンさんに任せておくわけにはいかない。
「あの……変わりましょうか?」
「変わってもいいが、お前、馬、扱えんんか? それに、場所も知らねぇだろ」
「……すいません」
 機嫌をよくしようと申し出たのだが、逆に機嫌を悪くしてしまったようだ。さらに気まずくなってしまった。
「心配するな。もうすぐ着く」
 その言葉に、ほっと胸をなで下ろした。
 もうすぐ着くと言うことは、もうすぐダンジョンに侵入するということだ。その前に、ダンジョンに入る準備をしなくってはいけない。
 ただ……。
「準備って言っても、なにしたらいいんだろ……」
 荷台には何か荷物があるわけでもないし、自分の荷物を確認するぐらいしかやることがない。でも、自分の荷物を確認したところで、ちゃんと回復薬は持ったか、状態異常を治す薬は持ったか、お昼ご飯やダンジョンで閉じこめられた時のための非常食はあるかなど、そんなことしか出来ることはない。しかも、忘れていたところで、取りに戻ることも出来ないので、確認したところで意味はない。
 そんなどうしようもない状態のまま、馬車は止まった。
「着いたぞ。降りろ」
 そう言われて降りると、コンさんは馬が逃げないように、馬をロープに繋いで、それを丈夫な木に括り付けていた。
 今まで粗暴だと思っていた印象が徐々に変わってきた。そう言えば、コンさんは今まで一人でダンジョンに行っていたらしい。その経験は私のような近場である程度のお膳立てをされている冒険者にはないような知識も持っているのだろう。
「よしよし、いい子だ。俺たちが帰ってくるまでいい子で待っているんだぞ」
 馬にそう話しかけていた。人間相手には常に叫んで怒っているのだが、馬相手だと妙に優しい。私も馬に産まれたかったなんてつまらないことを考えていると、馬へのスキンシップを終えたコンさんは次に私の元へと向かってきた。
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